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掲載日:2023年5月23日
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平成28年8月17日(水)~19日(金)
(1) おおき循環センターくるるん(福岡県大木町)
(2) 福岡市中部水処理センター(福岡市)
(3) 北九州市響灘ビオトープ(北九州市)
(4) (公財)北九州産業学術推進機構(北九州市)
(資源循環社会の構築に関する取組について)
大木町では、町の中心部に生ごみ、し尿などをリサイクルするおおき循環センターを建設し、町を挙げて持続可能な循環のまちづくりを進めている。平成17年度から18年度にかけてメタン発酵施設や液肥タンク、バイオガス発電施設などが建設され、平成20年度から21年度には農産物直売所や郷土料理レストランなどを隣接地に建設し、町おこしの拠点施設にもなっている。
平成18年11月からは、施設の建設に併せて全町で生ごみの分別収集が開始され、生ごみのエネルギー化、再資源化とごみの減量を両立している。また、住民の理解・協力の下、25種類もの分別収集によりごみが収集され、ごみ処理費の大幅な削減を達成している。
同センターの取組を視察し、本県の資源循環社会の構築に関する施策の参考にする。
大木町は、循環のまちづくりの拠点として、平成18年11月にバイオマスセンターをオープンし、町内から発生する生ごみやし尿・浄化槽汚泥などを町民との協働で、エネルギーや有機肥料として地域の中で循環活用している。また、平成20年3月には「大木町もったいない宣言」を議会で可決し、全国で2番目となるごみゼロ(ゼロウエイスト)を宣言・公表し、焼却や埋立処分をしない町を目指している。
同町では、生ごみは隣接する大川市の清掃センターで焼却処分を行い、し尿や浄化槽汚泥は海洋投棄されていた。しかし、海洋投棄が禁止されるようになると、抜本的にごみ処理システムを再構築する必要に迫られ、焼却処分に頼らずできるだけ分別をして生ごみだけを町内でリサイクルに徹して処分することとした。また、下水道を整備するのではなく、合併浄化槽の整備を進め、汲み取り回収した汚泥を町内のリサイクル施設で処分するシステムを構築した。
このような施設は「迷惑施設」とも呼ばれ、設置場所などに苦労することも少なくないが、同町は同施設を「環境・農業・食をつなぐ、まちづくりの拠点」と位置付け、国道バイパス沿いの町中心部に設置した。JAの農産物直売所や健康地域応援レストラン「デリ&ビュッフェくるるん」を併設し、町民の地域循環システムへの理解や協力を高め、地域の一体感を醸成することに成功している。
また、施設の建設と併せて全町で生ごみの分別収集を開始した。バケツコンテナ方式により生ごみを収集し、10世帯に1か所程度にコンテナを設置している。バケツコンテナ方式は配達・回収作業の手間が掛かるが、異物混入は約1%以下でほとんど見られないとのことである。焼却するごみの量は、平成17年度と比べて、平成27年度時点で約42.4%減となり、一方で、資源化率は15.68%から60.96%に急増したとのことである。
また、メタン発酵時に発生する消化液も、液肥として無料で町民や町内農家に配布し、収穫された農産物は隣接する直売所やレストラン、学校給食で利用されている。
さらに、菜の花プロジェクトとして、休耕田を利用した菜の花の育成から、食用油の製造、廃食油のバイオディーゼル燃料(BDF)化も行っている。この中で製造した菜種油は「環のかおり」という製品名で地域に販売するとともに、廃食油から生成したBDFは、当施設のバキューム車やフォークリフト等に利用している。
今回視察先を調査できたことは、今後、資源循環社会の構築に関する取組を推進していくために大変参考となるものであった。
(水素社会の実現に向けた取組について)
福岡市は、水素エネルギー社会の実現に向け、「水素リーダー都市プロジェクト」を進めている。プロジェクトの第一弾として、九州大学、三菱化工機㈱、豊田通商㈱とともに、下水汚泥から水素を作って燃料電池自動車(FCV)に供給する世界初の水素ステーションを平成27年3月に開設した。
