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掲載日:2023年5月23日
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平成27年8月17日(月)~19日(水)
(1) 熊本市役所[都市政策課](熊本市)
(2) 佐賀市下水浄化センター(佐賀市)
(3) 嘉瀬川ダム(佐賀市)
(4) 長崎河川国道事務所(本明川)(諫早市)
(コンパクトなまちづくりへの取組について)
熊本市は、熊本県の西北部に位置する人口約74万人の都市で、平成24年に政令指定都市に移行している。
同市では、人口増加や自家用自動車の普及に伴って、比較的地価が安価な農村部まで市街地が拡大してきた。しかし、今後は大幅な高齢者の増加や生産年齢人口の減少が予想されており、子育て世代が多く住んでいた郊外部では、子供たちが巣立ち、高齢者が増加して自家用車の利用が困難な買い物弱者が生まれるなどの状況が生じている。
同市は、人口減少社会を見据えた「持続可能で創造的な都市」を目指しており実現に向けて、中心市街地や地域拠点へ都市機能を集積し、それらを公共交通で結ぶとともに、公共交通軸沿線に居住を促進するなどのまちづくりを推進している。
同市のコンパクトなまちづくりへの取組を調査し、今後の人口減少社会を見据えた都市計画の参考とする。
熊本市は、周辺町村との合併により市域面積や人口が拡大・増加するとともに、自家用自動車の普及に伴い、昭和51年から平成21年までの間に市街地が約2.4倍に拡大したため、新たな公共投資の必要性や維持管理費の増大が懸念されていた。一方でこれまで着実に増加してきた人口が減少傾向に入り、生産年齢人口の大幅な減少や65歳以上の人口の大幅な増加が予想されていた。さらに、公共交通、特に路線バスの利用者は35年間で3割強まで減少しており、利用者低迷の悪循環によるサービスの低下から高齢者をはじめとする交通弱者の移動の自由の更なる低下が懸念される状況であった。
こうした状況を踏まえ、同市は、平成21年3月に第2次熊本市都市マスタープランを策定し、将来像として多核連携都市を大きく掲げた。多核連携都市とは、中心市街地が地域の大きな核となり、その周辺に人々の暮らしを支える核となる地域拠点を、更にその周辺に地域コミュニティーの核となる生活拠点を配置する3層構造で構成されるものである。中心市街地と地域拠点は利便性の高い公共交通で、地域拠点相互も公共交通や幹線道路で結ばれることで、地域の生活圏が互いに連携する都市構造とするものである。この多核連携都市における中心市街地は、九州中央の交流拠点として、市域、都市圏域、県域全体の社会経済の発展をけん引する役割を担い、地域拠点は、商業、行政サービス、医療、福祉といった地域での暮らしに必要な機能が集積し、生活拠点は、近隣住民が利用する様々な施設が立地するものである。
平成24年3月には第2次熊本市都市マスタープラン地域別構想を策定し、公共交通の利便性が高い地域への居住機能の誘導や中心市街地及び地域拠点へ都市機能を集積し、市民にとって暮らしやすいコンパクトな都市空間を形成することで、持続可能な都市を目指すとしている。
同プランでは、居住促進エリア内の人口密度についての指標を設定しており、平成22年時点で1ha当たり61.8人の人口密度を平成37年においても低下させないという目標であるとのことであった。
概要説明を受けた後、活発な質問が行われた。その中で、委員から「公共交通の空白・不便地域のためのコミュニティ交通は、どのような仕組みであるのか」との質問に対し、「バス停から1km離れた地域を公共交通の空白地域、500mから1kmの間の地域を不便地域としてデマンドタクシーを導入している」との回答があった。また、「地域拠点にパークアンドライドを導入する考えはあるのか」との質問に対し、「地域拠点は広い圏域を担う拠点であるので、パークアンドライド、サイクルアンドライド、送迎で公共交通機関を利用していただくキスアンドライドなど交通の拠点としても整備する必要があると考えている」との回答があった。
このように、同市のコンパクトなまちづくりへの取組を調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
(下水道資源の有効活用について)
佐賀市は、内閣府など関係7府省が共同で推進している「バイオマス産業都市」に認定され、市民の暮らしから発生するごみ・排水を活用したまちづくりなどを目指している。
佐賀市下水浄化センターでは、下水道資源(下水処理水や汚泥)を「海苔養殖・農業利用に適した処理水の有効利用」や「下水汚泥を活用した肥料の製造」などにおいて農業や漁業に活用しており、その取組は、国土交通省などが推進しているプロジェクト「ビストロ下水道」において事例紹介されている。
また、汚泥処理過程で生じる消化ガスを燃料としたガス発電設備を備えており、施設で必要な電力の43%を発電している。
同施設の下水道資源の有効活用の状況を調査し、今後導入を予定している下水汚泥を利用したバイオマス発電などの参考とする。
佐賀市下水浄化センターにて
佐賀市は、平成14年に特例市に移行し、人口は約23万5千人で平成17年及び平成19年の2度にわたる市町村合併を経て現在の区域となっている。
同市の下水処理は、4つの方法により処理されており、山間農村地域は農業集落排水事業、下水道管から離れた地域では市営浄化槽、町村部において小さな集落が点在している地域では特定環境保全公共下水道、残る人口の約78%を公共下水道で処理している。
公共下水道の汚水を処理する佐賀市下水浄化センターは、敷地面積約9万㎡、計画処理人口は18万6千人、供用開始は昭和53年11月で約38年が経過している。
同市は、「バイオマス産業都市さが」をスローガンとして掲げ、生活排水の活用をはじめとする様々な取組を進めており、同センターにおいては、下水の処理過程で発生する汚泥、消化ガス、処理水といった下水道資源の有効活用を進めている。下水処理過程において発生する下水道資源は1日に処理水5万㎥、脱水汚泥平均22.4トン、消化ガスは5万7千㎥が排出されている。
下水道資源を有効活用している取組として、まず処理水については、肥料の三大要素となる窒素やリンを含んでおり、薄液肥として田畑に散布する農業利用のほか、処理水を放流することで有明海における海苔養殖の栄養塩として漁業にも利用している。10月から3月の海苔養殖期の期間では運転を簡素化した硝化抑制運転を行い、窒素やリンの含有量を多くして有明海へ栄養源を供給している。反対に夏場は通常運転を行い、窒素やリンの含有量を低下させる運転を行っている。このような季別運転を行っている処理場は、全国で13か所あるという。
汚泥については、メタン反応により発生するメタンガスを取り出した後、施設内の汚泥堆肥化施設に運び、YM菌により高温発酵させた汚泥発酵肥料として販売している。同肥料は、農作物がよく育つことから「宝の肥料」と言われ、高く評価されているとのことであった。
こうした農業や漁業への取組によって品質の高い海苔やアスパラが生産されるようになり、国土交通省などが推進しているプロジェクト「ビストロ下水道」の事例として紹介されている。
なお、発生したメタンガスは、発電設備の燃料として利用され、生み出された電気は、同浄化センターの43%の電力を賄っているとのことであった。
概要説明を受けた後、同センター内の汚泥堆肥化施設などを視察し、その中で活発な質疑が行われた。
このように、同センターの下水道資源の有効活用の状況を調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
(環境に配慮したダムについて)
嘉瀬川ダムは、平成24年に完成した重力式コンクリートダムで、嘉瀬川流域の洪水被害の軽減、県都佐賀市都市圏への安定的な水源確保や水力発電の役割を担っている。
ダムの建設や管理に当たっては、「嘉瀬川ダム事業における環境保全への取り組み」をまとめ、建設事業における動物、植物、生態系の保存や河川・水辺の多様な環境の維持保全に取り組むなど環境に配慮している。
同施設の取組を調査し、ダム事業における環境への配慮などを参考とする。
嘉瀬川ダムにて
嘉瀬川ダムは、昭和48年に実施計画調査を開始し、約40年を経て平成24年3月に完成した重力式コンクリートダムである。同ダムの規模は、高さが99m、貯水容量は福岡ドーム40杯分の約7万1,000㎥、総事業費は1,780億円で、嘉瀬川の洪水調整、流水の正常な機能の確保、かんがい用水の確保、水道用水の確保、工業用水の確保及び発電と6つの目的を有する多目的ダムである。
同ダムの建設に当っては、平成14年10月に「嘉瀬川ダム環境検討委員会」が設置され、同委員会と嘉瀬川ダム工事事務所が平成16年8月に「嘉瀬川ダム事業における環境保全への取り組み」を公表した。この中で、ダム事業における環境影響に関する基本的考え方や事業に伴う影響と取り組むべき方針などが提言された。さらに、平成21年9月に「嘉瀬川ダムモニタリング部会」が設置され、ダム建設に伴う環境影響及び貯水池の出現による新たな生物の生息場の機能の確認、並びに環境保全対策の効果の把握などを目的としてモニタリング調査が平成21年度から平成25年度までの5年間実施され、平成26年8月に「嘉瀬川ダムモニタリング調査報告会(調査結果最終取りまとめ)」が実施された。
