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掲載日:2023年11月27日
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令和5年9月6日(水曜日)~7日(木曜日)
(1)熊本県総合防災航空センター(熊本県菊陽町)
(2)熊本県防災センター(熊本県熊本市)
(防災ヘリコプターの運用及び関係機関との連携について)
災害が比較的少ないとされる本県とは対照的に、熊本県では熊本地震や九州地方を中心とした豪雨被害等、数年ごとに大規模災害に見舞われており、熊本県総合防災航空センターでは、石川樹脂工業株式会社にて孤立住民の救助等、数多くの活動実績を有している。また、同センターは、防災消防航空センターと警察航空隊基地を合築した施設であり、消防及び警察の情報収集活動における連携と情報共有の迅速化が可能となった。また、耐震性や燃料供給体制など、大規模災害時に集結する災害関係ヘリの運用に必要な機能を備えている。
当該施設を調査することにより、本県における防災ヘリコプターの運用及び関係機関との連携の取組の参考とする。
同センターは、九州における広域防災拠点として、平成29年に供用が開始された施設である。
熊本県の防災ヘリの出動件数は令和3年中で189件に上り、全国4位(機体数1機の自治体中では1位)である。運行の内訳としては、救急が140件と圧倒的に多く、次いで広域応援22件、救助17件等となっている。救急の出動件数が多い理由として、ドクターヘリに近い活用がなされている点が挙げられ、基地病院のドクターヘリとともに救急搬送体制を担っている。これらの救急搬送体制を支えているのがヘリ要請連絡体制(会議通話システム)であり、地域の消防と拠点4病院との間で同時に情報が共有できるため、搬送のたらい回しなどが発生せず、効率的で迅速な搬送が可能となっている。
また、広域応援の件数が多い理由としては、九州の広域応援の仕組みと熊本県の地理的な条件が挙げられる。現在、九州地方では、福岡県を除く6県(福岡県も加入に向けて調整中)で相互応援協定が締結されており、それぞれの自治体のヘリが検査等で運航できない場合や、緊急の事案で他県ヘリの応援が必要と判断される場合に応援を要請できる仕組みとなっている。熊本県は九州地方のちょうど真ん中に位置することから、隣接県からの応援要請も多く、出動件数が多くなる要因となっている。
熊本県防災消防航空隊の特徴として、民間の航空会社である天草エアラインに運行管理を委託している点が挙げられる。防災ヘリの操縦士や整備士は同社の職員が担い、官民一体となって、熊本県の災害対策を担っている。このように、同社との連携、九州地方の広域応援体制、合築された警察ヘリとの役割分担など多くの関係機関との連携が、大規模災害時の活動を支えているとのことであった。
概要説明後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「本県でも過去に山岳救助時における防災ヘリの墜落事故が発生しているが、救助の際の状況判断をどのように考えるのか」との質問に対し、「山岳救助は崖や木々との接触、下からの強風など大変危険な状況下での救助となるため、安全な運航が可能かどうかは重要な判断要素となる。一方で我々は助けられる命があれば助けたいという思いでやっているので、現場の状況を踏まえたうえでの大変難しい判断となる」との回答があった。
質疑後、同センター内のヘリ駐機場及び格納庫等を視察した。隣接する警察部隊のヘリも同時に視察することができ、合築施設ならではの両部隊の距離の近さも肌で感じることができた。
今回視察先を調査できたことは、本県の防災ヘリの効率的で安全な運用を進める上で大変参考となるものであった。
熊本県総合防災航空センターにて
(災害に備えた庁舎整備について)
本県においては、県庁舎の建替えに係る議論が盛んに行われ、いかにして災害に強い庁舎とするかが課題となっている。また、大規模災害時の代替施設の在り方も議論されている。熊本県防災センターは、熊本地震をきっかけに災害への対応を強化するため、県庁新館北側の敷地内に建設された新庁舎である。(令和5年4月業務開始)
同センターの概要を調査することにより、本県が今後災害に強い庁舎整備を進める上での参考とする。
同センターは、実際に熊本地震に対応する中で浮き彫りになった旧防災センターの問題点を踏まえ、地震時のオペレーション責任者を務めた特別顧問の構想の基、令和5年4月に開設した施設である。
元々旧防災センターは築50年程度経過しており老朽化が進んでいたが、そこへ熊本地震が発生し、庁舎内の熊本土木事務所が大破するなど大きな被害が出たことから、建替えによる復旧が必須となった。旧防災センターの問題点として、10階に位置していたためエレベーターの停止時には致命的な影響を受けることや迅速な対応が困難となること、待機室や倉庫等の物理的な部屋数が絶対的に不足していることなどが挙げられ、これらの不便な点を解消するべく、新防災センターは低階層(2階)とし、完全独立棟となった。また、災害時には多くのマスコミ関係者が防災センターに集まり、至るところに立っていたため、一刻を争う危機管理対応の妨げとなることが少なくなかったことから、報道機関用の待機室を設けたこと、知事の活動が完結できるよう知事用の待機室に洗面所等の機能を整備するなど、教訓を踏まえた構造となっている。
また、免震構造と鉄筋コンクリート構造により、熊本地震と同程度の地震にも耐えられるほか、非常用発電設備や無電源自動ドア、緊急排水貯留槽等を整備し、ライフラインが遮断されても最低72時間は災害対策を継続可能な建物としている。
同センターは、熊本県内における災害対応拠点施設となることはもちろん、南海トラフ地震時には、九州を支える広域防災拠点としての役割を担うことも想定されている。この役割を果たすため、災害対応機能も強化されており、低階層(2階)に災害対策本部やオペレーションルーム等の主要な指令機能を配置している。特にオペレーションルームは、自衛隊や警察、消防等の活動部隊に加え、電気・ガス等のライフライン事業者も配置できるようスペースを拡充し、全員が情報を共有できるよう高い位置に大型のモニターが設置されるなど、幅広い関係機関を効率的に受け入れることが可能な設備となっている。
同センターの役割の一つである災害対応ノウハウ等の提供・発信機能を果たすため、1階には一般の方に向けた展示コーナーが設けられ、最新のVR防災体験コーナーや豪雨災害発生のメカニズムなど、防災学習機能を備えている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、特別顧問と共に説明を担当した女性班長に対し、「女性という立場で、かつ子育てをしながら班長として危機管理業務に当たられるなかで気付いたことや提案等がどのように生かされているか、また、苦労した面があれば教えてほしい」との質問に対し、「子育てをしながらの女性班長は私が最初だと思うので、私が成功させれば後々の職員にもつながるとの思いでやっている。災害対応はなるように持っていくしかないので、気持ちだけはぶれないようにやっている」との力強い回答があった。
今回、同センターを調査できたことは、本県において災害に強い庁舎整備を進める上で大変参考となるものであった。
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