この水素ステーションは、水素製造時にCO2を増やさない「グリーン水素」を作り、都市部におけるエネルギーの地産地消を実現している。
本県においても水素社会の実現に向けた取組は重要な課題であることから、同市の取組を視察し、今後の施策の参考にする。
福岡市が推進している「水素リーダー都市プロジェクト」の第一弾として、三菱化工機㈱、福岡市、九州大学、豊田通商㈱の4者による下水バイオマス原料による水素創エネ技術の実証研究が、平成26年度国土交通省「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に採択された。このプロジェクトの中で、下水汚泥から水素を造り、燃料電池自動車(FCV)に供給するという、世界で初めての水素ステーションが平成27年3月に福岡市中部水処理センターに開設された。平成28年度からは商用の水素ステーションとして運営されている。
このプロジェクトでは、下水汚泥処理設備の消化槽より得られた下水バイオガスから、膜分離装置によりメタン濃度を上げ、精製したメタンを原料に、水素発生装置で水素を製造している。同施設では、1日当たり、下水バイオガス2,400㎥から、水素3,300㎥(燃料電池自動車約65台分)を製造している。全国には、約2,145か所の下水処理場があり、約300か所が消化槽を保有している。消化工程(メタン発酵)において発生する下水バイオガスは、消化槽の加温、焼却炉の補助燃料、発電等にエネルギー利用されてはいるが、約30%に当たる年間8,500万㎥は未利用のまま焼却処分されている。この水素製造ポテンシャルは約260万台の燃料電池自動車をフル充填できる量とのことである。
さらに、都市型バイオマス集積所である下水処理場で発生する下水バイオガスを原料とした水素製造設備は、製造した水素をオンサイト型水素ステーションに供給したり、出荷設備を設けることによりオフサイト型水素ステーションへ運搬・供給が可能である。また、将来的には水素製造過程で排出された二酸化炭素を回収し農産物のハウス栽培で利用できる可能性も秘めているとのことである。このようにエネルギー需要地に近い都市部の下水処理場に水素ステーションを構築することにより、地産地消のエネルギー供給システムとして、市民生活へ多角的な貢献ができるとのことであった。
福岡市中部水処理センターにて
概要説明の後、実用化に向けての可能性や事業採算性等について活発な質疑が行われた。
今回視察先を調査できたことは、今後、水素社会の実現に向けた取組を推進していくために大変参考となるものであった。
(自然環境の保全について)
北九州市では、環境未来都市にふさわしい「都市と自然との共生するまち」を目指し、「響灘・鳥がさえずる緑の回廊創成事業」を進めている。その中核的な取組として、響灘地区にある廃棄物処分場跡地に日本最大級の広さ41haの響灘ビオトープを造成した。廃棄物の埋め立て後にできた凸凹の地形が、湿地や淡水池、草原などの多様な環境を生み、様々な生物が生息するようになった。これまで、237種の鳥類や、284種の植物などが確認されている。また、市民が生物多様性に配慮しながら自然と触れ合える魅力ある自然環境学習拠点にもなっている。
同施設の取組を視察し、本県の自然環境の保全に関する施策の参考にする。
北九州市は、平成17年度に政令市で初めてとなる自然環境保全基本計画を策定した。平成22年度には、同計画を改定し、自然環境の枠を超えた総合的な戦略として「北九州市生物多様性戦略」を策定した。そのリーディングプロジェクトのひとつとして、「響灘・鳥がさえずる緑の回廊創生事業」を進めており、中核的な取組として響灘ビオトープを造成した。
響灘ビオトープのある響灘地区はもともとは海であったが、昭和55年に廃棄物処分場として埋め立てが始まり、昭和61年に埋め立てが完了した。当初は、産業用地としての活用を目指していたが、廃棄物の埋め立ての後にできた凸凹の地形が、湿地や淡水池、草原などの多様な環境を生み、様々な生物が生息するようになったため、当初の計画を見直し、ビオトープを整備することになった。
同施設では、通常、廃棄物処分場跡地の整備の際、平らに覆土するところを、地形を変えないよう一定に50cm覆土し、さらに希少生物の出現時期を避けて、数年にわたり小分けに整備を行った。そのため、一般的には1年程度で完了する基盤整備に5年を要した。しかし、小分けに整備をすることにより、生き物の移動ルートを確保することができ、生物の楽園であるビオトープを守ることができたとのことである。
平成24年10月に開園した同施設は、敷地面積約41haのうち、公開されているエリアは約7haある。また、整備された園路(遊歩道)は2kmほどで、四季折々の発見を楽しむことができ、敷地内にあるネイチャーセンターでは、当園の成り立ちや生息する生き物を、パネルなどで分かりやく展示するなど、市民が自然と触れ合あいながら生物多様性の重要性や生態系の仕組みを学べる自然環境学習拠点ともなっている。
同施設には、これまでに237種に及ぶ鳥類や、284種の植物、24種のトンボ等が確認されている。 その中には、メダカやベッコウトンボ、チュウヒなど環境省の絶滅危惧種に指定されている希少な生物も生息しているとのことである。
概要説明の後、外来種に対する対策、ビオトープの維持管理体制、環境保全団体との連携等について活発な質疑が行われた。
今回視察先を調査できたことは、今後、自然環境保全に関する取組を推進していくために大変参考となるものであった。
北九州市響灘ビオトープにて
(太陽光パネルのリサイクルに関する取組について)
地球温暖化防止に向けて、再生可能エネルギーの更なる拡充が求められる中、太陽光発電システムは、最も身近な存在となっている。一方で、将来の老朽化に伴う大量廃棄への対応が喫緊の課題となっている。そのような中、(公財)北九州産業学術推進機構の太陽光パネルリサイクルビジネスの事業化支援事業が経済産業省の新分野進出支援事業に採択された。
同法人は太陽光発電設備のリサイクルで高い技術を持つ㈱新菱と共同開発を進めており、開発したリサイクル処理手法は、リサイクル率が高く、ガラスの高度な再活用が可能な先進的な手法である。
本県においても、太陽光パネルのリサイクルについては重要な課題であることから、同法人の取組を視察し、今後の施策の参考にする。
再生可能エネルギーの普及を目的とした固定価格買取制度がスタートした平成24年7月以降、太陽光発電を設置した家庭やメガソーラーを建設・稼働させる事業所が全国的に急増した。その一方で、太陽光発電パネルの耐用年数は20年程度とされ、現在稼働中の太陽光パネルが大量廃棄されることが予想されており、平成42年(2030年)には廃棄量が約8万トンにも達するとも言われている。
このような背景の下、平成21年、(公財)北九州産業学術推進機構(FAIS)が中核となり、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「広域対象のPVシステム汎用リサイクル処理方法に関する研究開発」を開始し、平成25年に太陽光パネルリサイクルのパイロットプラントが㈱新菱に設置された。平成27年9月からは実証事業を開始している。
FAISと㈱新菱等が共同開発したリサイクル処理手法は、現在大量に普及している結晶シリコン系、薄膜シリコン系及びCIS系の各種パネルに対応できる。可能な限り原材料に再生できる処理として、①アルミ枠の解体、②バックシートの除去、③封止材の樹脂の分解・燃焼、④CIS膜の除去の工程に分かれ、全自動で一貫して処理ができる。処理能力は1時間当たり10枚程度で、バックシートを除く95%の部分をリサイクルできるものである。また、ガラスを割らずに処理するため、高度な再活用が可能である。
太陽光パネルをリサイクルするためには、いかに廃棄パネルを回収してくるかが課題ととなる。このため、FAISでは、現在、北九州市や九州経済産業局、(公財)九州経済調査協会等と共同で、九州全域を対象としたメガソーラーの廃棄パネルやパネルメーカーの初期不良品等の広域収集体制を整備し、パネルリサイクルビジネスモデルの構築を進めているとのことである。このプロジェクトは、平成27年度の経済産業省の新分野進出支援事業に採択されており、将来的には、戸建て住宅の廃棄パネルを回収・処理する社会システムを構築することを目指しているとのことである。
今回視察先を調査できたことは、今後、本県においても太陽光パネルのリサイクルに関する取組を推進していくために大変参考となるものであった。
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