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掲載日:2024年2月13日
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令和5年11月20日(月曜日)~22日(水曜日)
(1)慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)
(2)山形県立東桜学館中学校・高等学校(山形県東根市)
(3)震災遺構仙台市立荒浜小学校(宮城県仙台市)
(4)ろりぽっぷ小学校(宮城県仙台市)
(科学技術への若い世代の関心を高める取組について)
慶應義塾大学先端生命科学研究所は、最先端のバイオテクノロジーを用いて生体や微生物の細胞活動を網羅的に計測・分析し、コンピュータで解析・シミュレーションして、医療や食品などの分野への応用を研究しているバイオ研究所である。
同研究所では生命科学を学ぶ全国の高校生が参加するバイオサミットの開催や、地元高校生の研究助手や特別研究生としての受入れなどを通じ、若い世代の科学の学びを支援している。
本県では、AI・IoTやビッグデータなど新たな技術を活用する超スマート社会を生き抜くため、基礎的・基本的な知識や技能とともに、論理的・科学的に考える力を有する人材の育成が必要であり、同研究所の科学技術への若い世代の関心を高める取組を調査し、本県の今後の施策推進の参考とする。
慶應義塾大学先端生命科学研究所は、最先端のバイオサイエンスを核とした未来創造田園都市「鶴岡サイエンスパーク」内に位置し、同研究所からはこれまでに8社のバイオベンチャー企業が生まれている。
同研究所は、最先端の研究とともに、次世代の人材育成にも力を注いでおり、バイオの面白さを若い時にこそ体験してほしいという思いから、高校生を対象とした取組を行っている。同研究所と山形県、鶴岡市で作る実行委員会が主催する「高校生バイオサミットin鶴岡」では、全国の高校生が、研究者の前で生命科学に関する研究の成果を発表、未来のバイオサイエンスのあるべき姿を議論し、最初は120人程度の規模だったが、300人程度の規模(2019年度)にまで拡大しているとのことであった。また、山形県立鶴岡中央高等学校の生徒を「研究助手」として任用したり、「将来、博士号をとって世界的な研究者になりたい」という大きな夢を持った高校生・高専生を「特別研究生」として受け入れ、研究活動を全面的に支援しており、これらの制度の経験者が、博士号を取得した後に鶴岡市に戻り、研究所や研究所発ベンチャーの研究職に就くという事例も出てきているとのことであった。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「バイオサミットは今後その参加対象をアジアなど海外に広げていく予定はあるか」との質問に対し、「すぐに海外に拡大することは想定していないが、海外の高校に通う日本人高校生が参加するケースは出てきている。今は、日本のバイオサインス業界を底上げするためにも、将来のバイオサイエンスを担う人達が若い時期に友人関係を築いておくことが重要で、日本の中のネットワークを作ることが大事と考えている」との回答があった。その後、詳細な説明を受けながら施設を視察した。その中で研究助手や特別研究生出身の研究員の紹介があり、生き生きと研究活動に取り組んでいる様子も伺うことができた。
今回、同研究所の取組や施設を視察できたことは、今後、本県の科学技術への若い世代の関心を高める取組を推進していく上で、大変参考となるものであった。
慶應義塾大学先端生命科学研究所にて
(中高一貫校の特色ある教育について)
山形県立東桜学館中学校・高等学校は、6年間の継続した教育活動を通し、山形県の中等教育におけるパイロット的な役割を担う学校を目指し、同県初の併設型中高一貫教育校として平成28年4月に開校した。
同校では、系統的なキャリア教育の実践や教科の枠を超えた探究活動の実践など、特色ある取組を行っており、開校6年目となった令和3年度以降は、東京大学等の難関大学合格をはじめとして、国公立大学の合格者数は、過去最高を更新している。
本県では、県立高校の志願倍率が低下傾向にあるため、県立学校のより一層の特色化を図った魅力ある学校づくりが課題であり、同校の取組状況を調査し、本県の今後の施策推進の参考とする。
