文教委員会視察報告
調査日
令和6年8月29日(木曜日)
調査先
(1)埼玉県立飯能高等学校(飯能市)
(2)十文字学園女子大学(新座市)
調査の概要
(1)埼玉県立飯能高等学校
(魅力ある県立高校づくりについて)
【調査目的】
■本県の課題
- 少子高齢化や生産年齢人口の減少などにより、社会や経済における活力の低下が懸念される中で、県立学校にはそれぞれの学校が活性化・特色化を図り、将来をたくましく生き抜く力を持った生徒を育成することが求められている。
■視察先の概要と特色
- 単位制を導入し、生徒の興味・関心、能力・適性、進路希望に応じた多様な選択科目を設置している。
- 先行き不透明な時代を力強く生きるために必要な課題解決能力を養成する「総合的な探究の時間」をはじめ、地域の実態等に応じた特色ある教育課程の編成に資する学校設定科目である「地域創造学」など主体的・対話的で深い学びを実践している。
- 「ICT室」、「ALC(アクティブラーニング室)」、「ラーニングコモンズ(自習室)」が新設され、幅広い教育活動を支える施設が充実している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 進学を重視した単位制を採用しており、週31単位の授業構成で、2年次から多様な選択科目を用意し、生徒は進路希望に応じた科目選択を行うことができる。また、難関大学進学を目指し、一般選抜で合格できる力を育成するための特進クラスの設置や生徒・保護者への進路情報のきめ細やかな提供等を実施している。
- 地元の市役所、商工会議所や企業等に支援されながら探究活動を実施しており、地域や社会に目を向けることで生徒の視野が広がるきっかけとなっている。活動を通じて身に付けた表現力は大学受験や就職支援の面接等でも生かされている。
- ラーニングコモンズは、あえてカフェのようなしつらえとしており、非日常空間による生徒の居場所としての機能も兼ねている。また、県の学習サポーター制度を活用し、大学生が自習室に常駐して学習支援等を行っており、生徒から好評である。
■質疑応答
Q:総合的な探究の時間について、全生徒が対象なのか。また、グループ活動が前提なのか。
A:全ての学年で実施しており、特進クラスでも他のクラス同様実施している。グループ活動は全体の一部である。活動全体の流れとして、まず、地域・社会の様々な課題をどのように捉えるかという個々の活動があり、その後、自分の考えを表現・発表し、意見を交わすグループ活動をしている。そしてグループでまとめた内容を全体で発表するサイクルである。その中で、生徒の自己表現力を育むためにグループ活動を重視している。
Q:入試について、統廃合により、二つの高校が一つになった場合、単純に考えると倍率は上がるのではないかと考えるが、実際の数字を見るとそうなっていない。この現状についてどのような分析をされているのか。
A:新しい飯能高校が掲げる進学を重視するという方針に対して、飯能高校が変わってしまうのではないかと不安をもった中学生やその保護者に説明が足りなかったり、部活動を頑張りたいと考えている中学生が敬遠してしまったのではないかと分析している。今後の入試の状況を分析して対応を考えていきたい。
埼玉県立飯能高等学校にて
(2)十文字学園女子大学
(不登校児童生徒への支援について)
【調査目的】
■本県の課題
- 本県の不登校児童生徒の約4割が学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない状況であり、不登校児童生徒の教育機会の確保や相談体制の整備など、支援の充実を図る必要がある。
■視察先の概要と特色
- 学校に行きづらさを感じている児童生徒のため新座市教育支援ルーム「とことこぷらすのへや」を令和5年9月より大学内に開設し、毎週金曜日に児童生徒の学習や体験活動の居場所づくりを行うとともに、関わる大学生の実践的な学びの場ともしている。
- 大学という開放的な環境を生かし、大学生ボランティア等と一緒に、児童生徒の「自分らしさ」を大事に個に応じた支援を重点的に行っている。学習や体験活動を通して、一人一人が学びや人との交流の楽しさを感じながら、安心できる居場所を作っている。
- 新座市教育委員会との連携により、市教育支援センターとしても位置付けられており、新座市在住の児童生徒は学校への出席扱いとなる。また、保護者や兄弟姉妹も一緒に参加することができる。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 施設の特徴として、大学の中にあるため防犯上、安心・安全であり、空いている教室やグラウンドなどを自由に使用でき、学内に駐車場・駐輪場があるため送迎も可能である。また、スタッフとして養護教諭資格を取っている学生が多く参加している。
- 活動の時間割は設けているが、だいたいの目安であり、全員に一斉の指示は出しておらず、スタッフである学生が一人一人に声掛けをしながら柔軟に対応している。
- 認知トレーニングであるコグトレを導入し、認知機能強化及び認知作業のトレーニングで、不器用さの改善や基礎学力の土台作りを行っている。
- 事業効果として、母子分離が難しかった児童が親が離れても大丈夫になったり、泣いてもすぐ立ち直るといったレジリエンスが向上するなどの変化が見られている。一方で、スタッフとして活動する学生の居場所としての意義もあり、専門的な学びにおける実習としての位置付けにもなっている。
■質疑応答
Q:コグトレが活動の本質だと感じたが、プログラムの肝と考えてよいか。
A:発達に課題がある児童生徒には、単に居場所を作って遊んだりするのではなく、得意なことは伸ばしつつ、課題がある部分が少しでも環境に適用できるような工夫をするために、認知トレーニングであるコグトレは有効と考えている。よって活動の中心となっている。体の使い方が不器用な子は、コグトレで体を使う練習にもなる。
Q:子供たち自身は実際どう感じて来ているのか。不登校解消を期待しているのか。
A:子供たちは学校に行けることがゴールではないと考えているので、そのような認識はしていない。来ることについて強制はしておらず、時間についても指定していないため、強制されたり習い事のような感じではなく、子供たちの様子や保護者からのフィードバックからも来たいから来ていると分析している。