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掲載日:2023年5月23日
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平成28年8月1日(月)~3日(水)
(1) 道後温泉本館周辺地区(松山市)
(2) 一般国道196号 今治道路(今治市)
(3) 尾道市役所[政策企画課、まちづくり推進課](尾道市)
(4) 広島市大州雨水貯留池(広島市)
(都市計画行政の推進について)
道後温泉本館周辺地区は、松山市の中心部から北東約2kmに位置する都市型観光地である。日本最古の温泉地区で、国の重要文化財となっている道後温泉本館のほか、多くの歴史的資産等が点在している。
同地区では、松山市、愛媛県と、旅館や商店主などで組織する「道後温泉誇れるまちづくり推進協議会」が一体となって、歴史漂う景観まちづくりを推進している。
これまでに、松山市の補助によるファサード(建物正面の外観)の整備や、県道と市道の付け替えによる歩行者専用道及び広場の整備等を実施してきた。また、平成22年には、松山市が、同地区を景観法に基づく景観計画区域に設定し、建物の色彩等の誘導に努めている。
同地区の取組を調査し、今後の都市計画施策推進の参考とする。
道後温泉本館周辺地区は、平成6年に公衆浴場として初めて国の重要文化財の指定を受けた道後温泉本館を中心に、道後ハイカラ通り商店街や国指定の重要文化財である伊佐爾波神社、俳句や短歌等で有名な正岡子規を顕彰する子規記念博物館など多様な観光スポットが点在している。
同地区では、これまで地域として一体化した景観まちづくりが行われなかったことへの反省を踏まえ、平成4年に発足した「道後温泉誇れるまちづくり協議会」を中心に結束し、松山市、愛媛県と官民協働で景観まちづくりの取組が行われている。
主な取組として(1)本館周辺の道路景観・歩行者空間整備、(2)ファサード整備、(3)歴史的景観整備・景観保全がある。
本館周辺の道路景観・歩行者空間整備では、本館の西側正面口の車道(県道)において車の往来が激しく危険なうえ、景観を阻害していたことから、車道を東側(市道)に振り替えて西側正面口を歩行者専用道に整備した。これにより、安心・安全を感じる景観広場が確保されている。また、周辺道路では、石畳の舗装を施した歩道整備や電線類の地中化整備等が行われている。
ファサード整備では、平成18年から3年間にわたり、市の補助によって、道路に面した建物の壁や看板などの整備を対象にした「道後温泉周辺ファサード整備事業」を実施した。多くは、屋外広告物の縮小化やデザインの是正、外壁面の塗替え、意匠変更であったが、中には、企業の大切なPR手段である広告塔を撤去したパチンコ店、銀行などもあったという。これは、市の補助に加えて、同協議会による自己負担分への支援金制度や地元金融機関の低利融資等の支援があったことや、市、同協議会による各戸への熱心な説得等によって、地域の理解と協力が得られたことで実現したとのことであった。
歴史的景観整備・景観保全では、松山市が平成22年3月に「松山市景観計画」を策定し、同地区を先導的なモデル地区として建物の色彩等の誘導に努めている。同協議会においても、独自のガイドラインが策定され景観まちづくりが進められている。
概要説明後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「地域の事業者が一体となってまちづくりに取り組むには様々な苦労があったと思うが、どのように進めたのか」との質問に対し、「平成13年に足湯が完成し、坊っちゃん列車の運行も開始した。これが一つの成功事例となって、地域で徹底的な議論ができるようになった。行政との理解も深まったことで、景観整備が進んでいったのだと思う」との回答があった。
質問終了後は、同地区の商店街や道後温泉本館等を視察した。
このように、同地区を視察できたことは、景観まちづくりを進める本県にとって大変に参考になるものであった。
道後温泉本館周辺地区にて
(道路事業の推進について)
一般国道196号今治道路は、西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)及び四国縦貫自動車道(松山自動車道等)を結ぶ延長10.3kmの高規格幹線道路(高速道路)であり、現在、国により整備が進められている。
今治道路の整備により、瀬戸内しまなみ海道ルートにおいても、本州と四国が高速道路でつながることとなり、災害時における信頼性の高い輸送道路の確保や並行する国道等の渋滞緩和のほか、企業立地や観光交流の促進など地域の活性化の効果も期待されている。
同事業を調査し、本県において事業中の地域高規格道路(新大宮上尾道路や西関東連絡道路)など、骨格幹線道路網の整備推進の参考とする。
