県土都市整備委員会視察報告
調査日
令和6年9月5日(木曜日)
調査先
(1)国土交通省荒川上流河川事務所・早俣地区、赤尾地区(東松山市、坂戸市)
(2)新河岸水再生センター(東京都板橋区)
調査の概要
(1)国土交通省荒川上流河川事務所・早俣地区、赤尾地区
(治水事業の推進について)
【調査目的】
■本県の課題
- 近年、整備水準を超える規模の降雨による被害が毎年のように発生しており、未だ浸水被害は解消されていないため、緊急的かつ重点的な整備が必要である。
■視察先の概要と特色
- 国土交通省荒川上流河川事務所では、令和元年東日本台風において甚大な被害が発生した、荒川水系入間川流域における「入間川流域緊急治水対策プロジェクト」を実施している。
- 同プロジェクトでは、国・県・市町等地域が連携し、多重防御治水の推進、減災に向けた更なる取組の推進の二つを柱として取り組んでいくことで、「社会経済被害の最小化」を目指している。
- 多重防御治水は、(1)河道の流下能力向上による、あふれさせない対策、(2)遊水・貯留機能の確保・向上による、計画的に流域にためる対策、(3)土地利用・住まい方の工夫による、家屋浸水を発生させない対策を三位一体の対策として実施している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 河道掘削は上下流バランスを踏まえ、下流の入間川区間から順次実施している。令和6年8月末時点で入間川区間は完了しており、越辺川・都幾川はそれぞれ約50%となっている。河道掘削・堤防整備は令和7年度末完了予定となっている。
- 減災に向けた更なる取組としては、越水センサー、危機管理型水位計、簡易型河川監視カメラを新たに設置し、よりきめ細かな監視ができるようにしている。水位計や監視カメラについては、国土交通省の「川の防災情報」というホームページから一般の方も閲覧が可能となっている。
- 先日発生した令和6年台風第10号において、過去、同程度の雨量で避難判断水位を超過していた都幾川流域の野本水位観測所で、入間川流域緊急治水対策プロジェクトでの河道掘削等により水位が約1.1メートル低下し、深夜時間帯での高齢者等避難の発令を回避することができた。
■質疑応答
Q:小畔川は、令和6年台風第10号でも氾濫危険水位を超過したとのことだが、今回の緊急治水対策プロジェクトにより危険性は低下するのか。
A:小畔川は、本プロジェクトの整備対象外ではあるものの、合流する越辺川や入間川の整備により効果が出たのではないかと考えている。令和6年台風第10号におけるプロジェクトの効果は現在精査中であるが、整理ができれば対外的にも示したいと考えている。
Q:今回の緊急治水対策プロジェクトでは、対策実施による下流域への影響はどのように考えているのか。流域全体の被害を想定して取り組んでいるのか。
A:現在、下流の荒川では、荒川第二・第三調節池を整備している。本プロジェクトにおいては、上下流バランスを踏まえて、下流にも安全に流せることを確認した上で対策を進めている。
(2)新河岸水再生センター
(下水道事業の推進について)
【調査目的】
■本県の課題
- 下水道は、汚れた水をきれいに処理し、快適な生活環境を確保するとともに、台風などによる雨を速やかに排除し、浸水から人々の生命や財産などを守る重要な施設であり、安定・継続した運営が求められている。
■視察先の概要と特色
- 新河岸水再生センターでは、汚泥焼却で発生する廃熱により発電し、焼却炉で使用する電力を自給できるエネルギー自立型焼却炉により、エネルギー使用量や温室効果ガス排出量の削減に大きく寄与している。
- 同センターでは、2020年4月から、電力及び燃料使用量を実質ゼロとする「エネルギー自立型焼却炉」を、東京都で初めて稼働している。
- 2023年からは、更に発電効率を高める「エネルギー供給型(カーボンマイナス)焼却炉」について民間事業者と共同研究を行い、研究開発目標を全て達成し実用化事業として評価している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 水再生センターは23区で13か所あり、新河岸水再生センターは3番目に大きな処理能力を有している。敷地面積は東京ドーム約4個分、処理能力は67万立方メートルを有しており、1日平均40~50万トンの下水処理を行っている。
- エネルギー自立型焼却炉は、高性能の汚泥脱水機により、通常よりも水分量の低い脱水ケーキが生産でき、水分を蒸発させるために必要な熱が少なく済むため、温度を維持するための補助燃料が必要ない。また、水分量が低いため、高温を維持しやすく、高温で焼却すると排出量が低下する一酸化二窒素の排出も削減できる。
- エネルギー自立型焼却炉の運転を開始した結果、温室効果ガスについては、従来の9割近い削減効果があったことがデータで示され、当初目標の削減率80%を達成することができた。
■質疑応答
Q:エネルギー自立型焼却炉やエネルギー供給型焼却炉の今後の波及・導入予定についてどのように整理されているか。
A:エネルギー自立型焼却炉については南部スラッジプラントという森ヶ崎水再生センターに付随している汚泥処理施設での導入工事が進められている。エネルギー供給型焼却炉も順次整備していく計画である。
Q:エネルギー自立型焼却炉について、2年前から稼働しており、温室効果ガスの排出量も80%の削減を達成したということであったが、電力、エネルギーについて、金額ベースではどの程度削減できたのか。
A:額としては管理してないが、エネルギー自立型焼却炉の発電能力は980キロワットであるため、コスト縮減効果もある。しかし、新河岸水再生センターでは使用する電力が非常に大きい(契約電力約14,000キロワット)ことからコスト面での寄与度は大きくない。今後も目標であるエネルギー使用量や温室効果ガス排出量の削減をしっかり取り組んでいきたいと考えている。
新河岸水再生センターにて