ページ番号:248993
掲載日:2024年2月13日
ここから本文です。
令和5年11月20日(月曜日)~22日(水曜日)
(1)株式会社ミマモルメ・伊丹市役所(兵庫県伊丹市)
(2)兵庫県警察本部(兵庫県神戸市)
(3)人と防災未来センター(兵庫県神戸市)
(4)京都市消防活動総合センター(京都府京都市)
(ICTを用いた子どもの安全対策及び犯罪被害防止について)
株式会社ミマモルメは、ICタグを所持する児童等の居場所がアプリやメールで自動通知されるシステムを構築し、親と子供をつなぐ、ICTを活用した子供の見守りサービス「ミマモルメ」を提供している。
兵庫県伊丹市では、平成28年に市の安全・安心見守りカメラの整備に合わせて、ミマモルメを整備しており、市内全域で活用されている。
子供に対する声掛け事案、児童ポルノ等少年の福祉を害する福祉犯罪は依然として高い水準にあり、子供を犯罪から守る対策の推進は急務であるため、その参考とする。
大阪府大阪市に所在する同社は、平成23年阪神電気鉄道株式会社の新規事業として創業、平成29年に分社・設立された。当初は、ICタグを携帯した子供が小学校校門を通過したことを保護者に知らせるサービス「登下校ミマモルメ」を展開していたが、街中に設置されたカメラとICタグを受信するインフラ網に加え、ボランティアアプリを利用した地域の人々の協力網により、安全・安心なまちづくりをサポートするサービス「まちなかミマモルメ」に発展させている。ミマモルメは、子供の安全を守るサービスとして、全国の公立小学校を中心に約1,900校で利用されており、登下校の安全対策の一つとして自治体一括導入や、学童施設での活用も進んできている。特徴としては、従来、子供がカード等をタッチする必要があったものをICタグを活用することでハンズフリーを実現、タッチ忘れによる保護者の不安の解消、子供の手間を軽減した。また、「登下校ミマモルメ」では、必要な機器の設置を同社が手配・費用を負担することで、公立学校でも導入を容易にしているほか、利用を希望する保護者と直接契約する仕組みにより、問合せ等の保護者対応を同社が行うことで、学校現場の負担が増えないように努めている。さらに、同サービスのアプリ等で欠席や遅刻の連絡も可能とするなど学校の業務軽減にも貢献している。
ほかにも、交通系ICカードを使って、改札を通過した際に通知が保護者に届くという鉄道関連会社ならではのサービスやGPSサービスなど、顧客ニーズに合わせて選択できる多様な見守りサービスを提供している。
また、同社のサービスを導入している兵庫県伊丹市から、導入の経緯や使用状況などの説明を受けた。同市は、全国各地で起こっている子供が被害者になる犯罪の発生を受け、平成28年に市の安全・安心見守りカメラの整備に合わせてミマモルメを整備し、「まちなかミマモルメ」を官民協働事業として導入した。この事業では、子供だけではなく認知症の高齢者や障害者なども対象としている。ICタグは小さく、電池寿命も長いため、お守り袋や財布、かばんに入れるなど、日常から身に付けることができ、保護者が気付かないうちに家を出て所在不明となった場合にも、市内に設置されている防犯カメラ1,200台と合わせて設置されたICタグ受信機により、早期発見につながっている。また、ミマモルメ移動受信機アプリを市営バスや公用車に装着するなど、検知空白地域の解消を目指した取組を行っている。同市では、導入以降、街頭犯罪認知件数が減少傾向にあるとのことであった。
概要説明後、委員からは活発な質問が行われた。依然として子供が巻き込まれる事件や事故が無くならない中で、今後も活用が広がると推測されるICTを活用した見守りは、本県における犯罪被害防止のため大変参考となるものであった。
(雑踏における警備について)
兵庫県警察は、平成13年7月に明石市民夏まつり花火大会において大規模な雑踏事故が発生したことにより、その反省教訓を生かし、雑踏警備に取り組んでいる。
雑踏事故がいまだ全国で起きている中、今年5月に新型コロナウイルスが感染症5類に移行したことを受け、人出の増加やインバウンドの旅行客の急増が見込まれ、観光地やイベント等での混雑により、雑踏事故の危険が増すものと予測される。過去の経験から知見を深める兵庫県警本部の雑踏警備を視察し、今後の参考とする。
兵庫県で、平成13年7月に明石市民夏まつり花火大会において死者11名、負傷者247名が生じた大規模雑踏事故が起こったことは、いまだ記憶に新しい。これは花火大会に向かう観衆と帰宅しようとする観衆が歩道橋上で複雑にぶつかり合い、観衆が重なり合って転倒するいわゆる「群衆雪崩」により起きたものである。歩道橋は花火大会の大多数の群衆が安全に利用できるようになっておらず、構造に問題があったとの専門家の指摘もあった。また、過去に同地で実施された大規模なイベントで問題視された点などの教訓が生かされておらず警備計画が不十分であり、歩道橋への流入を分断するなど適切な誘導もなされず現場の警備体制も万全ではなかったとのことであった。