一般国道196号今治道路(今治IC~今治湯ノ浦IC)は、今治小松自動車道の一環として整備が進められている。今治道路は、今治市において、瀬戸内しまなみ海道と接続し、西条市において、今治小松道路を介して、松山自動車道と接続する高速交通ネットワークの一端を担う道路である。現在、本州を通る山陽自動車道から今治IC(今治市矢田)間及び今治湯ノ浦IC(今治市長沢)から松山自動車道間が高規格幹線道路で結ばれており、今治道路の早期整備が望まれている。
同事業は、平成3年に都市計画が決定し、平成13年度に事業化、平成15年度に用地買収に着手した。設計速度は、時速100kmで、標準幅員は22mの4車線で計画されている。平成28年3月末現在で、用地の進捗率は約83%、事業の進捗率は約41%となっている。
担当者からの概要説明では、同道路の完成により、(1)災害時に信頼性の高い緊急輸送道路が確保できることで、支援部隊等の被災地へのアクセスが向上し、救命・救助・復旧活動の迅速化に大きく寄与する、(2)交通の分散が図られ、今治IC~今治湯ノ浦IC間の所要時間が約11分短縮するなど渋滞緩和や移動時間の短縮・定時性の確保につながる、(3)本州と四国を結ぶ新たな高速道路ネットワークが形成され、更なる観光エリアや観光交流の拡大が図られる、といった効果が期待されるとのことであった。環境面でも、年間で約592haの森林が1年間に吸収する二酸化炭素の量(約6,278トン)の削減効果があるという。
また、同事業を進める松山河川国道事務所では、工事を身近に感じてもらえるよう、夏休みに地元の小学生を対象に見学会を開催しているほか、建設業の未来を担う学生の職場体験や周辺住民を対象とした現場見学会などを実施している。
概要説明後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「総事業費はどのくらいか」との質問に対し、「約700億円である。現在2車線で暫定整備を進めており、この額は計画している4車線での額である」との回答があった。また、「用地買収が進むよう、どういった努力をしているのか」との質問に対し、「用地担当者が地権者に足しげく通い、事業全体の意義を理解いただけるよう努力している。また、地権者に近い自治体にも同行してもらうなど協力してもらっている」との回答があった。
質問終了後は、建設中の朝倉トンネルと朝倉第2高架橋を視察した。
このように、同事業を調査できたことは、骨格幹線道路網の整備を推進している本県にとって大変参考になるものであった。
一般国道196号 今治道路にて
(住宅行政の推進について)
尾道市を代表する歴史的なまちなみ景観を有する斜面市街地では、近年、少子高齢化や斜面地等の地理的特殊性が要因となって、空き家が発生している。
尾道市では、空き家の荒廃を防ぐため、景観や歴史的風致の維持と併せた対策を推進している。市が策定した「歴史的風致維持向上計画」の重点区域内を対象に、空き家の再生に要する経費の一部を補助している。また、平成21年10月からNPO法人と協働し、市指定区域に建つ空き家の情報提供事業(尾道市空き家バンク)を行うなど、空き家の有効活用を進めている。
同市の取組を調査し、今後の空き家対策推進の参考とする。
広島県東南部に位置する尾道市は、瀬戸内地域の有力な港町として栄え、坂のまち、文学のまちとしても知られている。歴史的建造物や寺社が点在し、独特の景観を有する斜面市街地は、重要な観光資源となっている。しかし、近年は、少子高齢化やモータリゼーションの進展のほか、車が入れない細い路地や急な坂道等の要因によって、深刻な空き家問題に直面している。
同市では、空き家対策について、その歴史的風致の漂う景観を保全する観点から、安易に壊さずに改修・修繕して再生させ、有効活用する取組を進めている。
平成24年には、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」に基づき、歴史的風致維持向上計画の認定を国から受けた。国の認定を得ることで、法律上の特例措置や各種支援が受けられることから、尾道・向島地区(約200ha)及び瀬戸田地区(約137ha)を同計画の重点区域として各種補助制度を整備している。このうち、「空き家再生促進事業補助金」では、1年以上継続して使用されていない、建築後30年以上の建築物の所有者か賃貸者等が、台所や内装、外装等を改修して居住する場合に、経費の3分の2(最大30万円)を助成している。また、不良度判定基準により認定された老朽危険建物の所有者等が取り壊しを行う場合に、「老朽危険建物除却促進事業補助金」により、経費の3分の2(最大60万円)を助成している。担当者からの説明によると、交付実績は、平成24年度から平成27年度までの4年間で、空き家再生補助が23件、除却補助が28件とのことであった。
