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掲載日:2023年5月23日
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平成27年8月31日(月)~9月2日(水)
(1) 大阪府立子どもライフサポートセンター(堺市)
(2) 特定非営利活動法人児童虐待防止協会(大阪市)
(3) 地域密着型総合ケアセンターきたおおじ(京都市)
(4) 滋賀県庁[障害福祉課](大津市)
(児童の自立支援に関する取組について)
大阪府立子どもライフサポートセンターは、平成15年4月に、中学校卒業から18歳までの社会的養護が必要な児童に対して、進学や就職など社会的な自立に向けた必要な支援を行う施設として開設された児童自立支援施設である。
一人一人の児童の個性や能力に合わせ、自主性を引き出すことを尊重し、集団生活の枠組みはあるものの、個人ごとに、生活支援や心理的ケア、学習支援や職業支援等、多様なスタッフにより総合的な支援を行っている。
また、地域との関係を継続させながら自宅からの通所による施設利用もできるという。
同センターにおける社会的養護の取組を視察し、本県の児童の自立支援に関する施策の参考にする。
大阪府立子どもライフサポートセンターにて
大阪府立子どもライフサポートセンターは、大阪府としては2か所目の児童自立支援施設である。主にひきこもり・不登校等の状態にある対人関係の苦手な中学校卒業後の児童に対して、入所又は通所による集団生活を通して、社会的自立に向けた進路選択を支援することを目的として開設された。運営形態は、交代制・中舎制を採用しており、定員は、入所50人、通所30人で、現在入所45人、通所15人が利用している。
支援内容としては、生活支援のほか、専門の学習支援員に委託し個人の学力に合わせた個別指導を中心とした学習支援や、高校・大学受験、高校卒業程度認定試験や各種試験等に向けた支援も行っている。また、職業支援としては、面接の受け方やパソコン操作など就労に必要な具体的かつ基礎的な知識やスキルの習得を目指したプログラムを実施するとともに、ハローワークの利用、職場見学、職場実習など、より実践的な活動を行っている。心理支援プログラムでは、集団場面での適応能力のスキルアップを図る方法として、集団心理療法の一つであるソーシャル・スキル・トレーニング(SST)並びに「体験学習」、「野外教育」及び「グループカウンセリング」の手法を統合したアドベンチャーカウンセリング(AC)を実施している。
入所・通所の理由は、全国的な児童虐待事件の増加とともに変化している。開所以来、当初の設立目的であった不登校、高校中退、職場不適応等への支援ニーズが減少し、被虐待、児童自身の暴力や家出等の支援ニーズが増加してきている。平成26年度の入所実績は、被虐待又は養育拒否を背景とした入所児童が86.7%、過去に保護を受けたことがある児童が88%入所している状況とのことである。
また、最近の傾向では性的被虐待児への入所ニーズが高まってきているとのことであった。その背景として、性的虐待の対応件数のピークは中学校卒業後の児童であるが、中学校卒業後の児童を新規入所・保護する施設や里親が少なく、本センターがほとんど引き受けているとのことであった。
今回視察先を調査し児童虐待の増加が及ぼす対応状況を把握できたことは、今後、本県において、児童の自立支援に関する取組を推進していくために大変参考となるものであった。
(児童虐待防止に関する取組について)
特定非営利活動法人児童虐待防止協会は、平成2年に、医療・保健・福祉・司法・教育・報道などの関係者により日本で初めて児童虐待を防止するために民間団体として創設され、平成14年に特定非営利活動法人に認証された。
同協会では、「子どもの虐待ホットライン」(電話相談)をはじめ、育児困難な母親たちのグループケア、子供の虐待防止に関する研修・研究、広報・啓発、関係機関との地域連携など幅広い活動により、児童虐待の深刻化防止に貢献している。
本県においても児童虐待防止に関する取組は重要な課題であることから、民間の同協会の取組を視察し、今後の施策の参考にする。
児童虐待防止協会は、「子どもの命を守ろう、親を援助しよう」とのスローガンを掲げ、電話相談「子どもの虐待ホットライン」をスタートさせた、日本で初めての児童虐待防止を目的とした団体である。虐待が子供に対する重大な人権侵害であり、複雑な社会構造の中で虐待する親も地域社会から孤立し、傷ついていると捉え、親と子供の双方に対して、民間ならではのきめ細かな支援に取り組み、児童虐待の早期発見と予防を目的に多角的な活動を展開している。
当協会の主な事業としては、電話相談事業、グループケア事業、研修・研究事業、地域支援事業等が挙げられる。
電話相談事業は、虐待に特化した電話相談としては全国で初めてのもので、開始以来の電話相談累積件数は約5万件を数える。現在では、児童相談所等の公的機関で24時間対応の電話相談が増加し、当協会への相談件数は減少傾向にあるが、電話相談を実施している関係機関の連絡会等に参加し、経験やノウハウを伝達しているとのことである。
グループケア事業では、大阪府内保健センターの母子グループにファシリテーターとして参加しながら、保健師と虐待予防のための「大阪方式マザーグループ」を作り上げてきたとのことである。
研修・研究事業としては、医療、保健、福祉等、子供に関わる専門職が領域を超えて学び合う場として、「Child-Abuse研究会」を年3回開催している。さらに、大阪府福祉部の研修事業をはじめ、府内各自治体の委託研修会を実施している。
地域支援事業では、市町村要保護児童対策地域協議会の活性化に向け、大阪市24行政区へスーパーバイザーを派遣するなど、協議会機能の強化に取り組んでいる。
さらに、高校生を対象としたテキストを作成し、出前授業を行うなど、高校等における予防教育の取組など子供支援事業を新たに展開しているとのことであった。
概要説明の後、大阪方式マザーグループの実施状況や子連れの再婚家族(ステップファミリー)に対する虐待予防の取組などについて、委員から活発な質疑がなされた。