同県警察では、事故を受け、全国を視察し、平成14年に雑踏警備の手引きを作成した。これは全国の警察本部の雑踏警備の参考とされており、現在はホームページからもダウンロードが可能である。昨年、韓国梨泰院で起きた雑踏事故後には、1月あたり170件程度だったダウンロード数が令和4年10月だけで43,000件となったとのことである。
警察にはイベントを中止する権限はなく、開催については専ら主催者に委ねられることから、主催者は参加者の安全を確保し開催する責任があるが、主催者、警備会社、警察が一体となって雑踏を生じさせる原因を排除していくことが重要とのことであった。同県警察では、平成15年から、危機管理分野や群衆心理、建築工学などの専門家に雑踏警備アドバイザーを委嘱しており、主催者へのイベント内容に関する指導助言についてアドバイスを貰い知識を補完する先進的な取組を行っている。これにより、野球などの試合の際はヒーローインタビューなどを行うことで観客の帰宅時間を分散させたり、橋などに目隠しを施して人の滞留を防ぐなど効果的な対策がなされるようになった。また、コロナ禍前に行われていた花火大会については、令和4年の再開の際には花火の規模を小さくし観覧場所を減らす一方、開催日は週末1日から平日5日間とするなど、一時的に沢山の人が集まるなどのボトルネックに重点的に対応した。早い時間の開催にしたことにより、近隣の店舗に寄って帰る人も多く、駅等の混雑も緩和された。雑踏対策を行う上で、主催者に丁寧な説明を尽くし、協力を得て対策を実施していくことが大切とのことであった。
概要説明後、委員から活発な質問が行われた。「SNS等の普及により様々な情報が拡散されるようになり、思わぬ雑踏の発生も起きるようになったと思うが、どのように対策しているのか」との質問に対し、「現在は、ネットのリアルタイム混雑状況を確認したり、検索エンジンでキーワードを拾って対策している」との回答があった。
本県においては、過去に大規模な雑踏事故はないが、今後、観光地やイベント等での混雑が予想されることから、過去の経験により知見を深める同県警察の雑踏警備の取組は、大変参考となるものであった。
兵庫県警察本部にて
(災害対応の啓発と防災学習について)
人と防災未来センターは、阪神・淡路大震災の経験と教訓を継承し、防災・減災社会の実現に貢献するための必要な情報を発信する施設である。
令和3年に展示を一部リニューアルし、風水害などの自然災害に備える力を付ける体験学習ゾーンが新設された。毎年約50万人の子供から大人までが、地元兵庫県をはじめ、日本全国にとどまらず海外から来館し、阪神・淡路大震災や防災・減災に関する取組について学んでいる。
首都直下地震や、豪雨による水害等に備える中で、災害から身を守る知恵や行動の一層の普及・啓発が喫緊の課題であり、その参考とする。
平成7年1月17日、午前5時46分に、兵庫県淡路島北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生した。大都市を直撃し6,400人を超える人命が失われ、多くの人が怪我を負った。また、高速道路の倒壊をはじめとするインフラへの打撃、老朽化した木造住宅の倒壊など甚大な被害をもたらした。
この大震災の教訓をふまえた災害に対する備え、初動体制、災害に強いまちづくりなど、大震災の経験・教訓から学んだことを語り継ぐことが防災対策として重要である。そこで、経験と教訓を継承し、防災・減災社会の実現に貢献するための必要な情報を発信する施設として、平成14年に人と防災未来センターは開館した。兵庫県が設置し、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構が運営を行っている。
知識伝承のため、特に子供たちに科学的な情報を発信し、防災の重要性やいのちの尊さ、震災経験や教訓を伝えるため分かりやすい展示を行うほか、年月の経過、被災者の減少などにより記憶を風化させることなく被災者の思いと教訓を次世代へと継承するために、大震災や防災に関する資料の継続的な収集・保存なども行っている。また、人材育成にも力を入れており、震災の経験と学術的な知見などから国の防災的な課題を捉え、実践的な防災研究の実施や、若手防災専門家の育成、自治体災害対策の中核を担う人材の育成も行っている。さらには、防災等に関する行政実務者や研究者、市民、企業などの多様なネットワークの形成や、国内外の連携にも取り組み、社会における防災力向上に努めている。大規模災害時には知識を有する人材の派遣や、情報提供、助言を行うなど被災地の被害軽減や復旧・復興にも貢献するなど、センターに留まらず、外部にも活動の幅を広げている。このように、同センターは展示等の防災学習機能をはじめ、六つの機能を有して広く活動を行っているとのことであった。
