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掲載日:2023年5月23日
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平成27年9月9日(水)~11日(金)
(1) (公財)京都府埋蔵文化財調査研究センター(向日市)
(2) 北近畿タンゴ鉄道㈱・WILLER TRAINS㈱(宮津市)
(3) 但馬空港ターミナル㈱(豊岡市)
(4) (公財)姫路・西はりま地場産業センター(姫路市)
(公社による地域文化資源保護の取組について)
(公財)京都府埋蔵文化財調査研究センターは、京都府内に存する埋蔵文化財の発掘調査や出土遺物の整理・復元、研究、普及啓発等を目的として設立された公益財団法人である。公共事業等に伴い事前に必要となる埋蔵文化財の発掘調査等を受託し、京都府教育委員会とともに文化財保護の取組を行っている。また、同センターでは、発掘調査時の現地説明会、公開講座、学校への出前授業等の実施に加え、「小さな展覧会」と称する発掘調査成果速報展を毎年開催するなど、京都の持つ歴史や文化の普及・啓発活動を積極的に推進している。
本県の出資法人における地域文化資源保護の参考とするため、同センターの取組を視察する。
(公財)京都府埋蔵文化財調査研究センターにて
(公財)京都府埋蔵文化財調査研究センターは、昭和56年に設立され、平成23年に公益財団法人としての認可を受けた。京都府内で行われる国、府、公社・公団等の開発事業に伴う事前発掘調査と、埋蔵文化財の地域における教育的資産の意義を踏まえた研究や普及啓発を行い、文化的な向上、発展に寄与することを主な事業目的としている。理事会を構成する12人の理事のうち8名は大学の名誉教授など学識経験者が務めていることが特徴であり、埋蔵文化財「調査研究」センターと名付けられた理由にもなっている。
文化財保護法に基づき、遺跡や古墳など埋蔵文化財があると見込まれる土地を自治体等が指定した「周知の埋蔵文化財包蔵地」において土木工事を行う場合、工事に先立ち試掘調査や発掘調査等を行い記録保存することが義務付けられている。全国には約40万箇所の埋蔵文化財包蔵地があるが、そのうち同府には約1万7,000箇所が存在する。包蔵地の数が特段多いわけではないが、平安京、長岡京という大規模な都城を抱えていることから、包蔵地の面積は全国屈指の広さがあるという。なお、国や公社・公団等が行う大規模な開発は都道府県教育委員会が、市町村や民間の開発事業は市町村教育委員会が発掘調査を実施するよう役割分担をしている例が多いという。また、都道府県教育委員会が行う発掘調査は、直営により行っている場合もあるが、財団法人等の公社を設立し、効率的に事業を実施している場合が多いとのことである。
現在の主な発掘調査は、新名神高速道路関連事業が中心で、同センターの年間事業収益約8億5,000万円のうち、半分ほどを占めているという。昨年度の実績として事業件数は14件、調査面積は40,000㎡であった。関西地域は関東地域と比べ低湿地が多く、遺物も層になっていることから、地中深くまで調査する必要があり、関東地域とは調査方法が異なる部分もあるとのことである。
同センターが行う普及啓発事業としては、同センターや同府の職員、同府内の大学の職員等が講師となって発掘調査成果の発表を行う「埋蔵文化財セミナー」を年3回実施し、毎回100人程度の参加者があるという。発掘調査成果速報展「小さな展覧会」は、同センター設立以来毎年続けており、府内市町村教育委員会の調査成果も含め、2~3週間にわたって開催し、来場者は2,000人程である。また、情報誌「京都府埋蔵文化財情報」を年3回、各1,500部発行しており、全国の関係機関や府内の教育機関に送付している。そのほか、ホームページに現地説明会の資料、情報誌及び調査報告書等を公表したり、地元市のイベントにおける体験コーナーの設置、学校への出前授業、考古学ファン向けの専門講座等を実施している。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「事業面でどのような工夫を行っているのか」との質問があり、「一府県の範囲では事業量の増減が大きい。限られた人員で調査事業を行うため、大規模開発の際は近接府県との連携を行っている。例えば関西空港の開発の際には、近畿圏の財団が協力して調査に当たった」との説明があった。
今回視察先を調査できたことは、本県における埋蔵文化財保護の取組を推進する上で大変参考となるものであった。
(地域公共交通の効率的な運営について)
北近畿タンゴ鉄道㈱は、京都府・兵庫県で鉄道2路線の施設を保有する第三セクターの鉄道会社(第三種鉄道事業者)である。同社では、観光列車「くろまつ号」や「あかまつ号」を運行するなど、サービス向上の取組を行っていたが、更なる経営改善のため、鉄道事業再構築実施計画に基づく上下分離を実施した。実施後は、鉄道施設を同社が保有し、運行・運営については高速バス事業を中心に手掛ける旅行会社であるウィラーグループが設立したWILLER TRAINS㈱が行っている。
本県における出資法人による地域公共交通の効率的な運営の参考とするため、同社の取組を視察する。
北近畿タンゴ鉄道㈱ 天橋立駅にて
