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掲載日:2023年5月23日
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平成30年7月25日(水曜日)~26日(木曜日)
(1) 山梨県富士山科学研究所(富士吉田市)
(2) 横浜市消防訓練センター(横浜市)
(火山対策について)
富士山科学研究所は、気象庁の火山噴火予知連絡会会長を長年務めた藤井敏嗣氏を所長とし、防災の分野では火山防災研究部が富士山の噴火被害を軽減するため、噴火履歴や予測などを研究している。
近年、日本各地の山で噴火やその兆候がある。平成30年1月には草津白根山が噴火し、本県の防災ヘリが出動するとともに、県民へも降灰への注意喚起を行った。
また、富士山が噴火した場合、本県でも降灰が予想され、健康被害やライフラインの途絶、建物の損壊などの影響が懸念される。そこで、同研究所における最新の研究の知見などを調査するとともに、市町村や警察なども関係する本県の地域防災計画改正や訓練実施の参考とする。
平成26年4月に山梨県環境科学研究所から名称変更した山梨県富士山科学研究所は、日本のシンボルである富士山に様々な角度から光を当て、世界共有財産として「守り」、「生かす」ための方策を科学的に追求している。
防災面の重点的な取組としては、平成30年度から34年度は、火山監視観測システムの富士山への最適化とその情報発信の研究として、岩脈貫入型の噴火の前兆を捉えるための観測手法、体制の確立や、観測データを準リアルタイムで公開するとともに、一般市民が理解しやすい方法での公開を進めている。
平成28年度から30年度は、噴火実態の検証として、防災マップを改訂する際に、その形状を大きく左右する富士山北麓付近に分布する噴火堆積物について、給源と分布域を明らかにするとともに、識別手法の確立を目指している。
富士山は噴火のデパートと言われており、溶岩流、火山弾、火砕流、噴煙など様々なタイプの活動が起こり得る。その前兆現象を捉えるための手法として、マグマの動きを把握する火山性地震観測、マグマの蓄積や動きを把握する地殻変動観測、熱的状態を把握する温度・地磁気観測、マグマ性ガスを捕捉する火山ガス観測、そして地下水観測などがある。
富士山が噴火した場合には、本県にも一部の地域において10cm程度の降灰が予想され、道路や鉄道の交通困難、電波障害、電子機器の異常、電気・ガス・上下水道などのライフライン設備への影響が予想される。また、東海道新幹線の途絶や羽田、成田空港の閉鎖による流通経済の破綻や食糧不足なども懸念される。なお、降灰量による被害想定としては、5mm以上の降灰で道路が通行不能となり、住民避難が困難となる。30cmの降灰で木造家屋が全壊するなど甚大な被害が発生するとのことであった。
また、同研究所を所管する山梨県では、火山防災対策協議会を設置し、住民の広域避難計画を策定するとともに訓練などを実施している。
視察中、委員からは活発な質疑が行われた。その中で「富士山はいつ噴火する見込みなのか」との質問に対し、「過去3,200年の間では平均すると30年に一度の頻度で噴火し、最後は1707年の貞観噴火である。そのため、いつ噴火してもおかしくない状況である」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県の火山対策に大変参考となるものであった。
(危機管理対策について)
横浜市消防訓練センターは、横浜市民約370万人を担当する政令指定都市最大規模の横浜市消防局が所管する訓練施設であり、各種の消防教育などを行っている。
視察日である7月26日には、同消防局が同センターで、ラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピックなどの大規模イベント開催中における化学災害を想定した訓練を実施する。
本県でも今後、熊谷ラグビー場、さいたまスーパーアリーナや埼玉スタジアム2○○2などで、これらの大規模イベントが実施される予定となっており、化学災害を想定した対策の実施は急務である。そこで、同センター及び訓練を視察することで、本県の消防力の向上や警察など関係機関が連携した危機管理対策の強化の参考とする。
横浜市消防訓練センターは、昭和51年3月に完成し敷地面積が約54,000平方メートルで、施設は、校舎棟、宿舎棟、高圧ガス容器保管庫のほか、救助、消火、潜水、走行用などの各種訓練場がある。組織は、管理・研究課及び教育課で構成され、人員は所長以下36人となっている。消防教育については、新規採用職員、現場活動職員、消防団員に対するもののほか市民向けにも行っている。
同消防局では4つの運営方針の一つとして、ラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピック両大会に向けた消防対策を推進している。具体的には、化学剤検知器などの特殊災害対応機材、多数傷病者事案に対応する外傷処置用機材等や、指揮機能強化のための情報共有に用いるモニターやディスプレイの整備などである。
視察当日に行われた訓練は、スポーツイベント会場に車両が突入し、有毒物質を故意に放出させ、要救助者が多数発生したとの想定の下、迅速かつ適切な避難誘導と効果的な除染活動を目的としたものである。
訓練では、観客の避難誘導、消防警戒区域等の設定、有毒物質の特定、除染の実施などが行われた。特に留意する点は、有毒物質で倒れている観客を速やかに救助できないことであるとのことであった。これは、原因物資が不明のまま救助活動し、多数の消防職員などに負傷者が生じた平成7年の地下鉄サリン事件の教訓から、観客や会場警備員からの事情聴取や検知器を使用するなどして原因物資を特定し、適切な防護服等を装備してから救助する必要があるためである。
また、今回の訓練では夏の暑い時期に行われるイベントを想定しており、重く暑い防護服を装備した救助部隊の熱中症対策も十分に施されていた。
視察中、委員からは活発な質疑が行われた。その中で「有毒物質で倒れた観客をどれくらいの時間で救助できるのか」との質問に対し、「化学テロでは有毒物質の特定、それに対応した装備の決定、除染の実施、さらに搬送先病院の選定や輸送手段の確保などを複数の関係機関と同時に調整する必要がある。そのため、即時性で対応する通常の火災や事故対応とは異なり、時間を要することとなる」との回答があった。また、「警察などの関係機関との連携はどうしているか」との質問に対し、「化学テロは消防だけで対処できるものではないため、警察や医療機関と役割分担を決めながら、訓練等を通じて連携を強化している」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県の危機管理対策の強化に大変参考となるものであった。
横浜市消防訓練センターにて
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