今回、民間の同協会を視察できたことは、本県の児童虐待防止における民間機関との連携に関する施策を推進していく上で、大変参考になるものであった。
(高齢者福祉に関する取組について)
地域密着型総合ケアセンターきたおおうじは、平成24年8月に、複数の社会福祉法人により設置された高齢者福祉の施設で、県内外7法人が連携した「リガーレ~暮らしの架け橋~」グループにより運営されている。同グループでは、グループ化のメリットを生かし、スーパーバイザーを配置し、各法人を巡回することで、地域の質の高い介護人材の育成にも取り組んでいる。
また、施設には、特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護、ショートステイ、サービス付き高齢者向け住宅など多様な介護サービスや、住民交流の場として活用できる地域交流サロンも備えられている。
同グループ及び同センターの取組を視察し、本県の高齢者福祉に関する施策の参考にする。
地域密着型総合ケアセンターきたおおうじは、平成24年8月に、社会福祉法人端山園を中心に、複数の社会福祉法人が連携して設置された施設で、事業所としての運営部門とグループ本部としての開発部門の2つの役割を担っている。
事業所としては、「住み慣れた地域で支える」、「すべての世代が集まり出会う広場に」、「利用者の尊厳保持の実現を目指す」の理念の下、地域密着型特別養護老人ホーム29人、短期入所生活介護10人、小規模多機能型居宅介護25人、サービス付き高齢者住宅6戸などの多様な介護サービスを整えている。介護予防や住民交流の場として活用できる地域交流サロンでは食事や喫茶が提供されるなど、独居高齢者の「居場所」としての機能を果たすとともに、同じ場所にある介護サービスとの連結により、高齢者への切れ目ない支援を目指している。
グループ本部の開発部門としては、看護師、介護福祉士、社会福祉士をスーパーバイザーとして配置し、グループ内の人材育成や組織・ケアの標準化を図っている。具体的には、スーパーバイザーが各法人の特別養護老人ホームや介護事業所などを訪問し、ケアの質をはじめ、法人理念が浸透しているかといった組織風土の醸成、職員間の情報共有の仕方、施設の設備・環境、職員の配置状況などのチェックを行い、各事業所にフィードバックしている。スーパーバイザーの人件費は所属する7法人が拠出する委託費で賄っているとのことである。
また、きたおおうじが実施しているキャリアごとの研修に、各グループ法人も参加することで、グループによる統一的な研修体系を確立させている。今後は、グループ内のキャリアパスや給与体系の一元化、職員の共同募集を目指しているとのことであった。
このように複数の法人による共同事業や、職員の育成方法は本県にはなくユニークであった。
今回視察先を調査できたことは、今後、急速に超高齢社会を迎える本県において、高齢者福祉に関する施策を推進していくために大変参考となるものであった。
(障害者の就労支援に関する取組について)
滋賀県では「障害者就職面接会」のほか、毎年「障害者ワークフェスしが」を行うなど、県内の企業や住民の方々に障害者の雇用に関心を持ってもらうよう取り組むとともに、積極的に障害者の雇用・就労を促進している。その一環として、これから迎える超高齢化社会を見据えて障害者を介護人材に育てて、就労を促進する先進的な事業に取り組んでいる。
同県では、平成12年度から知的障害者介護技能等習得事業を全国に先駆けて実施し、これまでに183名が研修を修了、うち51名が介護事業所や保育所などで就労している。
同県の取組を視察し、本県の障害者の就労支援に関する施策の参考にする。
滋賀県庁にて
滋賀県では、平成12年度から①「知的障害者介護技能等習得事業」、また、平成26年度から②「障害者介護職員養成事業」を実施している。
①については、約3カ月に渡り、研修(旧3級ヘルパー相当)や現場実習(希望者のみ)を実施し、平成27年3月末時点で183名が研修を修了し、69名が就労している。そのうち51名は介護事業所や保育所などに就労しているという。また、②では、約5か月に及ぶ研修を受講し、介護職員初任者研修(旧2級ヘルパー相当)の資格取得を目指す。平成26年度は、10名が受講し、9名が研修を修了した。そのうち6名が介護現場等への就労に至っているという。
こうした障害者が就労した介護事業所等へ同県が実施したアンケート結果では、障害の有無にかかわらず、個々の特性を踏まえた業務の割り振りを考えるようになった、全職員に分かりやすいマニュアルの作成につながり、時間のロスや仕事のミスが減った、障害のある人もない人も共に働くことが自然となった、などの効果が挙げられるとのことであった。
一方で、利用者に話の内容が伝わらないことがある、ひとつひとつ指示し、確認しないとミスが生じることがある、事業所に知的障害のある職員を指導するスキルがない、就労後のフォローアップや、雇用の受け皿となる事業所への支援等の課題が報告されているとのことであった。
そこで、同県では平成27年度から、知的障害者の技能等習得支援として、これまでの研修に県独自のカリキュラムの上乗せ及び1か月間の現場実習を必須とし、県独自の3年有期の資格(いきいき生活支援員)を付与することとした。更新には、計6回の研修の受講を義務付け、就労後のフォローアップを行う。また、介護事業所の職員に対し、障害の特性の理解促進や業務中の職員に対する支援方法など、知的障害者雇用にかかる環境整備を目的とした研修を実施することとした。さらに、有資格者の知的障害者と介護事業所情報をマッチングする人材バンク機能を持つ登録センターを設置した。
概要説明を受けた後、県独自の資格付与の効果や就労場所の確保について委員から活発な質疑が行われた。
今回視察先を調査できたことは、今後、本県において、障害者の就労支援に関する施策を推進していくために大変参考となるものであった。
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