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掲載日:2023年5月23日

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警察危機管理防災委員会視察報告

期日

平成27年11月10日(火)~11日(水)

調査先

(1) 警視庁(千代田区)
(2) セコムIS研究所(三鷹市)
(3) 山梨県消防学校(中央市)

調査の概要

(1)警視庁

(テロ対策について)

【調査目的】

警視庁では、東京都など関係行政機関と民間事業者が連携して、テロに対する危機意識の共有や、大規模テロ発生時における協働対処体制の整備、その他高精度でスマートなテロ対策を総合的に構築・推進するため、「テロを許さない社会づくり」をスローガンとして平成20年11月に、「テロ対策東京パートナーシップ推進会議」を発足させた。また、同庁は、警察署単位で「地域版パートナーシップ」を発足させ、テロ等を想定した合同訓練や都民の理解と協力を呼び掛けるためのキャンペーン等の広報活動などを行い、テロ対策に向けた都民の意識の向上を図っている。
本県においては、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会で複数の競技が開催されることになっており、テロ対策は喫緊の課題となっている。同庁の取組を視察することで、本県のテロ対策強化の参考とする。

【調査内容】

東京都は、平成18年にロンドンオリンピック開催予定地であったロンドン市と、政策提携に係る協定書を締結した。これをきっかけとして、警視庁はテロ対策を推進していたロンドン市から防犯カメラの重要性や官民のパートナーシップの必要性を学び、平成20年7月の洞爺湖サミットの際に首都東京において初めて、テロ対策の官民協力組織「サミット警備地域協力会」を作り、さらに、同年11月に「テロ対策東京パートナーシップ推進会議」を発足させた。
同推進会議は、行政機関と地域住民や民間事業者等が連携して、テロの未然防止や大規模テロ発生時における協働対処体制の整備などを総合的に実施することを目的としている。行政機関では、自治体、消防、海上保安庁、検疫所、入国管理局、税関等が、民間では、電気・ガス事業者、公共交通機関、集客施設事業者、警備会社等の53の大きな事業者や事業者団体が参加している。
また、平成21年には、上記の取組を地域の特性に応じた形でより実践的・効果的に推進するため、品川警察署、東京空港警察署、丸の内警察署管内をモデル地区に選定し、「地域版パートナーシップ」を構築し、活動を開始した。その後、平成22年6月には、全102の警察署で発足し、各地域の特性に応じた取組を推進し、参加事業者の数は6,000を超えている。
同パートナーシップの活動内容としては、テロへの危機意識や情報を共有するための研修会、テロの未然防止等のための共同パトロール、都民の理解と協力を呼び掛けるための啓発キャンペーン等の広報、大規模集客施設向けの危機管理対策マニュアルの作成などである。これらの活動の効果としては、官民一体となった横断的・恒常的なネットワークの構築が挙げられる。警察と事業者の間で、対等で相互の顔が見える関係を構築したことで情報交換がしやすくなり、これまで各事業者が個別に行っていた安全対策に、横串を刺してつながりを作ったことにより、総合的な対策を行うことができるようになったという。
施設面での活動としては、非常時への対応のために事業者の協力を得て、「非常時映像伝送システム」や「緊急時直通電話線システム」の設置を進めている。「非常時映像伝送システム」は、非常時に、事業者が設置している防犯カメラの映像を事業者側の判断により、同庁の総合指揮所に送信するものである。同庁は防犯カメラの映像をリアルタイムに見ながら、迅速で的確な指示を出したり、適切な部隊を派遣したりすることができる。現在は、東京メトロと仮の運用を始めた段階であるが、今後はJRや都営地下鉄にも拡大していく予定である。「緊急時直通電話線システム」は、鉄道事業者やライフライン事業者、同庁総合指揮所及び通信指令室の間を通話の集中や停電の影響を受けない専用回線で結び、迅速に情報を共有するものである。これらの取組により、警視庁では「世界一安全な都市東京」を目指している。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「世界一安全な都市を目指すとのことだが、現在の実感としてはどうか」との質問があり、「世界一安全だと思っているが、テロ対策パートナーシップ事業を推進していくことで、より安全な都市にしていきたい」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県において、テロ対策を推進する上で大変参考となるものであった。

警視庁にて

(2)セコムIS研究所

(防犯対策について)

【調査目的】

セコム㈱は、三鷹市に研究開発拠点「IS研究所」を置き、オンライン・セキュリティシステムをはじめとして安心・安全のための様々な研究を行っている。同社では、同研究所の基盤技術の研究成果を基にして、顧客の要望に応じたサービスを提供しており、同社のサービスは高いセキュリティグレードが求められる金融機関などの企業や一般家庭で幅広く利用されている。
本県では、一人暮らしや共働き世帯の増加、近所付き合いの減少、犯罪者の手口の進化などにより、県民の安心・安全の確保が課題となっている。そこで、同社のセキュリティ事業等の運用体制、最新の研究成果に基づく警備システムなどを調査することで、本県の防犯に関する施策の参考とする。

【調査内容】

セコム㈱は、昭和37年に日本初の警備保障会社として誕生した。同社は現在、セキュリティ事業だけではなく、防災事業、メディカル事業、情報通信事業など「安全・安心」を提供するための様々な事業を行っており、これらのサービスを複合的・融合的に提供することで、社会の困りごとを解決し、豊かな社会の実現を目指している。同社の研究開発を担当するセコムIS研究所は、セキュリティから福祉まで、世の中に潜在的に存在する不安要素を把握し、将来必要になると予測したコア技術を先回りして開発している。
同社のセキュリティサービスでは約265万件の契約先があるが、仮に機械を使わずにこれらの契約先で24時間365日の有人警備を行う場合は、1件当たり5人として、約1,300万人の警備員が必要となってしまう。しかし、同社では6,000万個以上のセンサーによる異常監視やオンラインネットワークを活用して、わずか数万人の警備員でサービスを提供している。このように技術の力で人の力を増幅することが重要であるという。
同社では、警備において重要となる早期の異常発見、正確な状況把握、迅速な対処を実現するため、ドローン(無人小型航空機)を使った大規模施設向けの無人警備サービスを開発した。このサービスには、同研究所の画像認識、センシング、位置情報解析、空間情報処理技術などの最新のテクノロジーが活用されている。このサービスは、レーザーセンサーが侵入者を感知すると、ドローンが自動的に侵入者を追い掛け一定の距離を保ちながら撮影を続け、同社のコントロールセンターへ映像を送信する。警備員は緊急発信拠点からすぐに駆け付ける。
また、不審者の侵入を防ぐため、画像認識技術を活用した入退室管理システムも開発中である。このシステムは、事前に顔の画像を登録した人を防犯カメラで認識すると、機械が挨拶し、自動で鍵を開けることができる。非登録者に対しては開錠しないが、もし、登録者に密着して入室してしまった場合には、登録したメールアドレスに通報されるため、対処が可能であるとのことである。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「技術の進歩により新たな犯罪が発生するのではないか」との質問があり、「新しい技術を犯罪に使おうとする者は必ず現れる。それを防ぐための技術を常に開発していく必要がある」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県において、防犯対策を推進する上で大変参考となるものであった。

(3)山梨県消防学校

(消防教育について)

【調査目的】

山梨県消防学校は、平成27年3月に新たな学校施設を整備し、同年4月から使用を開始した。同校では、新施設の整備によって、消防職団員が受講しやすい環境を整えるとともに、迷路訓練室や訓練用エレベーターを有する総合訓練棟など、様々な現場を想定した施設が整備され、消防需要の専門化・高度化に対応できる実践的な訓練が行われている。
本県においても、実践的な訓練による消防職団員の技能向上は、重要な課題であることから、同校を視察することで、本県の消防教育に関する施策の参考とする。

【調査内容】

山梨県消防学校は、昭和40年に甲府市に開校し、昭和50年4月に現在地に移転新築したが、耐震性が低く、老朽化が進んでいた。また、複雑化・多様化する災害対応や高度な救急救命などの教育訓練が難しかったため、県内の各消防本部の本部長を委員とする運営協議会を設置し、平成22年3月に新消防学校の整備方針を決定した。平成25年9月から建築工事を開始し、今年3月に新校舎が完成して4月に開校した。
新消防学校の特徴としては、「訓練は現場のように、現場は訓練のように」をコンセプトに、教育訓練をより実活動に近いものとし、効果的に実施するための各種実技訓練施設・実習施設を設けたことが挙げられる。また、女性消防職団員に配慮して女性専用の宿泊室・浴室等を整備し、環境に配慮した太陽光発電の設置、ばい煙施設の設置、地下水の活用を行っている。
施設については、教育管理棟の救急実習室に、日本で初の遠隔モニタリングシステムが導入された。訓練用の救急車の車内には、マイク、カメラ、スピーカーと通信設備が搭載されており、車内の映像を実習室のモニターに映すことができる。教官は実習室内で、敷地内を走行する救急車内での救急救命処置の様子を見ながら、的確な指示を出すことができ、他の学生も室内でその様子を見て学ぶことができる。また、救急車で処置を行った学生も、後でその映像を確認し、検証することができるため、非常に効果的な訓練となるという。なお、救急実習室には、救急車が入ることができるため、確認・検証を室内で行うことができる。このほか、総合訓練棟には、斜度45度と60度の岩山と法面を模した山岳救助訓練施設、間仕切りを組み替えて習熟度に応じた屋内進入・検索救助訓練が実施できる迷路訓練室等がある。また、雨天時にもロープ渡過訓練、ポンプ車操法訓練、放水訓練ができる屋内訓練場、河川を想定した水流を再現できる25mプールと、湖沼を想定した深さ8mの潜水プールを備えた水難救助訓練施設、倒壊建物からの救出・救護訓練が実施できる震災訓練場、様々なポンプ運用や放水訓練を実施できる放水訓練施設など様々な実活動に近い施設や設備が導入されている。
教育訓練については、国から教育訓練の基準が示されているが、地域の実情に応じた教育もできることとなっている。そこで、消防長等を委員とする消防学校運営協議会において、入校者側の意見も反映し、災害特性に応じた専門的かつ実践的な教育内容を検討し策定している。また、実際の災害現場を想定した訓練が可能な施設や受講しやすい施設資機材を整備し、訓練を撮影して検証するなど、理解かつ修得しやすい教育訓練を実施しているとのことである。
今年度からは、消防団員を対象とした課程への入校促進を図るため、同一課程の複数開催及び単位制の実施に加え、開催時期を変更するとともに全課程の休日開催を実施したところ、入校者が約100人増加した。また、新たに、県民を対象とした自主防災組織等への教育訓練・研修の実施も行っている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「新消防学校の建築費はいくらかかったのか」との質問があり、「用地取得費などを除き、建物と設備で約35億円である」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、今後、本県において、消防職団員への効果的な教育訓練を行うために大変参考となるものであった。

山梨県消防学校にて

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議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4922

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