北近畿タンゴ鉄道㈱は昭和57年に宮福鉄道㈱として設立された。現在の資本金は14億円、主な株主は京都府、兵庫県や沿線市町等である。福知山から宮津を結ぶ「宮福線」、西舞鶴から豊岡を結ぶ「宮津線」の2路線、計114kmを有している。車両は34両を保有しているが、いずれも導入から20年以上経過しており、老朽化が課題となっている。同社では、工業デザイナー水戸岡鋭治氏がデザインした観光列車「あかまつ号」「あおまつ号」や「海の京都の走るダイニングルーム」をコンセプトとした「くろまつ号」を運行する取組などを行っていたが、利用者数は平成5年度、経常収入は平成8年度のピークからいずれも約3分の2まで落ち込み、近年は経常損失が年間8億円を超えるなど、非常に厳しい経営状況にあった。そこで、平成23年4月に京都府、兵庫県をはじめとする沿線自治体や鉄道事業者、有識者などから構成される「北部地域総合公共交通検討会」を立ち上げ、地域における総合的な公共交通の在り方を検討する中で、同鉄道が地域に愛される鉄道として次世代に引き継げるよう、そのための課題解決策のひとつとして上下分離案が示された。上下分離に当たっては、基盤部門は社会インフラとして国・自治体がしっかりと支え、運行部門は民間会社のノウハウを生かした自立的で収支バランスが取れる仕組みを目指した。平成25年10月から運行会社の募集を開始し、複数者の応募者からウィラーグループを選定した。なお、平成27年4月1日の上下分離に伴い、一部の高齢な社員を除き、190名程いた社員のほぼ全員がWILLER TRAINS㈱に転籍したため、北近畿タンゴ鉄道㈱の社員数は現在5名となっている。
運営を引き継いだWILLER TRAINS㈱では、鉄道通称名を「京都丹後鉄道」と名付けたのをはじめ、「宮豊線」「宮舞線」「宮福線」と路線名を分け、縁起の良い字にちなみ「縁起三線」としてPRしている。また、駅員制服の刷新、駅名も「地元の人が喜ぶ、利用者が分かりやすく呼びやすい」名称に変更するなど、イメージ向上に取り組んでいる。WILLER TRAINS㈱では、運行開始時から「家族」をテーマとした様々な企画乗車券を販売し「家族みんなで楽しめる鉄道」を目指すとしている。運行事業者の変更は沿線住民にとって不安な面もあったことから、良い変化を実感してもらうべく「大丹鉄まつり」を開催し、1万人の来場者があったという。
WILLER TRAINS㈱では鉄道運営に加えて、地域に若者の雇用を生み出すことが重要と考え、地方でもできるデザイン関係やカスタマーセンター業務等について、まず自社グループが設置し、他社にも追従してもらえるようモデルを示していきたいとのことである。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「上下分離に伴い、設備等の減価償却期間に変更は生じたのか。また、運賃や料金の改定はあったのか」との質問に対し、「上下分離に伴う減価償却期間の変更はない。また、運賃等は従前のまま据え置いている」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県における地域公共交通の効率的な運営を行う上で、大変参考となるものであった。
(公社による高速交通基盤の効率的な運営について)
但馬空港ターミナル㈱は、兵庫県が約3割を出資する第三セクターであり、兵庫県但馬地域の高速交通の空白状態の解消と地域振興を目指し整備された「コウノトリ但馬空港(兵庫県立但馬飛行場)」のターミナルビルや周辺施設の管理を行うことを目的として設立された。
同空港は、民活空港運営法に基づき、兵庫県が公共施設等運営権を設定し、滑走路等も含めた空港施設全体を民間事業者が運営することが可能となったことから、平成27年1月から、同社が一体経営を行っており、施設管理の効率化や多様なサービスの提供を通じた地域経済の活性化が期待されている。
本県の出資法人による公的施設の効率的な管理・運営の参考とするため、同社の取組を視察する。
コウノトリ但馬空港は兵庫県の日本海側に位置し、豊岡市をはじめとする県内1市3町、隣接する京都府の1市1町の人口23万5,000人程の地域をおおよその背後圏としている。松葉ガニ、但馬牛、城崎温泉など観光資源が地域にとって重要な産業となっている。この地域の高速交通の空白状態の解消と地域振興を目指し、昭和56年に兵庫県が地域航空システムの導入を決定し、平成6年5月に開港した。現在、36人乗り小型機が大阪国際空港との間を朝夕計2往復運航しており、定期便に合わせて城崎温泉やJR豊岡駅との間を路線バスが結んでいる。
開港以降、利用者はおおむね増加傾向にあり、特に鉄道に比べて時間短縮が見込める東京への乗継利用者は年間1万人を超えるようになった。一方、運航上の課題として、冬季は積雪や濃霧による欠航が多く、定期便が欠航せずに運航される割合を示す就航率は、離島等を除く本土空港で最低レベルと言われる年平均92%(平成21~25年)にとどまっている。特に1月は就航率74%となっており、公共交通としての信頼性の観点から利用者数の減少につながっている。
開港から20年余りが経過し、但馬地域においても高速道路網の整備が順次進んでいるが、同空港における利用者層とはすみ分けがされていると分析しており、旅客動向に大きな変化はないと見込んでいるという。また、同空港背後圏と首都圏との年間旅客流動は15万人余りと考えられ、航空の分担率を考慮すると3~4万人程度は見込め、利用者増加のポテンシャルは大きい。近年、城崎温泉など但馬地域への外国人観光客が急増しているが、同空港の利用には結び付いていないという。これは、外国人観光客向けに廉価で販売されるJRのレールパスの存在が影響しているとのことである。
利用促進に向けた取組としては、地元の自治体や商工会等が中心となり「但馬空港推進協議会」を組織し、運賃助成や、空港アクセスバスや欠航時の代替バスの運行、旅行商品の販売やPRキャンペーン等を行い地域ぐるみで空港運営をバックアップしている。
兵庫県は、同空港に関連する経費として、空港管理事務所の人件費を除いて5億円程度負担しており、効率的な運営は大きな課題であった。そこで、同県は民活空港運営法を活用し、ターミナルビルなどの管理を行っていた但馬空港ターミナル㈱に運営権を設定して、平成27年1月から滑走路などの空港基本施設等を含めて一括管理を行わせることで効率的な運営体制を構築した。一体運営の主なポイントとしては、指揮命令系統の一元化による機動的な運営が可能となったこと、同社が県出資法人であることから、旧空港管理事務所職員を派遣することでノウハウを継承させて安全確実な管理運営ができたこと、空港管理事務所と同社で類似業務の集約を行い定数を削減しトータルの人件費が削減できたとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質疑がなされた。「空港施設全体で雇用はどの程度あるのか」との質問に対し、「空港運営には消防や給油等の業務も必要となるので、50人程の雇用がある。この地域での雇用規模としては大きいと考えている」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県の出資法人による公的施設の効率的な運営に取り組む上で、大変参考となるものであった。
(公社による地場産業振興の取組について)
(公財)姫路・西はりま地場産業センターは、姫路市が約3分の2を出資する財団法人として昭和56年に設立された。西播磨地域における地場産業振興のため、新商品開発、研修等の支援事業を実施しているほか、同地域の特産である革製品や乾麺などを中心とした、地場産品の普及・販売促進のため、ウェブショップ「はりまの宝蔵」や紹介サイト「電子じばさん館」、物産館「播産館(ばんさんかん)」の運営等を行っている。
本県における出資法人の地場産業振興の取組の参考とするため、同センターの取組を視察する。
同センターは、西播磨地域における地場産業振興のための事業を行うことにより、地場産業の健全な育成及び発展に貢献し、活力ある地域経済社会の形成、地域住民の生活向上及び福祉の増進に寄与することを目的として設立された。
主な事業内容としては、営業力養成講座の実施、新製品開発事業としてオリジナル皮革製品の開発、特産品の展示販売やイベントへの出展を通じた地場産業のPRなどの地場産業普及啓発事業などを行っている。また、情報収集提供事業として、ソーシャルメディアによる情報発信や、同センターが所有する「じばさんビル」の会議室等を貸し出す施設提供事業、西播磨地域の名産品を集めた「播産館」の運営、地場産業マッチング事業として産学連携等の強化や障害者就労支援として販売促進機会の提供等を行っている。
同センターでは、地域特産である皮革素材の魅力を伝えるため、オリジナルブランド「sebanz(セバンズ)」シリーズとしてバッグやブックカバー等を販売している。また、姫路地域では藍染が盛んであったことから、藍染革の開発にも取り組み、「姫路藍靼(ひめじらんたん)」の商標で商品化を目指している。藍染はアルカリ性の溶液を用いるが、皮革はアルカリに弱く、風合いや手触りを損ねてしまうという相反する特性を克服するため、数年にわたり研究を重ね、ようやく市場化のめどがついたという。また、同館内においてカバン職人のチャレンジ工房「革工房BAIMO(バイモ)」にスペースを提供し、外部からの注文の取次ぎを行うなど、独立開業に向けた取組を支援している。
同センターの課題としては、西播磨地域は地場産業が盛んであるものの、新興国の追い上げにより厳しい競争にさらされている業種をどのように支えていくのか、また、平成25年に公益財団法人となったことで、事業面や会計面での制約を受けており、経済界との連携で求められるスピード感をもった事業展開と両立することに懸念があるといったことがあるという。また、じばさんビルの老朽化も進んでいるが、建て替え等の計画はなく、白紙の状態とのことである。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「産学連携事業について、具体的にどのような取組を行っているのか」との質問に対し、「製菓業界と兵庫県立大学の連携をサポートし、地場の素材に関する味覚や機能性、成分分析などの専門的研究を大学の研究室に依頼し、その結果を商品開発に役立てるような取組を行っている」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県における出資法人の地場産業振興の取組を行う上で、大変参考となるものであった。
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