ページ番号:137227
掲載日:2023年5月23日
ここから本文です。
平成30年6月6日(水曜日)~8日(金曜日)
(1) 長崎原爆資料館(長崎市)
(2) 長崎県庁[危機管理課](長崎市)
(3) 海上自衛隊佐世保地方総監部(佐世保市)
(4) 佐賀県警察本部(佐賀市)
(国民保護対策について)
長崎原爆資料館では、被爆の惨状をはじめ、原爆が投下されるに至った経緯や核兵器開発の歴史などの展示を行っている。
近年、北朝鮮による核実験、弾道ミサイル発射問題などは、日本の安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっている。
これらの対策として、本県では、国の「国民の保護に関する基本指針」を受けた国民保護計画の策定や、関係機関による国民保護訓練などを行っている。
そこで、さきの大戦における核爆弾の被害実態や放射線の影響等を、同館を通じて調査することで、適切な住民避難の在り方など本県のより具体的な国民保護対策の参考とするものである。
長崎原爆資料館の前身は、昭和30年に開館した長崎国際文化会館の原爆資料センターで、被爆50周年事業として同会館を取り壊し、被爆の実相と長崎市民の平和への願いを広く発信するため、平成8年に長崎原爆資料館が開館した。
同館では被爆の惨状をはじめ、原爆が投下されるに至った経緯や核兵器開発の歴史などの展示を行うとともに、県外での原爆展開催や資料貸出を行うなど平和推進の取組や平和学習の支援も行っている。
原爆の投下の経緯としては、第二次世界大戦中、アメリカはマンハッタン計画により、核エネルギーを使った原子爆弾を製造した。昭和20年8月6日に広島に原爆を投下。3日後の8月9日午前11時2分に長崎市の上空高度9,600mから原爆を投下し、地上約500mで爆発した。
原爆の被害としては、当時の同市の人口約24万人のうち、73,884人が死亡、74,909人が負傷、総戸数の約36%に当たる18,409戸が損傷するなど甚大なものであった。生存者も時間の経過とともに様々な病気で苦しむこととなった。被害の種類としては、爆風によるものとして、建物の倒壊や吹き飛びにより下敷きとなったり、窓ガラスのかけらが飛び突き刺さったたり、火災が発生し拡大するなどした。熱線によるものとして、爆発時に直径約280mの火の玉が発生し、表面温度は太陽と同じくらいとなり、人々の皮膚が焼けただれ剥離したり、身体が炭のようになるなどした。放射線によるものとして、爆発時のほか、死の灰や黒い雨による目に見えない放射線で様々な病気となった。
救護活動としては、爆発後、市内で最も設備の整った長崎医科大学は、爆心地から約500mで大きな被害を受けていたことから、九州各地から救護隊が集結し、小学校を救護所として治療を行った。また、負傷者を諫早や大村方面に運ぶため、救護列車を走らせるなど献身的な救護活動を行った。
このように、原爆の被害や放射線の影響等は甚大なものであった。
視察中、委員からは活発な質疑が行われた。その中で「なぜ原爆の投下場所は南の長崎中心街ではなく、北の当該地となったのか」との質問に対し、「当日、長崎の上空は雲に覆われていたため、雲の切れ目となった当該地が投下場所になった」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、適切な住民避難の在り方など本県における国民保護計画の策定などに大変参考となるものであった。
(行政庁舎の防災機能について)
長崎県では、平成30年1月に行政庁舎を新設し運用を開始している。この庁舎は、災害対策本部等を集約した危機管理防災センターや屋上ヘリポートの設置、災害時の一時的な避難・医療活動のためのエントランスホールの活用や警察の科学捜査研究所等の機能の充実が図られている。
本県では、平成23年から危機管理防災センターを開設し、災害対策の中核施設としている。
そこで、最新の同庁舎を調査することで、本県の防災機能充実の参考とするものである。
長崎県では、昭和28年に建設した庁舎の老朽化、狭あい化、分散化、耐震性の不足から、「県民とともに新しい時代を切り拓く庁舎づくり」を基本理念に、新庁舎を建設し平成30年1月から運用を開始している。
建物は鉄筋コンクリート造で行政棟(地上8階延床46,718平方メートル)、議会棟(地上5階延床6,699平方メートル)、警察棟(地上8階延床21,726平方メートル)、駐車場棟(地上3階延床11,639平方メートル)から成る。
庁舎の特徴としては、機能的かつ新時代環境共生型をうたっており、執務室は従前と同様の面積とし、来庁者との打合せやエントランスなど必要な機能のみ追加したことや、組織改正や部局間連携に対応できるオープンフロア、ユニバーサルレイアウトプランを採用したことが挙げられる。
また、県民が親しみを感じられる庁舎として、憩いや交流、協働など県民が気軽に利用できるよう食堂や展望エリアを開放したり、県の魅力や情報を発信するため、県政情報、県産品や観光等の情報発信スペースとして活用するなどの工夫が凝らされている。
防災機能の特徴としては、地震や津波に強い庁舎として、「官庁施設の総合耐震計画基準」の最高ランクを満たす安全性能を持つことや、免震構造や締め固め砂杭工法による液状化対策が施されていることが挙げられる。
また、県民生活の安全・安心を支えるため、災害対策本部等を集約化した危機管理防災センターの設置、BCP(業務継続計画)への対応としての72時間の非常用発電の設置や、4日以上の給水の確保、科学捜査研究所等の警察機能の充実、行政棟屋上へのヘリポートの設置による情報収集や救助活動の実施、災害時の一時的な避難・医療活動のためエントランスホールの活用などが行われている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で「新庁舎は海に接しているが、南海トラフ地震の発生時に津波で水没しないのか」との質問に対し、「津波想定は約1mのため、庁舎の床を岸壁より2m程度かさ上げするなどの対策を講じている」との回答があった。また、「長崎には港があるが、災害時に船を活用した物資輸送などを行うのか」との質問に対し、「長崎では離島が多数あり水運が発達しているため、船による物資輸送などは有効と考えている」との回答があった。
その後、危機管理防災センター、屋上ヘリポート、警察の科学捜査研究所等の現地視察を行った。
今回視察先を調査できたことは、本県における防災機能の充実に大変参考となるものであった。
(災害時の関係機関の連携等について)
海上自衛隊佐世保地方総監部は、我が国の西海の守りの第一線を担っている。
主な任務は、担当区域内の警備及び防衛、自衛艦隊等の正面部隊に対する後方支援、機雷や爆発性危険物の除去などである。部隊はミサイル艇隊や掃海隊のほかに必要に応じ護衛艦やヘリを運用して事態対処に当たっている。さらに、熊本地震などの災害派遣では自治体、警察、消防などと連携しながら救出、救助等の対応を行っている。
そこで、海上自衛隊と関係機関との連携や、施設設備を調査することで、首都直下地震などの切迫性が危惧されている本県の防災対策の参考とするものである。
また、併せて本県にも存在する自衛隊基地隣地の警備上の課題も調査することで、本県の危機管理対策の参考とするものである。
海上自衛隊佐世保地方隊は、昭和28年に佐世保地方総監部、佐世保基地警備隊、下関基地隊をもって編成されたのがその始まりである。昭和29年に同警備隊は海上自衛隊として新たに誕生し、この前後に自衛艦隊及び各地方隊が設置された。地方隊の任務は各警備区の防衛、警備と自衛艦隊等の後方支援である。その後、編入・改編・新編等を重ね現在の佐世保地方隊に至っている。
佐世保地方隊の部隊は、佐世保地方総監部(各部隊を統括)下関基地隊(関門海峡、響灘、玄界灘の警備)、沖縄基地隊(沖縄周辺の警備)、佐世保教育隊(年約1,200名の人員を育成)、佐世保警備隊(ミサイル艇2隻を保有)、対馬防備隊(対馬海峡の警備)、佐世保衛生隊、佐世保音楽隊、輸送艇1号、多用途支援艦「あまくさ」などから成る。
近年では、朝鮮関連船舶による違法な洋上での物資の積み替え(いわゆる「瀬取り」)に対する警戒・監視の任務が加わり、関係国とも協力し任務を遂行している。
また、相浦地区に陸上自衛隊水陸機動団が新編され、本格的な水陸両用作戦部隊ができたことを受け、島しょ防衛に関する能力向上のため更に連携を深めている。
平成28年4月の熊本地震などの災害派遣では、自治体、警察、消防などと連携しながら救出、救助、物資輸送等の対応を行った。具体的には、阿蘇山上空などの航空機による空撮、関係機関との連携による救出、救助活動、トラックによる救援物資の輸送、護衛艦「おおすみ」による救援物資の輸送、佐世保市民からの提供物資のヘリによる輸送、被災者への入浴支援、小学校での音楽隊による演奏などの活動である。
