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掲載日:2019年11月26日
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令和元年9月3日(火曜日)~5日(木曜日)
(1) 京都府立八幡支援学校(八幡市)
(2) 大阪市立水都国際中学校・高等学校(大阪市)
(3) 大阪府立箕面東高等学校(箕面市)
(4) 京都国際マンガミュージアム(京都市)
(障害者教育の取組について)
京都府は平成22年に、全国で初めて、高等学校と同一敷地内における特別支援学校(知的・肢体、小中高等部)となる府立八幡支援学校を設置した。両校の間では、「互いを理解して共感を広げる」という理念の下、様々な交流が行われており、スクールパートナーとして活発に交流及び共同学習が実施されている。一方で、こうした交流等は一時的な取組となってしまい、教育活動とつながりにくいといった課題があったが、こうした交流及び共同学習を教育課程上の様々な教育活動に位置付けることで解決を図っている。
本県では、令和3年度に戸田翔陽高校敷地内に知的障害の生徒を対象とした特別支援学校の開校が予定されており、同校の取組、課題等を伺い、現地を視察することにより、本県の教育施策の参考とする。
京都府立八幡支援学校は、これまで、障害種別に応じて既設の3校に通学していた八幡市、久御山町在住の障害のある児童生徒が、より身近な地域で学ぶことが可能な地域の学校として、平成22年4月に開校した。同校の基本構想は「全国で初めて同一敷地内に高等学校と特別支援学校(知・肢、小・中・高等部)を設置することにより、障害のある児童生徒と高等学校の生徒が日常的な交流を通して、自立し社会参加する力、豊かな福祉マインドを育成する」ことである。
京都府立京都八幡高校南キャンパスと京都府立八幡支援学校が同一敷地内に設置され、両校が相互にスクールパートナーとして活発に交流及び共同学習を行っている。両校は渡り廊下でつながっているほか、両校の校舎の間には、児童・生徒が日常的に交流を行うための「交流広場」等も設置されている。
交流活動は、「授業交流」、「昼休み交流」、「行事交流」の3つが行われており、特に「昼休み交流」では、京都八幡高校の生徒が八幡支援学校の教室や食堂で一緒に昼食を食べ、食後には共に遊ぶなど自発的な交流を展開している。
当初は、高等学校の生徒が支援学校の生徒に物事を教えるといった一方通行の交流をイメージしていたが、支援学校の生徒から高等学校の生徒に対し作業指導をする姿も見られるなど、障害のある生徒とない生徒が活動を共にする機会を積極的に設けることによって、双方向でノーマライゼーションの考え方と実践を学ぶことができる教育環境となっていることが印象的であった。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「同校は3校が統合して設立されたとの経緯があるが、子供にとって環境の変化は敏感であると聞いている。そうしたことを和らげるために留意したことはあるか。」との質問に対し、「新しい学校に入れるようになったのは直前の2月で学校見学の時間が取れなかった。そこで、1学期の間は一切行事をせず、生徒に環境になれてもらうことに集中した。それでも、何か月も教室に入れない子や不安で暴れる生徒もいた」との回答があった。
今回、視察先を調査できたことは、令和3年度に戸田翔陽高校敷地内に知的障害の生徒を対象とした特別支援学校の開校を予定している本県にとって、大変参考となるものであった。
京都府立八幡支援学校にて
(国際バカロレア認定校の取組について)
大阪市は、世界に通用するグローバル人材の育成のため、平成31年4月に全国初の公設民営の中高一貫校となる市立水都国際中学校・高等学校を開設した。「国際バカロレア」の手法を取り入れた教育実践を行い、国際理解教育と外国語教育に重点を置きつつ、地球的な視野に立ち、地域社会と国際社会の平和と発展に貢献する人を育成することを目標としている。
本県では、「グローバル人材の育成」と「外国語教育の充実」の二本柱により、グローバル教育を推進しているが、国際バカロレア認定校の設置については、教員の専門性確保やカリキュラムの編成などの諸課題により進展していない。そこで、公設民営により国際バカロレア手法を取り入れる同校の取組、課題を伺い、現地を視察することにより、本県施策の参考とする。
大阪市立水都国際中学校・高等学校は、平成31年4月に大阪南港ポートタウンに開校した中高一貫教育校である。設置者は大阪市、運営は大阪YMCAで、国家戦略特別区域法における学校教育法の特例を活用した、公立学校の運営を民間法人等に委託する公設民営の手法を取っている。公立学校としての教育水準及び公共性を保ちながら、民間の知見を活用した学校運営(民間法人の柔軟な人事管理制度、多様な人材の招へい、民間法人の海外ネットワークの活用)を行い、英語教育、国際理解教育、課題探求型授業の3つの教育の柱を掲げ、21世紀型のスキルを身に付けることを目的としている。
中学校では、数学、理科などの科目において英語による授業を行うなど、校内では常に英語が飛び交う環境であるほか、語学研修生や海外から学生、インターンを交えた国際交流活動等を行っている。高校では、海外研修、グローバルユースカンファレンス(世界各国からのユース世代を対象とした様々な社会問題における英語でのディスカッション)等、多彩な国際交流プログラムが組まれているなど、世界で活躍するグローバル人材の育成に向けた様々な取組を展開している。
また、同校は、平成30年9月に国際バカロレアの公式候補校となり、令和2年に高校2、3年生を対象とした国際バカロレアデュアルランゲージ・ディプロマプログラム(DLDP)を導入予定である。このプログラムは授業料のみで受講が可能であり、費用面での保護者の負担を軽減できることから、子供たちの進路の選択肢が広がることが期待されているとのことであった。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「国際バカロレア教育の費用は高いイメージがあるが、その負担はどのような仕組みになっているのか」との質問に対し、「試験受験料は各生徒負担ではあるが、授業料は公立高校と同様である。大阪の課題として経済格差、教育格差があるが、どのような家庭であっても公平に教育が受けることができる。なお、大阪YMCAは大阪市から管理代行料を受けて運営をしている」との回答があった。
今回、視察先を調査できたことは、更なる本県のグローバル教育の推進に向けて、大変参考となるものであった。
大阪市立水都国際中学校・高等学校にて
(エンパワメントスクール(やり直しのきく高校教育)の取組について)
大阪府は、高校中退率が全国でワースト1位であり、小学校レベルの学習からの学び直しを行うカリキュラムを組むなど、「学び直し」の教育を進めている。具体的には、集中力が続くよう1時限30分制、英国数の3教科における習熟度別授業、朝学習など、生徒の特性に合わせた授業を行っている。府立箕面東高等学校は、このような「学び直し」の学育を実践する学校であり、大阪府教育委員会からエンパワメントスクールの指定を受けている。
学校教育の在り方にも多様性が出てきた昨今、本県においても、生徒の実情に合わせた多様な取組が求められている。そこで、義務教育課程でつまずいてしまった子供たちにとって、やり直しの大きなチャンスを与える同校の取組、課題を伺い、現地を視察することにより、本県施策の参考とする。
大阪府立箕面東高等学校は、昭和49年に府立で91番目の学校として箕面市の南東にある粟生に開設された。開設当初は大阪第一学区の全日制普通科高校であったが、平成17年から府内全域より生徒受入れを行う定時制の多部制による単位制普通科高校(クリエイティブスクール)となった。平成27年には、子どもたちの教育的ニーズが多様化してきたことを背景に、大阪府教育委員会からエンパワメントスクールの指定を受け現在に至っている。
同府の高校中退率は全国でワースト1位であり、高校を卒業できないために進路の可能性が狭まってしまう子供たちを減らすためエンパワメントスクールの取組が始められた。生徒の「分かる喜び」や「学ぶ意欲」を引き出し、しっかりとした学力と社会で活躍できる力を身に付けるための新しいタイプの学校で、現在、府内8校がエンパワメントスクールとなっている。
エンパワメントスクールでは、基本的に、小学校レベルの学習から学び直しを行うカリキュラムを実施している。集中力が続くよう、授業は1時限30分、英国数の主要3教科は15人程度の習熟度別授業、その他タブレットや電子黒板を活用した映像授業を取り入れるなど、効率的に学習ができる体制を整えている。このほか、グループ学習や参加型体験学習で、忍耐力や互いを思いやる気持ちなど人間関係力を育成している。最終的には、卒業までに社会人として必要な「基礎学力」「考える力」「生き抜く力」を全て生徒に身に付させることを目標としているとのことであった。
また、箕面東高校では、週1回の事業所実習やマナー講座など、「箕面東版デュアルシステム」を活用した行き届いたキャリア教育や、大学生や社会人など、経験豊かな講師から深く学ぶ「学外連携による多様な学び」などの特色ある取組を実施している。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「生徒のレベルも進路先もばらばらでは指導が大変ではないか」との質問に対し、「エンパワメントスクールは中学校のときに力を発揮できなかった子が芽を出せるような目的でできた学校である。そのため、英国数の授業を習熟度別に3段階に分けていることに加え、また、生徒一人一人に目が届くように少人数制となっている。そのため、きめ細やかにその生徒に合った進路を見つけ出していくことができる体制となっている」との回答があった。
今回、視察先を調査できたことは、学校教育の在り方にも多様性が出てきた昨今、本県においても、生徒の実情に合わせた多様な取組を進めるに当たり、大変参考となるものであった。
(特色ある社会教育施設(博物館)の運営について)
京都国際マンガミュージアムは、国内外のマンガに関する貴重な資料を集め、明治時代の雑誌、戦後の貸本などの貴重な歴史資料、現代の人気作品、世界各国の名作など約30万点を所蔵している。また、創成期の作品や紙芝居実演、歴史や作家の思想に迫るなど「文化としてのマンガ」展示であり、マンガを媒介して日本の歴史文化の認知を広げていることが大きな特徴となっている。
本県では、県民が身近に文化芸術を親しむことができるよう地域の文化芸術拠点としての活動を充実させていくこと、文化振興を国内外に発信していくことなどが課題となっている中、マンガを切り口とした地域活性化や国内外への文化の発信を積極的に行う同施設を視察することにより、本県の文化的施設の運営の参考とする。
京都国際マンガミュージアムは国内外のマンガに関する貴重な資料を集める日本初の総合的な漫画ミュージアムとして平成18年に開館した。博物館的機能と図書館的機能を併せ持った、新しい文化施設であり、保存されるマンガ資料は、江戸期の戯画浮世絵から明治・大正昭和初期の雑誌、戦後の貸本から現在の人気作品、海外のものまで、平成28年時点で約30万点となっている。建物は、昭和初期建造の元・龍池小学校校舎を活用し、当時の佇まいを残したもので、長年地域のシンボルであった小学校の役割を引き継ぐという表明でもある。運営は、京都市と京都精華大学の共同事業で、マンガ資料の収集・保管・公開とマンガ文化に関する調査研究、これらの資料と調査研究に基づく展示やイベント等の事業を行うことなどを目的としている。その成果を地域社会の文化活動に対しても還元・貢献できる形態は先進事例として他地域からも注目されている。施設は一般公開のギャラリーゾーン、研究ゾーン、資料収蔵ゾーン、地域利便施設で構成されており、常設展示、企画展示のほか、龍池歴史記念室、ミュージアムショップ、カフェが併設されている。マンガミュージアムが所蔵するマンガ資料のうち、1970年代以降に発行されたマンガ単行本を中心とする約5万冊が、館内の壁中に広がる総延長200メートルの書架「マンガの壁」に配架されているとのことであった。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「海外向けのPRはどのように行っているのか」との質問に対し、「昨年は7万人を超える海外からのお客様が来館したが、中国とフランスの方が多い。前者は、観光目的で来られる方がメインとなっているが、後者は、日本でいうマンガというジャンルが文化的に確立されていることから、学術的な面で興味を持たれて来館される方がメインとなっている。当館は国際マンガ研究センターのネットワークを通じた、研究者同士のつながりの中で徐々に認知されてきており、そこから更に口コミで広がり、来館者が増えているというのが現状である。このほか、近隣のホテルにチラシを置かせてもらい海外からのお客様に対してPRを行っている」との回答があった。
今回、視察先を調査できたことは、マンガを切り口とした地域活性化や国内外への文化の発信について、大変参考となるものであった。
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