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掲載日:2023年5月23日
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平成28年11月7日(月)~8日(火)
(1) 県央浄化センター(栃木県上三川町)
(2) 常陸河川国道事務所(水戸市)
(3) 圏央道開通予定区間(境古河IC~坂東IC)(坂東市)
(下水道の整備及び管理について)
下水処理場は、処理過程で発生する消化ガスなど多くの再生可能エネルギー資源を有しており、本県でもその有効活用が注目されている。
栃木県では、平成27年2月、県央浄化センターに消化ガスを利用する発電設備を整備した。発電した電力は、同種の事業としては全国で初めて「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を利用し、電気事業者へ売電している。現在は、同センターを含む県内4つの浄化センターで発電しており、計画発電量は、年間約680万kw(一般家庭1,900世帯分)となっている。
また、平成26年度から、同センターを含む3浄化センターで、下水処理場内の建物屋上等の未利用空間を太陽光パネルの設置スペースとして民間事業者に貸し出しており、施設の維持管理費の削減を図っている。
持続的発展が可能な循環型社会の形成にも寄与する同県の取組を調査し、今後の下水道事業の参考とする。
栃木県では、これまで大部分を燃焼処理していた消化ガスを有効利用するため、消化ガス発生量が最も多い県央浄化センターに最初に発電設備を導入しようと、平成24年度に設計に着手した。平成25年度から工事を実施し、平成27年1月にしゅん工、同年2月1日から売電を開始している。
同センターでは、燃料電池での化学変化によって発電する方式を採用しており、年間約130万㎥発生する消化ガスから、約250万kwを発電している。これは、一般家庭の約700世帯分の年間電力使用量に相当する。売電に当たっては、平成25年3月、電気事業者による再生可能エネルギーに関する特別措置法に基づく発電設備として、下水汚泥を利用した発電では全国で初めて「再生エネルギーの固定価格買取制度」の認定を受けている。この制度は、再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、一定期間・一定価格で電気事業者(電力会社)が買い取ることを義務付けた制度である。同センターにおける平成27年度の売電益は約1億900万円とのことであった。また、同センターでは、発電機からの排熱を温水回収する「コージェネレーションシステム」を構築し、汚泥消火タンクを加温することで、消化ガスの発生を促す取組も行っている。
同センターの太陽光発電については、計画年間発電量が約158万kwであり、事業者からの使用料収入額は年間で約210万円とのことであった。消化ガス発電による売電収入と屋根貸しによる使用料収入を組み合わせることで、より安定した収入が得られる仕組みとなっている。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「同センターの消化ガス発電設備の整備費及び維持管理費はどのくらいか。また、整備費の償還期間はどのくらいを考えているのか」との質疑に対し、「整備費は、設計費約2,000万円と工事費4億2,000万円の計約4億4,000万円である。発電設備の維持管理費は、変動はあるが、年間約5,200万円である。売電額を年間1億円と見込んでおり、施設全体の維持管理費の削減額が年間約4,800万円となることから、10年以内に償還できるのではないかと考えている」との回答があった。
質問終了後は、消化ガス発電設備や太陽光パネルが設置された水処理施設を視察した。
このように、同センターを調査できたことは、効率的な下水道の整備、管理を推進している本県にとって大変参考になるものであった。
県央浄化センターにて
(災害時における道路ネットワークの確保について)
平成27年9月の関東・東北豪雨では、鬼怒川流域で観測史上最多雨量を記録し、茨城県常総市において鬼怒川堤防の決壊を引き起こした。同市内では、広範囲にわたり浸水被害が発生し、道路上に動かなくなったと思われる車両が放置されていた。
これらの放置車両は、緊急車両をはじめ、災害復旧に必要な車両の通行の妨げとなっていたことから、常陸河川国道事務所では、同市と茨城県から要請を受け、災害対策基本法に基づく放置車両の移動(道路啓開)を行った。
放置車両対策が強化された平成26年の同法改正以降、全国で初めて水害による道路啓開を行った同事務所の取組を調査し、今後の災害時における道路啓開実施の参考とする。
大規模災害時の放置車両対策については、平成26年11月21日に公布・施行された災害対策基本法の一部を改正する法律により強化された。改正の背景には、道路法に基づく放置車両対策では非常時の対応としては制約があり、緊急時の災害応急措置として、災害対策基本法に明確に位置付ける必要があったことがある。同法の改正により、緊急車両の通行を確保する緊急の必要がある場合、道路管理者は、区間を指定して、車両の運転者等に対して移動を命令したり、運転者不在時には、道路管理者自ら車両を移動したりできるようになった。また、やむを得ない場合は、他人の土地の一時使用や竹木その他の障害物の処分が可能となった。
同法の改正以降、全国で初めて水害による道路啓開を常陸河川国道事務所が実施した。実施に至る経過は、平成27年9月10日午後0時50分の鬼怒川左岸決壊後、同12日に茨城県、常総市が管理する常総市内全域の全ての道路について、同法に基づく指定が行われた。同日、同市が国へ支援要請を行い、同事務所において、放置車両の現地調査を開始した。14日には同県からも協力要請があり、13日から20日にかけて計21台の放置車両を移動している。
車両移動は班体制で実施し、1班当たり職員2名、維持作業員2~3名、レッカー1台で対応に当たっている。移動前には、損傷状況を記録するため車両の写真撮影を行い、車道移動の記録票を車両及び現地に掲示した。車両は一時保管場所とした常総市の土地に移動し、その際、移送運転手から保管場所職員へ移送票を手渡している。車両1台当たりの処理時間は約1時間で、対応した延べ人員は、職員25名、維持作業員26名、機械ではバックホー(ショベル系掘削機)・ユニック(クレーン付トラック)10台、レッカー10台とのことであった。
一時保管後は、同事務所から茨城県公安委員会へ移動車両の情報提供を行い、引渡しは車両所有者と確認書を取り交わした上で行っている。現場での一連の手続には、同事務所で独自に作成したマニュアルや様式を使用したとのことであった。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「一時保管した車両について所有者へ引き渡すなどの処理にどのくらい時間がかかったのか」との質問に対し、「避難している人も多く、避難所に自動車のナンバー等を張り出して周知した。しかし、最後の数台でなかなか所有者と連絡がつかず、2~3か月かかった」との回答があった。
このように、同事務所の道路啓開の取組を調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
(道路事業の推進について)
圏央道(首都圏中央連絡自動車道)は、都心から約40~60kmの位置を環状に結ぶ延長約300kmの高規格幹線道路(高速道路)である。
茨城県区間(境古河IC~つくば中央IC)については、平成28年度中の開通予定で工事が進められており、視察する境古河IC~坂東IC間は、国土交通省関東地方整備局北首都国道事務所及び東日本高速道路株式会社関東支社さいたま工事事務所が担当している。
同区間の開通により、埼玉県や北関東・東北方面と成田空港を結ぶ新たな広域ルートが形成され、首都圏の道路交通の円滑化や環境改善、沿線都市間の連絡強化、地域づくり支援、災害時の代替道路としての機能など様々な効果が期待されている。
同事業を調査し、今後の道路事業推進の参考とする。
圏央道は、横浜、厚木、八王子、つくば、成田、木更津などと本県の都市を連絡し、東京湾アクアライン、東京外郭環状道路などと一体となって首都圏の広域的な幹線道路網を形成する首都圏3環状道路の一番外側に位置している。
茨城県内の圏央道は約70.5kmで、県南西部に位置している。このうち、常磐道(つくば市)~千葉県境(河内町)間の約29.3kmは平成6年4月に、埼玉県境(五霞町)~常磐道間の約41.2kmは平成7年3月にそれぞれ都市計画が決定し、平成12年2月から本格的な工事に着手した。茨城県内では、直近で平成27年3月に埼玉県境~境古河IC間が開通し、現在、残る境古河IC~つくば中央IC間の約29.1kmにおいて、平成28年度中の開通を目指して工事が進められている。
視察した境古河IC~坂東IC間は道路延長約9.2kmで、設計速度が時速100km、標準幅員が10.5mの暫定2車線で計画されている。同区間は、土工部が約97%で橋りょう部が約3%とのことである。工事は国土交通省と東日本高速道路株式会社の共同事業方式で進められている。道路工事本体は基本的に国土交通省が担当し、東日本高速道路株式会社は舗装・施設工事を担当することとなっており、現在、舗装工事が行われている。舗装面積は、約118,000㎡で、舗装工事の進捗率は平成28年10月末現在、56.9%である。今後、舗装に加え、ガードレールやポストコーン、看板等の設置を行うとのことであった。
担当者からの説明では、既に開通した区間の影響により、圏央道沿線では、都心を通らずに広域移動ができる交通利便性の高さから、物流拠点や工場等の立地が進んでいるほか、朝夕の交通量の減少により、路線バスの遅れ時間が最大6割短縮し、定時性が向上するなど様々な効果が出てきているとのことであった。また、茨城県区間が開通すると成田国際空港から栃木・足利方面へのアクセスが向上し、行動圏が大きく広がることや、災害などで運行不能な区間が生じても、代替ルートが確保されるといった効果も期待されている。
概要説明後、現場の視察を行い、委員から施工内容や構造等について活発な質問が行われた。
このように、圏央道開通予定区間(境古河IC~坂東IC)を調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
圏央道開通予定区間にて
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