また、同市では、平成21年10月からNPO法人尾道空き家再生プロジェクトと協働して、尾道水道を望む市街地における空き家の情報提供事業(尾道市空き家バンク)を行っている。この事業では、同市が、空き家の実態調査、登録業務、仲介・査定の依頼を担い、NPO法人が、ノウハウを生かして空き家の情報提供や活用相談、利用者間の連絡調整を担っている。お互いの不足部分を補完する形で事業を進めており、平成27年度までの7年間の実績は、相談が延べ4,288件、空き家の登録が167件、定住世帯数が75件とのことである。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「空き家バンクのNPO法人への委託費用はいくらか。また、空き家バンクで成果が上がっている理由は何か」との質問に対し、「平成28年度の委託料は190万円弱である。以前から斜面地で空き家の改修等の活動を行っている地域おこしの団体がこの事業のパートナーとなったことが、成果があった要因と考えている」との回答があった。
概要説明の後、実際に空き家が再生され、店舗として活用されている物件を視察した。
このように、同市の空き家対策を調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
(下水道の整備及び管理について)
広島市は、都市機能が集積するJR広島駅周辺地区の浸水被害を防ぎ、雨水を資源として活用するため、広島市民球場の新球場建設に併せて、球場の地下に大容量の雨水貯留池を建設した。
この大州雨水貯留池は平成21年4月から供用を開始し、総貯留量は1万5,000㎥で、このうち1,000㎥の雨水を、消毒等を行った上で、球場の天然芝への散水やトイレ用水、周辺のせせらぎ用水に再利用している。
浸水防止だけでなく、環境に優しい球場づくりにも貢献している同貯留池を調査し、今後の下水道事業の参考とする。
JR広島駅及びその周辺を含む地域(大州排水区)の下水道事業は、集水区域面積約533haの整備をほぼ完了しているが、近年の都市化の進展や局所的な豪雨の発生に伴う雨水流出量の増加などから、浸水氾濫の危険性や被害リスクが増大していた。そこで広島市では、都市域の浸水に対する安全度を向上させるため、浸水対策の整備目標を既存の約2.5倍となる1時間当たり53mm(10年に1度降るような大雨に相当)とし、中心市街地を対象とした大規模な雨水対策施設の整備を順次行っている。
大州雨水貯留池は、広島市が、大州排水区の中でも都市機能が集積するJR広島駅周辺地域(約52ha)を対象に浸水対策事業として整備を行った。同貯留池は、広島東洋カープの本拠地であるMAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島のグラウンド地下約2.5mに設置されている。形状は、直径約100m、高さ5.35mで、15,000㎥(25mプール約40杯分)の雨水を一時的に溜める能力がある。担当者からの説明では、事業費は、用地取得に約6億円、土木工事に約24億円等の計約45億円で、維持管理費は、平成27年度で年間約550万円とのことであった。
同貯留池内には、浸水対策用の7,000㎥の水槽が2槽あり、1時間当たりの雨量が20mmを超えると貯留池に流入するようになっている。また、球場の雨水流出を抑制するために、1,000㎥の水槽が設けられており、球場の屋根及びグラウンドに降った雨を集めている。集めた雨水は、混ざっているごみを取り除いた後、貯留池内に設置された装置でろ過し、塩素消毒を経た後に球場内の様々な場所で再利用している。
球場の天然芝への散水利用では、芝などに吸収されなかった一部の水は、次の散水に使われるとのことであった。また、球場内のトイレ内の壁面には、再生水を使っていることを説明するプレートを張り、せせらぎ水路(名称:雨音の小径)にも同様のパネルを設置して下水道の果たす役割を分かりやすく伝えている。
また、一般の見学者を受け付けており、参加者には、マンホールがデザインされたカードをプレゼントしている。平成21年度から平成27年度までで、127団体、2,573名が見学に訪れたとのことであった。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「貯留池に溜まった水は、どのように排水するのか」との質疑に対し、「晴天時に最寄りの大州ポンプ場経由で県の東部浄化センターへ送水している。浄化センターできれいにして河川へ放流している」との回答があった。
質問終了後は、貯留池内と再生水が使われているせせらぎ水路や球場を視察した。
このように、同貯留池を調査できたことは、下水道を整備、管理している本県にとって大変参考になるものであった。
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