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掲載日:2023年5月23日
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平成27年9月7日(月)~9日(水)
(1) 九州防災・火山技術センター(久留米市)
(2) ㈱テムザック(宗像市)
(3) 山口県庁[砂防課](山口市)
(4) KDDI山口衛星通信所(山口市)
(火山災害への対応について)
九州防災・火山技術センターは、これまでの火山災害対応で蓄積されたノウハウを生かし、火山防災技術の高度化・効率化を、より一層推進していくため、既存の「九州防災センター」に新たに火山技術部門を設置する形で発足した。
火山噴火時には、土砂災害防止法に基づいて国が直轄で実施する緊急調査や砂防堰堤の除石等の応急対策に関する技術的な支援・協力を現場において実施するほか、火山防災のために必要となる観測機器の整備状況等の把握と運用のための環境整備、火山噴火時の降灰状況等の調査や応急対策の施工技術の改良・開発を行っている。
同センターの取組を調査し、本県での火山災害対策の参考とする。
九州地方には、全国110の活火山のうち、約2割である17の活火山があり、しかも気象庁が発表している噴火警戒レベルが2以上の活火山が複数あり、火山活動が活発な地域である。
九州防災・火山技術センターでは、活発化している火山噴火等に対応するため、主に3つの防災技術機能を新たに拡充した。
1つ目は、土砂災害が急迫している状況での緊急調査・応急対策等に関する技術的な支援・協力である。噴火が起きた際には、土砂災害等防止法に基づく緊急調査を実施する。これは降灰等の堆積状況を調査するため、ヘリコプターによる上空及び地上からの調査を実施し、さらに降灰等により土石流による被害のおそれが高まっている渓流を抽出し、被害が想定される区域を分析する。これにより、避難のため、参考となる被害想定区域及び時期に関する情報を、県及び関係市町に提供し、県等の警戒避難対応を支援する。また、ワイヤーセンサーを張るほか、監視カメラを設置して、状況をリアルタイムで把握したり、臨時的にコンクリートブロックの砂防堰堤を設置するなどの対応を行う。
2つ目は、観測機器等の把握と運用、調査施工技術の改良・開発である。無人調査ヘリや自動降灰量計を開発・利用することにより、人が立ち入ることができない場所を調査したり、ヘリコプターが撮影した写真を基に、3Dモデルを作成し、降灰状況の把握等を行っている。また、様々な災害に対応することができる災害対策支援機械や災害復旧機械といった災害対策用機械の導入を積極的に行っている。このうち簡易遠隔操縦装置はパーツを重機の運転席に装着することにより、離れた場所から無人の重機を操作するものであるが、導入により、危険な災害現場でも作業を行うことが可能となり、作業範囲が大幅に拡大したという。
3つ目は、火山災害等に係る研修・訓練の実施である。火山噴火緊急調査訓練は、火山噴火時において国が直轄で実施する緊急調査を円滑に実施するため、火山噴火及び河道閉塞に伴う土砂災害メカニズムや過去に緊急調査を実施した事例、氾濫解析システムの概要について講義を行うとともに、緊急調査時に行う浸透能調査等の訓練を行うものである。
この3つの防災技術機能のほかにも、当センターを活用して、九州各県や政令指定都市との合同訓練を実施したり、各市町村への支援を行っている。
委員からは、火山噴火の予知、3Dモデルの作成過程及び災害対策用機械の役割等について活発な質疑応答がなされた。その後、災害対策用機械の視察を行った。
今回視察先を調査できたことは、本県の、火山災害に対する施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
(災害対策技術の開発について)
㈱テムザックは、企業からの提案を基にロボットの開発・製造・販売を行う企業である。
同社は、人ができないことをするロボットの開発にこだわっている。救助車両用の道を作る、倒壊の危険性がある家屋を支えるなど、がれきの散乱する災害現場で活躍する「レスキューロボット」や、遠隔操作を利用して、人間が近づくことのできない場所での作業が可能な「救命支援ロボット」といった災害対策用ロボットを積極的に開発している。
また、大学、他企業及び各種団体との共同開発・研究にも積極的に取り組んでおり、スピーディかつ柔軟性に富んだ研究が可能となっている。
同社の取組を調査し、本県での災害対策の参考とする。
㈱テムザックにて
同社は、人間にできないことや、人間にとって危険なことができるロボットの開発に焦点を合わせた戦略を掲げ、レスキューロボットをはじめとする外壁検査ロボットや救命支援ロボットの開発を行っている。
また、外部組織とのパートナーシップの推進やグローバルネットワークの構築、さらにはロボット仕様・運用の世界基準を作り上げることを課題に挙げている。
こうした戦略や課題を基に「T-53援竜」が開発された。これは北九州消防局や独立行政法人消防研究所及び京都大学と共同開発したロボットをベースに性能テストや訓練を実施し、収集したデータや知見を反映し、開発された最新のレスキューロボットである。2本の腕を有し、腕部に同期動作制御を導入することでオペレーターの直感的な作業が可能となっており、ロボットに乗り込んで操作するほか、遠隔操作も可能となっている。これにより、人が近づけない現場や2次被害が想定されるような現場でも活躍できるという。
また、これまで法令により道路上での活動に制限があったが、車両ナンバーを取得することにより、一般道路でも走行が可能となり活動範囲が広がったほか、これまでのレスキューロボットに比べてサイズダウンを図ったことで、機動性、運動性が向上し、屋内など狭い現場での稼働も可能となっている。
さらに、上半身の制御、走行部等各可動部の動力源はディーゼルエンジンを搭載し、同時に発電も行うことができるようになったため、長時間の稼働も可能となった。
こうした活動もあって平成23年5月には経済産業大臣から感謝状を受けている。
委員からは、資金繰り、遠隔操作の仕組み、今後のロボット開発の計画等について活発な質疑応答がなされた。その後、開発されたロボットの視察を行った。
今回視察先を調査できたことは、本県の災害対策を推進する上で、大変参考となるものであった。
(災害に強いまちづくりについて)
山口県では、過去の土砂災害の経験を踏まえ、土砂災害のおそれのある区域の危険の周知、警戒避難体制の整備、住宅等の新規立地抑制、既存住宅の移転促進等の対策を行っている。
また、傾斜地崩壊対策事業やがけ崩れ災害緊急対策事業に取り組むとともに、土石流や斜面を監視するカメラやGPSによる斜面監視等の監視装置の設置並びに災害情報等を迅速かつ的確に収集・提供するための光ファイバー網の整備などITを活用した土砂災害対策を推進している。
同県の取組を調査し、本県の災害に強いまちづくりに関する施策の参考とする。
山口県は、県土の88%が山地や丘陵地で占められており、花崗岩などの脆弱な地質が広く分布していることから、非常に多くの危険箇所が存在し、一たび大雨が降れば、県内のどこでも土砂災害が発生するおそれがあるとされてきた。
平成21年に県央部で発生した大規模な土石流災害では19名が犠牲となり、その後平成25年7月の県北部や、平成26年8月の県東部など、同県内各地で土砂災害による甚大な被害に見舞われた。
一方、土砂災害防止施設の同県における整備状況は、平成27年3月末時点においても23.6%の水準に留まっている状況である。
そこで、同県は「災害に強い県づくり」に向けて、関係機関と連携を図りながら、ハード・ソフト両面からの総合的な土砂災害対策に取り組むこととした。
これまでの豪雨災害においては、砂防堰堤や擁壁などの土砂災害防止施設により、土砂災害が食い止められ、人家への影響を免れた事例も多く見られた。そこでハード対策として、土砂災害防止施設の整備を着実に進めることとし、特に、過去に土砂災害が発生した箇所や高齢者や障害者等の要配慮者利用施設・避難施設が立地する箇所など、危険度の高い箇所から重点的・計画的に土砂災害対策を推進している。
ソフト対策としては、土砂災害の危険性のある区域の周知及び警戒避難体制の整備を図るため、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定、土砂災害に関する情報提供、各種啓発活動を行っている。