概要説明後、センター内の視察を行った。VRを用いて地震などを体験する「ハザードVRポート」では、360度広がるVR映像と音声で大災害を実際に体験したような臨場感で、災害に対する危機感をより一層高めることにつながった。ほかに、クイズや津波を発生させる装置など、地震、水害など様々な災害に関して楽しみながら体験する中で、学び考えることにつなげており、子供から大人まで幅広く災害について学習することのできる施設であると体感した。
センター内には、自らの被災体験を語る語り部や、展示の解説、説明を行うボランティアが多数活動しており、ボランティアは震災を体験した世代の方や震災後に生まれた大学生等もおり、多くの方に支えられて運営しているとのことであった。
今回の視察において、新たな技術を用いた防災学習機能を備え、多くの方が来館する施設の魅力と、防災学習以外にも人材育成やネットワーク形成など、多様な取組について学ぶことができ、本県における防災学習、災害対策に大変参考となるものであった。
人と防災未来センターにて
(防災拠点施設の整備について)
京都市消防活動総合センターは、消防活動に必要な諸機能を統合、合理化して、平常時、大規模災害時に対応した消防活動拠点として整備され、「消防学校」「訓練施設」「活動支援施設」を備える。
本県の消防学校の老朽化等、多発する自然災害、南海トラフ地震等への備えとして、防災活動拠点整備が課題であるため、その参考とする。
同センターは、消防活動に必要な諸機能を統合、合理化し、あらゆる災害に迅速に対応できる消防活動体制を構築するための施設として整備され、平成21年4月に全面運用を開始した。平常時、大規模災害時、双方に対応した消防活動拠点であり、「消防学校」「訓練施設」「活動支援施設」を備える。
「消防学校」は、新規採用職員の教育や消防団員の研修を行い、救急救命士や救急救命士資格取得教育のための救急教育訓練センターの機能も併せ持つ教育、訓練施設であるが、大規模災害時には「緊急消防援助隊の活動支援を行う場」となる。視聴覚室を「作戦情報室」として活用し、消防局の消防指令センターからリアルタイムで収集した災害情報などを基に効果的で効率的な部隊運用を行う。なお、平成29年4月から京都府立消防学校を施設内に移転し市と府による共同教育を開始しており、令和5年度は市38名、府45名が初任教育を修めたとのことである。
「訓練施設」は全国消防救助技術大会の仕様に適合させ、かつ初任教育にも活用できるものとなっている。水上、山岳、震災など多種多様な建物構造・条件下での消防救助訓練を行う訓練場をはじめ、平成27年には水没車両からの救助訓練や消防団等を対象とした歩行体験や水防訓練を行うことのできる水災害対応訓練施設を整備するなど充実した訓練施設を有している。災害時は、「緊急消防援助隊集結場所」として機能し、屋内訓練棟は物資荷さばき場となるなど緊急消防援助隊の効率的な運用を行う場となる。京町家などの京都市特有の町並みを再現した街区訓練場の建物は全て可動式としたことで、レイアウトが変更でき、より実践的な訓練を積むことができるほか、緊急消防援助隊受入時の集結スペースの確保も可能としているとのことである。
また、統括指揮隊(南部方面)、本部救助隊及び特別装備隊の活動拠点や車両整備等を行っている「活動支援施設」は、災害時は緊急消防援助隊の車両や資器材のメンテナンスを行い、長期活動に備える「後方拠点」として活用される。同センターは、交通アクセスに恵まれた地域に位置し、大災害時の緊急消防援助隊の集結場所として派遣部隊を収容し、燃料補給等の後方支援機能により長期にわたる災害活動対応を可能としている。東日本大震災でも、四国・九州ブロックの緊急消防援助隊が被災地へ赴く中継地として、拠点地の役割を果たしたとのことである。
概要説明後、センターの見学を行った。委員からは活発な質問が行われ、「消防学校の府と市の共同教育については、費用負担はどうなるか。また府と市の者を同時に教育することになるが教育に問題は生じないのか」との質問に対し、「京都府からの負担金を受けている。教育については、京都市とその他の本部では消防操法が異なるなど違いはあるが、府と市の教官が連携を図り一定化した基礎となる教育を行っている」との回答があった。
大規模な災害に備えるに当たり、防災拠点の整備や在り方、その運用について、本県の消防施策において参考となるものであった。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください