県土都市整備委員会視察報告
調査日
令和6年6月3日(月曜日)~4日(火曜日)
調査先
(1)神戸市役所・みなとのもり公園(兵庫県神戸市)
(2)国土交通省淀川河川事務所・桂川嵐山地区(京都府京都市)
調査の概要
(1)神戸市役所・みなとのもり公園
(都市公園の管理・運営について)
【調査目的】
■本県の課題
- 公園の管理運営においては、多様なニーズを持つ利用者や周辺住民との複雑な調整について、迅速かつ適確な対応が求められている。
■視察先の概要と特色
- みなとのもり公園では、計画段階から完成後の運営に至るまで、市民参画による公園づくりを推進している。
- 同園は、平成22年1月に開園した。平成22年3月、市民により「みなとのもり公園運営会議」が設立され、公園の日常管理・植栽管理・清掃のほか、イベントの補助、公園利用のルール・環境づくり等を行っている。
- 同会議は複数の部会を設置しており、部会の一つである「スポーツ部会」では、若者を中心とするニュースポーツ広場の利用者らが、利用ルールの作成や清掃等の維持活動を実施。ニュースポーツ広場は、多くの若者に利用され、にぎわいを創出している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 計画整備段階では、まず市が30名程度を人選し、ワークショップを開催した。その後、そのメンバーによる呼び掛けにより参加した者を加えて、基本設計等を検討した。検討の中で、当初駐車場であったスペースがニュースポーツ広場になる等、実際に利用する人の意見を反映していった。
- みなとのもり公園運営会議には、約20団体が参加している。参加の条件は毎月1回の定例会議への参加と活動の報告であり、参加団体には施設・資材の優先的な利用を一部認めている。定例会議では、各団体の活動の報告、問題点や課題の共有、解決策の検討のほか、大型のイベントの実施に係る検討等を行っている。
- 運営会議の良かった点は、公園施設への正しい理解と愛着が生まれ、公園を大切にする心、継続的な参画への意欲が生まれたことである。今後の課題は、メンバーの世代交代、市民参画の継続や、公園開設以後、周辺に多くのマンションが建設されたが、周辺住民の参画は少なく、今後どう関わっていただくかという点である。
■質疑応答
Q:ニュースポーツの種目の決め方や、後から参加を希望する団体への対応はどうか。
A:当初は、ワークショップに参加していた方を中心に決定。その後は、希望する団体が随時参加している。参加条件は、毎月1回の定例会議への参加のみであり、出入りも多い。
Q:課題は、近隣の方の参加が少ないということだが、明確な理由はあるのか。
A:明確な理由は不明だが、検討段階で参加いただいていた方が、近隣住民よりスポーツをしたい方がメインであった。公園周辺が街中ということもあり、地域との繋がりに興味の薄い方が多いという印象もある。
Q:公園の管理運営は有償ボランティア等が行う場合もあるが、運営会議はどのような体制で実施しているのか。
A:運営会議は予算を持たない団体であり、無償で管理運営を行っている。運営会議で決定した事項、例えば注意喚起の看板作成等については、材料費のみ市が出し、メンバーが無償で作成している。草刈りや枝打ちなどの一般的な管理は神戸市が行っている。
(2)国土交通省淀川河川事務所・桂川嵐山地区
(流域治水対策について)
【調査目的】
■本県の課題
- 激甚化・頻発化する気象災害について、水災害リスクの増大に備えるためには、流域に関わる関係者が、主体的に治水に取り組む社会を構築する必要がある。
■視察先の概要と特色
- 国土交通省淀川河川事務所では、全国2位の流域人口を有する淀川水系において、国・府県・市町村一帯における流域全体での防災・減災対策を推進している。
- 令和元年東日本台風により各地で甚大な被害が発生したことを踏まえ、「流域人口1,100万人の『淀川市民』の命を守る治水対策の推進」として、淀川水系流域治水プロジェクトを推進している。
- 一般的なハード・ソフト対策に加え、水辺に親しむことを通して流域治水を考える「ミズベリング的流域治水シンポジウム@淀川」の開催や、歴史的な雰囲気や周辺施設との調和を図る「景観や利用に配慮した治水対策」の実施など、先進的な取組を多数実施している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 流域治水の本格的な実践に向け、国では特定都市河川の指定の拡大を目指している。指定による流出増対策の義務化に負担を感じている自治体もあるが、埼玉県内でも、上尾市では既に条例で500平方メートル以上の雨水浸透阻害行為の場合には流出増対策を求めているため、流域治水対策の導入として着手しやすい取組と考えている。
- 下流での氾濫を防止するために、上流に調節池、遊水池を設けるのは埼玉県でも同様だが、奈良県を流れる大和川では、地域で貯留する貯留機能保全区域の今年度中の指定に向けて検討を進めている。
- 寝屋川流域の大和川・淀川の大河川に挟まれた低地は内水氾濫が多発しており、首都圏外郭放水路と同様地下に河川を通している。埼玉県でも荒川と江戸川に挟まれた中川流域が類似の地形となっている。
■質疑応答
Q:流域治水について、今後、住民理解をどのように進めていけばよいと考えているか。
A:直轄河川の場合、住民との距離が遠いため、地元自治体も交えてアプローチしている。
Q:流域治水は流域全体での治水対策ではある中で、どこかの地域に我慢してもらうということもあると思うが、先行している近畿地方ではどのように行われているのか。
A:郊外では、休耕地などを流域治水として買収する事例がある。都市部では、事業費はかかるが地下を活用していこうという流れがある。金銭面や工期などの問題、メリット・デメリットがあるため、一概に何が最適というものはなく選択肢は複数ある。地域ごとに治水の手法も異なるため、その中で方法を選択していく形になる。
国土交通省淀川河川事務所(嵐山左岸溢水対策箇所)にて