山形県立東桜学館中学校・高等学校では、6年間の発達段階を養成期(中1・中2)、伸長期(中3・高1・高2)、発展期(高3)と捉え、6年間を見通した計画的・系統的な教育課程を編成しており、中学校の数学、外国語等において高校で学習する内容を盛り込んだ学習を展開するなどしている。
同校は、これからの時代を主体的に生きる力を身に付けるため、「高い志」「創造的知性」「豊かな人間性」を基本理念とし、「マイコンパス」「未来創造プロジェクト」といった特色ある取組を行っている。「マイコンパス」では、中高6年間の発達段階に応じた系統的なキャリア教育を実践し、世代間交流による豊かな人間性の育成や、第一線で活躍する講師の講演による進路選択力の育成、研究機関訪問等による視野の拡大を通して、高い志を育てている。また、「未来創造プロジェクト」では、全員が課題研究に取り組んでおり、課題を自ら設定し、主体的・協働的に課題解決に取り組みながら、これからの時代に求められる思考力・判断力・表現力を育成している。
さらに、スーパーサイエンスハイスクール指定校として、例えば、保健と家庭科を融合した独自の科目「SS健康科学」を設け、少子高齢化などの地域課題を掘り下げる授業を実践するなど、教科・科目横断型の融合教科により、創造性の基礎を培う探究的な科学教育も行っている。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で「中高一貫教育の実施形態は地域により合う、合わないがあるとのことだが、具体的にはどうか」との質問に対し、「山形県では生徒数で判断している。例えば、中等教育学校は中学の段階で多くの生徒が入学することになり、各地域の中学校の生徒数がそれほど多くない山形県では、市町村立中学校への影響が大きいことから、当校は併設型を採用した。また、人口が少なく都市部の高等学校への通学の便が悪い地域で、地元で中高一貫教育の指導が十分できるような体制をとりたい地域は連携型が適していると考えている」との回答があった。その後、詳細な説明を受けながら校内を視察した。
今回、同校の取組や施設を視察できたことは、今後、本県の中高一貫校の特色ある教育を推進していく上で、大変参考となるものであった。
(防災教育に関する取組について)
震災遺構仙台市立荒浜小学校は、防災・減災の意識を高めることを目的に、平成23年3月11日の東日本大震災で被災した仙台市立荒浜小学校の校舎を震災遺構として保存・整備した施設である。津波の威力や脅威を実感できるよう被災の痕跡を鮮明に残す校舎を公開するとともに、被災直後の様子を示す画像や映像等の展示を行っており、小中学校における防災教育の見学先として多くの学校団体に活用されている。
近年、想定を超える豪雨や台風などの発生から、児童生徒の水害への防災意識の向上や危険を予測し回避する能力の育成につながる防災教育の充実が課題であり、同施設の取組を調査し、本県の今後の施策推進の参考とする。
仙台市立荒浜小学校は、海岸から約700メートルと海に近く、東日本大震災当時は91人の児童が通っていた。また、同校のあった荒浜地区は、約800世帯、約2,200人が暮らす、海側としては大きな集落があった。東日本大震災時、同校には2階まで津波が押し寄せたが、同校に避難した児童や教職員、住民ら320人は全員助かった。この理由として、「津波の避難訓練をしていた学校で、地震後に屋上に避難させたこと」「住民と共に避難訓練していたため、連絡せずとも住民が避難してきたこと」「周りに高い場所がないため、別の場所に2次避難させなかったこと」が挙げられるとのことだった。
震災遺構仙台市立荒浜小学校として保存・整備された後は、小中学校における防災教育の見学先として多くの学校団体に活用されている。同施設を活用した授業づくりのための手引書も作成され、児童生徒が自分自身は何ができるかを考えさせることができる内容を掲載している。手引書は、英語などにも翻訳され、防災観光を目的とした外国人観光客にも活用されている。実際、全国や海外から多くの方が来館し、令和5年8月には来館者数が50万人に到達したとのことであった。
概要説明を受けた後、詳細な説明を受けながら施設内を視察した。4階の展示室では、震災未経験世代が増えてきたことを踏まえ、子供たちが震災について学びやすいようアニメーションを中心とした防災教育コーナーが令和5年1月に新設され、子供たちが自ら調べられる工夫がなされていた。1、2階や校舎外周は、その被害状況や被災直後の様子を伝える写真などから津波の脅威を実感するとともに、「停電で全ての通信手段を失った時の訓練も必要」との言葉は大変印象的であった。
その後、委員から活発な質問が行われた。その中で「震災時の停電を教訓に、どのような停電対策をしているのか」との質問に対し、「仙台市では、震災後、避難所として指定された学校の屋上に太陽光パネルを設置することとし、併せてバッテリー型蓄電池も設置している。蓄電池は津波による被害の影響により、震災後から発火し火災が発生した事例を教訓として、有事の際にも機能する場所に設置することで、避難所の停電対策を改善しているところである」との回答があった。
今回、同施設を視察できたことは、今後、本県の防災教育に関する取組を推進していく上で、大変参考となるものであった。
(不登校児童への支援について)
ろりぽっぷ小学校は、閉校した市立小学校の校舎を学校法人ろりぽっぷ学園が仙台市から借り受け、令和5年4月に開校した、学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)である。同学園の「大人も子どもも育ちあう」「子どもの心に寄り添う保育」の考え方とオランダで取り組まれている「イエナプラン」のコンセプトを融合させた教育課程の実施など、特色ある取組を行っている。
本県では、増加傾向にある不登校児童生徒の教育機会を確保するために、児童生徒個々の状況に応じた多様な選択肢を確保することが課題であり、同校の取組状況を調査し、本県の今後の施策推進の参考とする。
ろりぽっぷ小学校は、学校法人ろりぽっぷ学園が運営する、仙台市内初、私学としては東北初の学びの多様化学校である。同学園は、認定こども園や小規模保育園、学童保育を運営しており、学校を作る方針は当初なかったが、不登校になっている卒園児の保護者からの声をきっかけに宮城県内でも全国同様に不登校児童が増えている現状も鑑み、同校の開校に至ったとのことであった。
同学園では、「大人がどういう子どもに育てたいか」ではなく、「子どもたち一人一人がどんなことに関心を持っているのか」という子どもの心に寄り添う保育・教育を大切に、長年子供と関わってきた。同校では、学びの選択肢の一つとして、こうした学園の方針とオランダで取り組まれている「イエナプラン」のコンセプトを融合させた教育課程を実施している。その特徴として、学年の枠を超えた異年齢グループの学びや児童自身による個別の学習計画の作成などにより、一人一人の進度に合わせた学習を行う時間を充実させ個別最適化した学びを提供している。また、対話の時間を大事にしており、道徳と特別活動の内容を掛け合わせた「人間・キャリア科」を新設し、心理教育やカウンセリングスキルを活用して、人間関係づくりを学ぶ授業を展開している。その他、職員の地元採用枠を設け、こうした方が地域との懸け橋となり、例えば田畑を借りて農作業体験をする機会を設けるなど、地域と共に学校運営に取り組んでいるとのことであった。
概要説明を受けた後、詳細な説明を受けながら校内を視察した。廊下と境のない教室、太陽の光が差し込む吹き抜けのホール、広々した体育館など、解放的な構造が特徴的で、生き生きと目を輝かせ授業を受ける児童の様子が印象的であった。
その後、委員から活発な質問が行われた。その中で「保護者に対しては、授業に混ざってもらうこと以外で特別な対応はしているのか」との質問に対し、「保護者がいつでも来て過ごすことができる保護者ルームを設けている。Wi-Fiを整備しているため、リモートワークも可能で、子供と一緒に登校・下校することもできる。また、有志の『親の会』とは、月に1度、イベントも混ぜながら保護者と教員が情報共有する場を設けている」との回答があった。
今回、同校の取組や施設を視察できたことは、今後、本県の不登校児童の支援を推進していく上で、大変参考となるものであった。
ろりぽっぷ小学校にて
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