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掲載日:2023年5月31日
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令和2年1月21日(火曜日)~22日(水曜日)
(1) 神戸市役所(神戸市)
(2) 倉敷市役所真備支所(倉敷市)
(防災・減災におけるICT等の技術活用について)
神戸市は、阪神・淡路大震災からの復興を踏まえ、テクノロジーの進化により人を幸せにするとの理念の下、その進化をリードする都市を目指しており、自己革新を続ける実験都市として、防災・減災に関して数々の先進的な取組事例がある。
同市は、災害時にSNS上に乱発する情報に対処するため、ツイッター及び防災チャットボットを活用してLINEにより災害情報を収集し、AIによる自動整理・可視化を行う全国初の実証実験を平成30年12月に実施した。また、消防団員が災害現場で把握した情報をLINEにより消防団向けの防災チャットボットに送信し、リアルタイムで共有する「消防団スマート情報システム」の構築に向け、全国初の実証訓練を令和元年8月に実施した。
平成31年4月には、兵庫県内初のパブリッククラウドを利用した総合防災情報システムである新・危機管理システムを導入し、災害時の情報共有機能、意思決定・判断機能、一括情報発信機能の強化を行った。
同市におけるこれらの取組を調査することで、本県におけるSNSを利用した災害時情報収集など、ICT等の最新技術の活用による防災・減災に向けた施策推進の参考とする。
神戸市は、阪神・淡路大震災の際、神戸市全体の被災状況について早期に把握できず、大規模な部隊や資源の投入ができなかった。その教訓から、SNSの災害情報の活用等により、街全体の被災状況を早期に把握する仕組みの構築に取り組んでいる。大人数の訓練を経て、実用化への課題も見えてきたところである。
実証実験においては、大量のSNS情報を防災用AIで自動処理の上、地図に集約することで街全体の状況を一気に把握することができ、災害対応において非常に有用であることが確認されている。
令和元年度は、平成30年度の実証実験の結果や課題を踏まえ、より多くの市民に参加してもらうため、実災害時における市民による情報共有訓練、災害時におけるSNSの活用に関する市民意識醸成、阪神・淡路大震災25年「そなえとうプロジェクト」市民参加型SNS災害情報共有モデル事業に取り組んだ。消防局においては、災害被害の軽減や災害現場での消防団員の安全性向上を図るため、消防団スマート情報システムについて、災害時に活用して円滑に活動できるよう訓練体制を整えていくとのことであった。
近年の災害対応においては、迅速な避難情報の発令等の要請により、オペレーションが複雑化する状況にあった。そのため、新・危機管理システムの構築に平成28年度から取り組んできた。新システムは、業務継続可能なクラウド基盤で構築されており、災害に強い特徴がある。現状、新システムの全ての機能を使用するほどの災害は発生していないが、機能の有効活用等について全庁的にレベルアップを図り、災害対応に当たっていくとのことであった。
概要説明の後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「SNSの災害情報を活用するシステムの開発費用はどうなっているのか」との質問に対し「当該システムは、内閣府の予算を基に国の機関等が開発している。神戸市も同様のシステムを検討していたことから目的が一致し、市はテストフィールドとして実証実験を行うなど協力して取り組んでいる」との回答があった。
同市による防災・減災におけるICT等の技術活用に係る取組について視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
(平成30年7月豪雨災害発生時の対応について)
平成30年6月28日から7月8日にかけて発生した「平成30年7月豪雨」は、台風及び梅雨前線等の影響により、全国的な集中豪雨をもたらした。
倉敷市真備町では、7月7日朝までに小田川や支流の高馬川等の8か所の堤防決壊により広範囲が冠水した。浸水範囲は、真備町の4分の1に当たる1,200ヘクタールに及び、水深は5メートルを超えた。小田川では、合流先の高梁川の増水に伴いバックウォーター現象が発生し、越水したことで堤防の内側が削られ、決壊したと推定されている。同市全体で59人が死亡(うち災害関連死7人)し、住家については約5,700棟が全壊・大規模半壊・半壊する大規模な被害となった。
令和元年東日本台風により大規模な水害を受けた本県にとって、同市の被災時の状況や得られた教訓は参考になるものである。同市の当該状況等を調査することで、大規模水害発生時に本県が市町村と共に迅速かつ的確な災害対応を実施し、県民の生命や財産を守るための施策を推進する参考とする。
倉敷市は、平成30年7月豪雨災害において、1つの市だけで約4,600棟が全壊する被害を受け、岡山県政史上最悪の水害の被災地となった。真備地区の人口は約2万2,000人であるが、被災から1年半が経過した現在も約4,500人が自宅を離れ、市内外の仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされている。市は、令和元年を復興元年と位置付け、被災地の復旧・復興、被災者の生活再建という最重要かつ最優先の課題に取り組んでいるところである。
被災当日は、内水氾濫が起きており垂直避難が望ましい状況となっていたが、川の水位が上がったときに、越水・破堤する可能性を踏まえて、どのように避難情報を発令するかの判断は本当に難しかったとのことであった。
破堤により、真備地区は河川と市街の区別がつかないくらいに浸水した。冠水していない橋の上に救急車両が集結し、救助活動の拠点となっていた。真備支所も1階の天井まで浸水し、非常配備態勢で勤務していた数名の職員は2階に避難した。自衛隊が周辺の住宅の屋根から住民を救助した際は、同支所の2階以上に一時的に受入れも行った。
真備地区からの排水作業については、ポンプ車が多数配置されて行った結果、3日後には水が引き、行方不明者の捜索等ができる状態になった。
避難所は、多くの被災者が避難してきて混乱した状況であった。混雑していると就寝もできず、食事も行き渡らない。避難所には、命を守ることだけではなく、同時に快適性も求められると実感したとのことであった。
水害の抜本的対応として、現在、国と県により小田川合流点付替え事業が進められている。これは、高梁川と小田川の合流点を4.6キロメートル下流に付け替えることで、合流点の高梁川の水位を約5メートル下げ、小田川に逆流しないようにするものである。
また、その他の治水対策として、河道掘削と河川内の樹木の伐採を行っているほか、2023年度の完成を目途に小田川の堤防の幅を5メートルから7メートルに拡幅する工事が進められている。
概要説明の後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「災害が起きた場合の要支援計画はどうなっているのか」との質問に対し「現在、市として一番力を入れて取り組んでいるのが地区防災計画であり、自主防災組織に避難計画を作成してもらうものである。住民が自主的に避難するまちづくりが求められている」との回答があった。
同市による平成30年7月豪雨災害発生時の対応や検証内容について視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
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