その結果、土砂災害警戒区域の指定は24,813箇所で進捗率は100%、土砂災害特別警戒区域の指定は9,851箇所で進捗率は43%となっており、平成28年度までの完了を予定している。
県民への情報提供については、平成19年に気象台と県の共同による土砂災害警戒情報の発表を開始し、その後もPCや携帯電話向けの警戒情報及び土砂災害降雨危険度情報の提供や、携帯電話のGPS機能を活用した防災情報の配信等を開始している。
啓発活動としては、土砂災害の危険性や、備えについて理解と関心を深めてもらうため、砂防課職員が小学校に出向き、副読本や映像による授業を行う砂防出前講座、県内全19市町による情報伝達訓練や40施設の要配慮者利用施設等での実働避難訓練を実施している。
概要説明の後、平成19年に大規模な土石流災害が発生した防府市下右田地区の整備状況を視察しながら、活発な質疑応答が行われた。
今回同県の取組を視察できたことは、本県の今後の災害に強いまちづくりの施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
(企業における危機管理対策について)
KDDI山口衛星通信所は、日本の衛星通信の玄関口として、山口市に開設された日本最大級の通信施設である。地上のマイクロ回線との相互干渉が少なく、台風や地震などの自然災害も少ないなどの立地条件を備えている。
当施設は約50か国・地域との間に約1,000回線を持ち、国際通信サービスを取り扱っているほか、インド洋や太平洋上の船舶、航空機、可搬型端末と移動体通信サービスを行っている。
また、危機管理対策として、非常時に備え電力系統を三重化しているほか、災害時に通信が切れることがないよう、通信手段の確保等の対策を取っている。
同センターを視察し、企業における危機管理の取組を調査することで、本県における今後の危機管理施策の参考とする。
KDDI山口衛星通信所にて
KDDI山口衛星通信所は衛星通信の重要な拠点施設であるため、様々な危機管理対策が講じられている。
まず、全てのアンテナが台風等による強風の被害を想定して作られている。たとえば、風速60m以上という猛烈な風が吹くような万が一の場合を想定し、アンテナを上に向け杯のような状態にすることで風を下に抜けさせるといった手順を確立している。
また、電力がなければ通信自体を行うことができないことから、当施設ではメイン電力として中国電力から22,000Vの提供を受けているほか、別方向の送電線から6,000Vの提供を受けている。よって、仮にどちらかの電力が供給されなくなっても稼働可能な体制となっている。また、中国電力からの電力が全く供給されなくなった場合を想定し、灯油を燃料とした自家発電設備を備えている。灯油の燃料だけで80時間は通常の通信体制を維持することが可能だという
一方、通信において衛星を使うことは、危機管理上、重要な側面がある。
現在通信に利用されているのは主に海底ケーブルと衛星通信である。電送容量では海底ケーブルの方が圧倒的に速いが、海底ケーブルは地域によって地震による切断のリスクがあり、故障時の復旧に長時間を要するといった短所がある。それに対して、衛星通信はアンテナと無線機があれば容易に通信が可能であるというメリットがある。
なお、東日本大震災の際は、震災により光ケーブルが寸断されたため、東北地方のある地域と東京や大阪といった都市間で携帯電話での通信を行うことができなくなった。そこで、同社は、車に通信設備を搭載した車載型基地局を東北地方に向けて一斉出動させ、市役所や避難所に延べ70箇所に設置して、携帯電話の通信を確保した。
現在、震災により道路が寸断され、車載型基地局が入れないような場所が発生したことを想定し、巡視船に通信設備を搭載し、被災地と各地域の通信を行うといったテストを全国各地で行っている。
概要説明の後、委員からは、船舶型基地局との通信、通信衛星の概要やその運用、施設の警備状況、車載型基地局で行うことができる通信の料金などについて活発な質疑応答がなされた。その後、施設内の視察を行った。
今回視察先を調査できたことは、本県において今後の危機管理に対する施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
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