警察危機管理防災委員会視察報告
調査日
令和6年5月29日(水曜日)~30日(木曜日)
調査先
(1)京都府警察本部(京都府京都市)
(2)堺市総合防災センター(大阪府堺市)
(1)京都府警察本部
(警察本部の新庁舎について)
【調査目的】
■本県の課題
- 本県の警察本部は合同庁舎にあり、また複数の庁舎に分散しているため、セキュリティの確保や、機能性・効率性の向上といった課題がある。
■視察先の概要と特色
- 京都府警察本部は令和2年に新庁舎に移転した地上6階、地下2階建ての独立庁舎である。
- 新庁舎は、災害対策拠点となる警察本部として、大規模な地震に対しても主要機能が確保できるように免震構造を採用した。
- 旧庁舎にはなかったセキュリティシステムゲートを導入することによりセキュリティ機能を強化し、また深いひさしと腰壁により、防犯性確保と地上からの視線制御を両立した建物構造となっている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 新庁舎建設前の警察本部は旧本館、旧別館、110番指令センターの3庁舎に分散していた。旧本館は、昭和2年建設の建物(建替え当時は日本最古の警察本部)で耐震性能が低く、また別館についても耐震性能が著しく低い状況にあり、地震発生時の対応に大きな懸念があった。
- 新庁舎は、平成26年から設計期間約3年、平成29年から工事期間約3年を経て、令和2年3月に竣工した。
- 災害対策拠点として業務継続機能を確保できるよう免震構造を採用し、貯水設備・井戸、3日間連続運転できる非常用発電機等を設けている。
- セキュリティ強化のため、一般来庁者の対応が多い部署を1階に配置し、職員が勤務するエリアにはセキュリティゲートを設置した。
■質疑応答
Q:分散していた機能を集約したことでどんなメリットが得られたのか。
A:組織内の意思決定がより円滑になった。
Q:設計ではどのような部分に時間を要したのか。
A:エレベーターのサイズ、各部署の部屋数・配置等の調整に時間を要した。
Q:110番指令センターの設備のセキュリティはどうなっているか。
A:サイバーテロに備えてネットワークとは独立したスタンドアロン型としている。
(2)堺市総合防災センター
(防災に関する啓発と人材育成について)
【調査目的】
■本県の課題
- 首都直下型地震や豪雨による水害等への備えとして、防災に関する啓発や人材育成の取組が求められる。
■視察先の概要と特色
- 堺市総合防災センターは、令和4年に新設され、堺市消防局が運営する啓発施設と訓練施設が併設されている施設である。
- 同センターは、消防職・団員の教育・訓練のみならず、地域の連携強化・地域防災を担う人材の育成、大規模災害時における全国からの応援部隊の集結場所や備蓄支援物資の集積配送拠点など、自助、共助、公助の連携による地域防災力の向上を図り、災害に強い都市の形成を推進している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- センター敷地内には、防災啓発施設、水難救助訓練棟、総合訓練棟、救助訓練棟、災害活動支援棟、屋外訓練場がある。
- 「地域の連携強化・地域防災を担う人材育成」「消防・防災力の強化」「円滑な受援体制の確立」を事業方針としている。
- 防災啓発施設では、地震体験や消火体験など、来館者のニーズに合わせた体験コースを用意している。また2か月に1度ファミリー層向けに、楽しく学べるイベントも開催している。
- 令和6年4月に地域防災の人材育成を推進する「地域担当」を同センター内に新設した。今後管轄地域の9消防署にも配置していく予定である。地域担当の業務は、地域防災力向上に向けて、技術的支援・コミュニティや関係機関との連携・教育の三つの取組を柱としている。
- これまで来館者の中心は、小学生や親子連れであったが、今後は自治会、中学生以上、管内の事業所などに狙いを広げて来館を促進していく。そのために積極的に地域に出向いてアプローチを実施するのが「地域担当」の役目である。
■質疑応答
Q:人事異動で、今まで築いた地域との関係性が崩れてしまうのではないか。
A:先行している他都市からは引継ぎの重要性を教わった。引継ぎをしっかり行い対応していく。
Q:地域担当はどのようにして地域にアプローチするのか。
A:いきなり消防局員が行っても不信感を抱かれる。区役所職員と一緒に様々なコミュニティに積極的に顔を出して関係性を築いていく。
Q:消防団員を増やす取組はどのようにしているのか。
A:堺市の消防団は定員50人であり現在充足しているため、特段の取組は行っていないが、災害時の地域活動の一端を担っていただく消防協力事業所の募集やOB職員による災害活動支援隊の創設により有事に備えている。また、そういった背景からも地域担当を創設し、各地域における防災力の底上げも同時に行っていく。
堺市総合防災センターにて