警察危機管理防災委員会視察報告
調査日
令和6年11月19日(火曜日)
調査先
(1)熊谷防災基地(熊谷市)
(2)埼玉県警察学校(さいたま市)
調査の概要
(1)熊谷防災基地
(防災基地の機能について)
【調査目的】
■本県の課題
- 災害発生時に、関係機関が迅速かつ的確に防災対策を実施するとともに、飲料水、食料、生活必需品及び防災用資機材等の備蓄並びに調達、供給の体制を整備する必要がある。
■視察先の概要と特色
- 同基地は、災害時の総合的な防災活動拠点として、県内に5か所(越谷、新座、秩父、中央、熊谷)整備されている防災基地の一拠点である。
- 同基地は、防災機能として物・人の両面で整備されている。物の拠点としては、災害時の食料、飲料水、生活必需品、防災資機材及び医薬品等の備蓄放出・集積・配送拠点であるとともに、調達物資及び県外からの救援物資の受入れ、一時保管及び配送等の機能を持っている。
- 人の拠点としては、災害時の活動要員の集結拠点、県外からの応援要員の受入れ、一時滞在及び配送等の機能を持っている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 熊谷スポーツ文化公園は、ラグビー場、陸上競技場、くまがやドームなどが園内にあり、平時はスポーツ施設や公園として住民の憩いの場となっている施設である。
- 同基地は熊谷スポーツ文化公園内にあり、平成15年度から供用開始され、設備としては、防災倉庫、耐震性貯水槽、防災用深井戸、臨時ヘリポート、防災行政無線を備えている。
- 県が備蓄する食料や生活必需品は、東京湾北部地震の避難者約54、000人を想定して市町村とともに備蓄をしており、県内5か所の防災基地を中心に分散して保管をしている。熊谷防災基地の防災倉庫では、食料20万食以上、生活必需品、防災用資機材、医薬品を保管している。
- くまがやドームは、発災時には広域物資輸送拠点として、国が被災県へ物資支援を行う際の物資の集積・仕分け場としての役割を持っている。
- 迅速な被災地支援のため、スピーディーな物資の受入体制を構築し、市町村に届ける体制づくりが重要であり、同基地は県北地域の拠点として重要な役割を担っている。
■質疑応答
Q:図上訓練において、能登半島地震で得た物流面の教訓などを、今後どのように取り入れるのか。
A:委託業者と調整中であるが、物流や孤立集落対策等の能登半島地震の教訓を踏まえ、検討していきたい。
Q:5か所の基地を中心に物資を備蓄しているが、各基地の備蓄物資、備蓄量やローリング時期などの管理は、どのようにバランスをとり実施しているのか。
A:基地の広さに応じて、ある程度数量が決まって配分されている。基本的な物資については、均等になるように配置をしているが、例えば、大雪対策の装備品は秩父地域に多く保管されているなど、地域特性に応じて異なる部分もある。
(2)埼玉県警察学校
(警察官の育成について)
【調査目的】
■本県の課題
- 殺傷能力の高い凶器を用いた凶悪事件、手口が悪質・巧妙化するサイバー犯罪、特殊詐欺への対処など、治安課題の複雑化に対処するための人材育成が求められる。
■視察先の概要と特色
- 同校は、警察官としての基礎知識、技術、倫理観を育てるための教育訓練を行う全寮制の施設である。
- 同校では法学、実務、術科等の授業を行っている。実際の職務を想定したロールプレイングや、ゼミ方式のグループ学習など様々なカリキュラムを組み、個人の能力を伸ばし、チームワークや連帯感を育てている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同校の主な施設は、講義や授業を行う本館・第二号館・第三号館・大教場、術科体育教練等を行う体育館・武道場・射撃場・グラウンド・プール、学生の生活の場となる五つの学生寮・厚生館となっている。最も古い建物は昭和41年しゅん工の武道場、最も新しい建物は平成23年しゅん工の本館である。
- 採用時教養の期間と内容は、都道府県警察で差が出ないよう、警察庁がその基準を示している。教養課程には、高校・専門学校を卒業したものが対象の長期過程(21か月)と、大学を卒業したものが対象の短期課程(15か月)の2種類がある。
- 長期課程の場合、10か月間初任科生として警察官としての基礎を身に付け、その後4か月間、職場実習で警察署の交番等で先輩警察官の指導の下、現場で事件事故等の対応を学ぶ。その後、初任補修科生として3か月間同校に入校し、更に専門的な知識や技能を身に付ける。その後、所属する警察署に戻り4か月間の実戦実習で、警察官として独り立ちするための職務執行力を身に付ける。一人前の警察官となるまでに21か月を要する。また、短期課程の場合は15か月を要する。
- 同校では、即戦力となる警察官の育成のために、実際の現場を想定した訓練を取り入れている。例えば、教官が交通違反者となり、交通指導取締りの現場を想定した訓練や、実際に発生した交番襲撃事件を受け、交番での勤務中に不審者が警察官に襲いかかってきた現場を想定した訓練を実施している。
- 警察官を志して警察学校に入校したものの、急激な環境の変化等から思い悩む学生がいることから、離職対策として臨床心理士による相談対応や将来像の明確化の支援も行っている。
■質疑応答
Q:短い期間での厳しい訓練で実際に退職してしまう学生はどれくらいいるのか。
A:退職者は、ここ最近は全体の約1割。傾向としては、ほかの仕事を志望したり、集団生活に馴染めずに退職するケースが多い。
Q:退職が懸念される学生に対して、どのように対応しているのか。
A:日頃の生活から様子の変化に気づくほかに、学生から報告を受けることもある。担任教官だけでなく、ほかの授業の教官も含めて学生の様子をよく見て、悩みなど早い段階で察知できるように努力している。

埼玉県警察学校にて