今回視察した護衛艦「きりさめ」は、平成11年に就航したヘリコプター搭載護衛艦で、排水量4,400トン、全長151m、全幅17m、高さ47mで、速力30Kt(55km/h)、乗員166名の能力を有している。武装面では、短射程の対空ミサイルや62口径76mm速射砲、高性能20mm機関砲、艦対艦ミサイルなどの近代化された兵器を多数装備している。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で「災害時における海上自衛隊の活動の特徴は何か」との質問に対し、「道路など交通路が寸断された場所や離島などでは艦船やヘリを活用した支援が効果的である」との回答があった。
また、「対馬の自衛隊基地隣地を外国人が所有したことにより、警備上の課題が生じているか」との質問に対し、「特に課題は生じていないが、基地周辺を適切に警備するようにしている」との回答があった。その後、護衛艦「きりさめ」内部の視察を行った。
今回視察先を調査できたことは、本県の危機管理対策に大変参考となるものであった。
海上自衛隊佐世保地方総監部にて
(交通安全対策について)
佐賀県警察本部では、従来の交通事故の発生場所や概要を地図に落とし込むほかに、先進事例として違反取締地点も表示する機能を追加したシステムを運用している。
この機能追加で、事故が多い割に取締りが少ない地域や時間帯を割り出すことにより、人員の効果的な運用が可能となった。
本県は、交通事故と違反取締が別システムのため、それぞれの情報を加工、分析し交通安全対策を講じている。
そこで、同本部のシステムを調査することで、本県の交通安全対策の参考とするものである。
佐賀県における平成29年の交通事故の発生件数は6,765件であり、死者数36人、負傷者数8,932人となっている。交通事故発生件数や負傷者数は平成20年から25年までは増加傾向にあったが、それ以降は減少傾向にある。
近年、全体的に減少傾向であるものの、平成30年の佐賀県警察運営指針及び活動重点では、「交通事故抑止対策の推進」を掲げるなど更なる交通安全対策の強化を進めている。
交通管制センターでは、車両感知器やテレビカメラ、パトカーなどから収集した交通情報を最新のコンピュータで分析・処理し、佐賀市をはじめ鳥栖市、唐津市等の中心部(管制エリア)の各信号機をコントロールすることで、最適な交通の流れを実現している。また、ドライバーには光ビーコンによるリアルタイムAMIS(VICS)情報や交通情報板、ラジオ放送等による交通情報を提供している。
歩車分離式信号については、信号交差点における歩行者事故のうち「歩行者は無違反」のケースが8割に上っていることを踏まえ、信号交差点で交錯する歩行者と自動車の通行を時間的に分離し、横断歩道を横断する歩行者の安全を確保するため、56か所で導入している。
また、先進的な取組としては、従来の交通事故の発生場所や概要を地図に落とし込むほかに、違反取締地点も表示する機能を追加した「交通統合情報管理システム」を平成30年1月から運用しており先進事例となっている。
この機能追加で、事故の発生場所や交通違反の統計データを地図に一体的に表示し、事故が多い割に取締りが少ない地域や時間帯を割り出すことにより、人員の効果的な運用が可能となった。
このほか、夜間における安全な交通環境を確保するための太陽エネルギーを利用した道路標識等の高輝度化や、高齢者や視覚障害者が安心して渡れるためのバリアフリー型対応信号機の導入などの取組を行っている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で「交通統合情報管理システムは職員に有効活用されているのか」との質問に対し、「担当者が各課所を回り操作方法を説明している。また、操作者からの問題点の指摘等を踏まえて随時、システムを改良することで有効活用されている」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県の交通安全対策のため大変参考となるものであった。
佐賀県警察本部にて
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください