警察危機管理防災委員会視察報告
調査日
令和6年9月6日(金曜日)
調査先
(1)千葉県消防学校(千葉県市原市)
(2)市原青年矯正センター(千葉県市原市)
調査の概要
(1)千葉県消防学校
(消防学校の再整備と教育訓練の更なる充実について)
【調査目的】
■本県の課題
- 埼玉県消防学校は供用開始40年以上経過し、老朽化や設備面で様々な課題がある。女性職員の採用増加により女性寮室を含む寮の不足が見込まれる。
■視察先の概要と特色
- 千葉県消防学校は、既存の消防学校が老朽化したことに伴い、訓練機能の充実、災害対応力の強化などを目的に、平成31年に防災研修センター機能を備えた新施設として整備された。
- 倒壊建物からの救助訓練を行う施設、地下店舗やトンネル等での救助訓練を行う地下街・トンネル訓練施設のほか、傾斜地・マンホール等市街地特有の各種災害を想定した訓練ができる市街地救助訓練塔など、広大な敷地に多様な状況をシミュレーション可能な最新の訓練施設を備えている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 従前の消防学校では、訓練場が砂地であったため、雨天時は地面がぬかるんでしまい訓練が実施できないことも多々あった。整備後の消防学校は、訓練場の地面がコンクリートとなっており、雷雨等の荒天でない限り訓練が可能となった。
- 宿泊棟は240人が収容可能で、1人ずつパーテーションで区切られた個別空間を持つ6人部屋になっている。また、男女で出入口を分け、宿泊棟内もセキュリティドアで男女のフロアを仕切っており、女性職員へのプライバシーにも配慮した設計となっている。
- 4階建ての防災備蓄倉庫が併設されており、昇降機やシューターで迅速な物資の搬出・搬入が可能となっている。
- 地域防災力向上のため、県民や行政職員のほか、企業の自衛防災組織や地域の自主防災組織等を対象に、訓練施設を活用した実践的な訓練や講義、図上演習など様々な防災研修を行っている。
■質疑応答
Q:同施設は、訓練施設が充実して、バリエーションに富んだ訓練ができると思う。教育プログラムは従前とどのように変わったのか。
A:新たに消防職員専科教育で警防科(11日間)、特別教育では水難救助科(8日間)・高度救助科(10日間)・気管挿管認定救命士再教育(3日間)・薬剤投与認定救命士再教育(2日間)・一般救命士再教育(8日間)・救急隊長再教育(5日間)課程を加え実施している。さらに企業の自衛防災組織等に対する教育も年間7回実施している。
Q:同施設の課題は何かあるのか。
A:敷地が広くなり訓練施設も充実した一方で、資機材を保管する場所が不足している。
Q:女子学生、女性教官は何名いるのか。
A:女子学生は10月の後期から24名入る予定である。教官については、今年度は2名で、来年度は3名となる予定である。女子学生の採用が増えることへの対応や、半年間宿泊する中で、体調管理など様々な悩みを抱える学生をサポートできる体制とする。
千葉県消防学校にて
(2)市原青年矯正センター
(知的・発達障害等のある受刑者への社会復帰支援と再犯防止について)
【調査目的】
■本県の課題
- 県内の刑法犯認知件数は平成17年以降一貫して減少してきたが、令和4年から2年連続で増加しており、令和5年は、乗り物盗や特殊詐欺を中心に前年比で増加している。検挙人員に占める再犯者の割合(再犯者率)は5割前後となっている。
■視察先の概要と特色
- 市原青年矯正センターは、令和5年に新設され、全国で初めて知的障害・発達障害などがある若年受刑者を収容対象とした少年刑務所である。
- 同施設が収容するのは、入所時おおむね26歳未満で知的障害や発達障害、情緒障害を持ち、又はそれに準ずる者で犯罪傾向の進んでいない男子受刑者である。
- 一般的な刑務所では受刑者が生活する個室は施錠される「閉鎖寮」が多いが、同施設は自由に寮内を行き来できるよう、個室が施錠されていない「半開放寮」を採用している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同施設の特徴の一つは、一人一人の受刑者に対して、複数の視点から障害特性等に配慮したサポートを行う点である。職員には、刑務官のほか教育専門官、福祉専門官、作業専門官、調査専門官、就労支援専門官、医師、看護師がおり、受刑者の特性に応じた指導を中心とした処遇を実施している。また、職員は他の刑事施設と異なり、名札を着用しており、受刑者との1対1の密な関係構築を図っている。
- センターの受刑者が犯罪に至る背景として、日常生活で直面する困難な状況に起因するケースが目立つため、同施設では基本的に午前中刑務作業を行い、午後に教育プログラムを実施してその割合を1対1とし、他施設に比べて教育的処遇を充実させている。
- 刑務所でよくイメージされる、職員の号令は行わず、自室に時計が置かれ、時間管理は受刑者が一人一人行う。また、通常の刑事施設では指定された一部の受刑者が担当している洗濯・掃除・配食についても、同施設では受刑者全員が交代で全てを行う。こうした取組を通じて社会人としての自立的生活能力を養成している。
■質疑応答
Q:受刑者はどのような流れで同施設に収容されるのか。
A:川越少年刑務所の調査センターにおいて、発達障害や知的障害等を有するか、それに準ずる者で、特に手厚い処遇が必要と判断された受刑者が同施設に収容される。
Q:受刑者の各部屋には鍵がないが、受刑者同士の各部屋の行き来は可能なのか。
A:各部屋の行き来は禁止している。施設内には集会等で使う共用スペースがあり、そこで余暇時間に交流できるようにしている。
Q:障害の程度も一人一人異なると思うが、受刑者同士のトラブルはないか。
A:些細な口喧嘩などはあるが、皆実直にカリキュラムに取り組んでおり、大きなトラブルはない。
Q:農作業、ビルハウスクリーニング、パソコン、書道、ビジネスマナーなど多岐にわたる作業や訓練を実施しているが、誰が指導しているのか。
A:職業訓練の内容によっては企業の職員を講師として招くこともあるが、作業や改善指導について、基本的には当センター職員が資格を取得して指導している。