同ダムは、水質を保全するための設備として、選択取水設備と曝気設備を有している。選択取水設備は、ダムからの利水放流を行う際に取水位置を固定せず、上流からの流入水の水温・水質に合う取水位置を自動で探して利水放流水を取水する施設で、曝気施設は、貯水池の水面下20mの位置に散気装置を設置し、湖内の水を循環させ植物プランクトンを抑制するとともに溶存酸素を増大させ水質改善を促進する施設である。この装置はダムの形状などによって設置台数が異なるが、同ダムでは4台を設置しているとのことであった。
さらに、同ダムでは水源地域の地域活性化にも取り組んでおり、ダム見学の実施、カヌーなどによる湖面利用やパークゴルフなどで地域の活性化を目指して、地元の関係者と様々な取組を実施している。特に、湖面利用では、ボート競技利用が盛んになってきており、高校総体の九州地区大会などが開催されているとのことであった。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「嘉瀬川ダムの着手から完成までの期間で大変だったこと、困難だったことは何か」との質問に対し、「昭和48年に調査を開始してから昭和63年の建設事業着手までの15年間、地元の方に御理解をいただくための説明を重ねていた。洪水が発生する同地域でも御理解をいただくためにかなりの時間が必要だった」との回答があった。また、「選択取水設備はこまめに動いているのか」との質問に対し、「普段はほぼ同じ位置で取水しているが、少し雨が降って水温に変化が出てくると自動で動いている」との回答があった。
このように、同ダムを調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
(地域と連携した川づくりと防災への取組について)
長崎河川国道事務所が管理する本明川は、その源を長崎県五家原岳に発し、急峻な山麓を南下した後、諫早平野を貫流し、支川を合わせて有明海に注ぐ、一級河川である。
同事務所では、「本明川は地域のみんなのものである」との認識に立った住民との協力・分担による河川管理への転換を推進している。また、梅雨期に雨の降りやすい地域で急激な水位上昇が心配される同河川において水難事故防止のための様々な取組が進められている。
同事務所の地域と連携した川づくりと防災への取組を調査し、地域による持続的・自立的な改善行動や維持管理を進める事業などの参考とする。
長崎県内唯一の一級河川である本明川は、総延長28kmで全国109水系の一級河川のうち一番距離が短く、流域面積249㎢は全国で5番目の河川である。
同河川は、上流部で降った雨が1時間で市街地に流れ込み急激に水位が上がるため、避難時間が短いことが課題となっている。全国の年平均降水量は1,540mmであるのに対して諫早市は2,160mmと雨が多く、特に6月と7月は降水量が多い。昭和32年7月の諫早大水害(死者・行方不明者539人)の発生をきっかけとして、翌年から同河川の管轄を県から国へ移管したという。
同河川の環境整備は、地域との合意形成を図りながら進められている。平成24年から、地域住民、諫早市及び国等で構成する「本明川河川利用懇談会」を開催し、河川空間利用者の安全性の向上を目的として様々な議論を重ねて、整備方針や目標を検討している。同懇談会における意見などを基に平成25年3月に作成された「かわまちづくり」計画は、国土交通省の「かわまちづくり支援制度」で認定され、平成25年度から国による整備事業が実施されることになった。利用しやすい散策路の整備や訪れる人々が安全・安心して利用できる緩い勾配の護岸などを実施するもので地元住民と検討会や現地調査を実施しながら整備を進めている。
一方で、川の安全確保の観点から、河川水位の上昇が予測される場合に河川から避難するよう呼び掛ける「安心スピーカー」や河川水位を黄色と赤のランプで視覚的に周知する「川の警告灯」を九州で初めて設置している。
概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「環境整備事業における散策路整備はいつごろ完成するのか」との質問に対し、「平成29年度までに完成させる予定である」との回答があった。また、「河川に対する地域の要望が時として防災などの観点から実現が難しい場合があるが、地域との協議はどのように行っているのか」との質問に対し、「本明川河川利用懇談会の中で議論をしている」との回答があった。
このように、同事務所における河川管理の取組を調査できたことは、本県にとって、大変参考となるものであった。
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