ページ番号:245534
掲載日:2023年11月27日
ここから本文です。
令和5年9月11日(月曜日)~ 12日(火曜日)
(1)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)
(2)石川樹脂工業株式会社(石川県加賀市)
(先端産業の創出について)
本県において、県内産業の持続的な成長と県民生活の質の向上につながる科学技術・イノベーション創出の振興が課題となっている。
国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学は、2023年4月、産学官連携の新たな施設として、ヘルスケア・医療分野のDXとバイオメディカルイノベーションを推進する「超越バイオメディカルDX研究拠点」を開設した。
また、北陸地域の活性化を目指した新産業の創出と人材育成のためのマッチングイベントを開催している。
同大学の取組を、本県の先端産業創出の参考とする。
同大学は、先端科学技術分野における国際的水準の研究を行い、それを背景として、大学院教育を実施するため、学部を置くことなく、独自のキャンパスと教育研究組織を持つのが特徴である。また、いしかわサイエンスパークの中核拠点としての役割を担っている。
超越バイオメディカルDX研究拠点は、経済産業省令和3年度「産学連携推進事業費補助金(地域の中核大学の産学融合拠点の整備)」(Jイノベプラットフォーム型)の補助事業の採択を受け設立された。技術や知識をシェアして共創する「シェアードオープンイノベーション」という新しい考え方に基づき、オープンラボを備え、広く会員団体企業を募り、幅広い知見や技術を有する多種多様な業種・業界の交流を推進している。スーパーコンピューターを活用したデータ駆動型のDXを組み合わせ、がんをはじめとする様々な疾病の超早期診断、創薬ツールなど、医療・ヘルスケア・メディカルなどに関わる広い分野のイノベーションを目指している。概要説明において、これまでにない最新のがん治療につながる成果の紹介があった。
また、同大学が中心となって進めている地方創生、地域活性化の取組として、「Matching HUB」事業の説明があった。URAやコーディネーターが集めた地域の大学や企業などのシーズやニーズ、行政や金融機関などからの支援を集約し、マッチングさせることで、新製品・新事業につながる種を作るという新しいコンセプトに基づく産学官金連動の取組である。開催するマッチングイベントでは、北陸を中心として全国から企業や大学支援機関が参加し、同種のイベントと比較して高いマッチング率を挙げている。今後は国公立大学間のネットワークを活用し全国展開を図っていくとのことである。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「専門的なデータサイエンスを行う人材との連携をどのように捉えているか」との質問に対し、「ある研究分野において、全て実験、実証ができるわけではない。AIによる予測は、新たな成果を得るために非常に効果的であり、その意味でデータサイエンスを担う人材との連携やその育成は重要である」との回答があった。
質疑後は、超越バイオメディカルDX研究拠点の施設見学を行い、現地で説明を受けた。
今回、視察先を調査できたことは、本県における先端産業の創出に大変参考となるものであった。
(中小企業におけるリスキリングについて)
本県においては、県内中小企業のDX推進のために、企業における従業員のリスキリングの推進が重要となっている。
石川樹脂工業株式会社では、ロボットを導入し、生産工程の自動化を図ることで、技能実習生頼みの生産体制から脱却し、労働生産性を以前に比べ1.9倍に向上させた。その背景には、3Dデジタル技術の習得、自社の工程にあったロボットプログラムを自ら柔軟にプログラミングするための従業員のリスキリングがあった。
リスキリングにより、AI・ロボットを活用したものづくりや自社ブランドの創出など、DXを推進して高い成果を上げている。
当該取組を調査することにより、本県における取組の参考とする。
同社は、外食チェーンや家庭向けの食器・雑貨、送電部品などのインフラ分野向けの工業製品、仏具、各種ノベルティのOEM製品など、幅広い業界・分野に向けて質の高い製品を製造・販売している企業である。主な取引先として、サイゼリヤや星野リゾートなど著名な企業が挙げられる。
代表製品である「ARAS(エイラス)」は、樹脂にガラス繊維を配合し、耐久性を高めた新素材を使用したオリジナルブランドの食器であり、「1,000回落としても割れない」扱いやすさと、今までに表現できなかったデザインを両立している。SNSでも話題になるなどした結果、発売から3年で、同社の売上げの2割近くを占め、業界でもトップクラスのシェアを誇っている。
同社は、従業員のリスキリングについて、経営陣が設定した目標を達成するための手段の一つとの認識のもと、従業員と課題を共有し、スモールステップから始めた取組について着実にPDCAを回すことで、経営変革をし続けている。
例えば、生産性向上・人件費等の固定費削減を図る中で、製造工程の自動化は重要な課題の一つであったことから、ファナック製のロボットを導入した。この際、自社従業員を専任メンバーとして抜擢し、外部トレーニング等のリスキリングで、一から自社工場向けのシステムを構築した。現在、ロボットは20台にまで増え、専任メンバーが、他の従業員をトレーニングすることで、生産現場で勤務するほとんどの従業員が、セットアップやメンテナンスまでの作業を実施できるようになった。
また、Amazonを通してのネット販売の担当者も、デジタルマーケティングの知識が全くない若手従業員を配置転換した。OJTやAmazonからの支援によるリスキリングを実施することで、売上げを大きく伸ばした。現在では、自社サイトによる売上げを伸ばしているほか、この経験を基に生成AIの活用にも取り組んでいるとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「ものづくり補助金等を活用しているとの話があったが、行政とはどのように連携しているのか」との質問に対し、「行政に対して、単に補助金のためだけの事業計画を提出するのではなく、実際のビジョンに基づいた事業計画を提出し、一緒にブラッシュアップしていくなど、毎年度、密に連携をしている」との回答があった。
質疑後は、工場内で導入したロボットが稼働している現場の視察を行ったほか、新たに導入を検討している自社開発の在庫管理システム等の説明を受けた。
今回、視察先を調査できたことは、本県における中小企業のリスキリングの推進に大変参考となるものであった。
石川樹脂工業株式会社にて
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください