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掲載日:2024年6月10日
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令和6年1月25日(木曜日)
(1) 一般国道140号 大滝トンネル(秩父市)
(2) 秩父県土整備事務所(秩父市)
(道路事業の推進について)
秩父市大滝地区の国道140号現道は、落石や斜面の崩壊等が多く発生しており、その都度、交通規制を余儀なくされている。また、この区間は秩父市内で唯一迂回路がない幹線道路であり、災害時に寸断された場合、避難や物資輸送に大きな支障となる。
道路網の多重化等により、災害発生時には代替ルートの確保、迅速な避難や救援物資等の円滑な輸送等災害に強い道路整備を推進する必要があることから、同事業の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。
大滝トンネルは西関東連絡道路の一部として整備が行われている。西関東連絡道路は関越自動車道花園インターチェンジから山梨県の新山梨環状道路を結ぶ延長約110キロメートルの地域高規格道路に指定された道路であり、県内では、皆野寄居バイパス、皆野秩父バイパス、山梨県境の雁坂トンネルが整備されている。
埼玉県北部から山梨県にかけて道路網の整備により、現在計画されているリニア新幹線の山梨県内の駅とも連結が可能となり、人、物資の交流が活発となるほか、秩父地域にある三峯神社や三十槌の氷柱など関東有数の観光スポットを含めた広域的な周遊観光が可能になることから、観光客の増加などの効果も期待できる。また、危険区域が多く迂回路のない約7キロメートルの現道区間を約2キロメートルのトンネルで通行することが可能となり、首都直下地震などで大災害が発生した場合には、被災地への緊急輸送道路として非常に重要な役割を果たすことが期待できる。
工事においては、現道を仮設備ヤードとして利用するほか、運搬距離によっては大きな経費がかかる残土処理は、約3キロメートル離れたバイパス工事現場での有効利用や旧セミナーハウス跡地を活用することなどで、工期の短縮、経費の削減が図られているとのことであった。
また、事業を広く周知し、地元住民への理解促進や埼玉県のイメージアップの一助となることを目指した情報発信にも力を入れている。ホームページで掘削状況を毎週更新しているほか、埼玉新聞で、実際に現場で働いている次世代を担う若い世代を中心に、施工者、発注者を紹介するシリーズが連続で掲載されたり、テレビ埼玉では、発破の瞬間の映像が放映されるなど計20回以上メディアに取り上げられている。さらに、情報発信の面からも一番効果的とされる現場見学会では、メディアによる発信との相乗効果もあって、約2,000人の方が来場されたとのことであった。
概要説明の後は、実際の工事箇所等を視察し、施工者から同事業の取組について詳細な説明を受けた。
今回、視察先を調査できたことは、道路事業の推進に関する施策に大変参考となるものであった。
一般国道140号 大滝トンネルにて
(インフラDXの活用について)
インフラの適切な維持管理、業務の生産性や行政サービスの向上のため、インフラデータの活用などDX化の推進が求められているが、秩父県土整備事務所では、デジタルデータの活用により、業務効率を向上させる取組を推進した。その取組は、令和4年度インフラDX大賞国土交通大臣賞を受賞するなど評価されている。
インフラDX活用の推進のため、同事務所の取組を調査する。
同事務所は、秩父市、長瀞町、皆野町、横瀬町、小鹿野町の1市4町を所管しており、面積は埼玉県全体の約4分の1を占めている。また、そのほとんどが山間部であり、土砂災害警戒区域は、県全体のおよそ半数が管内に指定されている。
土砂災害警戒区域は不動産取引に影響を及ぼすため、不動産業者や不動産鑑定士などから区域に該当するかの問合せが多く、年間200件にのぼる年もある。従来の手順では、場所の特定に当たり住宅地図や航空写真を使用していたほか、地番が不明であるなど区域の特定が難しいものについては、104冊・70,000ページに及ぶ別冊の詳細調書を使用していたため、半日以上の時間を要していた。お客様を待たせてしまう県民サービスの面や職員の業務負担が大きいことなどの課題があった。
そこで業務の効率化のため、区域指定図や住宅地図、調書などの各種データをGISシステムに取り込むことで、検索した場所の土砂災害警戒区域の情報がワンクリックで重ね合わせるように表示させることが可能となった。この取組で一番の肝となったのは、市町村が所有する地番図データである。このデータは、外部への提供は困難かと思われたが、調整の結果幸いにも管内全市町から貸与を受けることができ、システムに反映することで、地番での検索も実現した。
このシステムの導入により、半日程度かかっていた照会が15分から20分程度で回答することが可能となったほか、情報の一元管理や事務所内のペーパーレス化にも寄与している。今後は、タブレット端末での表示や河川、道路台帳などの大容量のデータについても活用を検討していきたいとのことであった。
なお、この取組は、令和4年度のインフラDX大賞の最優秀賞に当たる国土交通大臣賞を受賞し、多くの建設専門誌にも紹介されたとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「他の事務所への横展開はどのような状況なのか」との質問に対し、「具体的にはこれからになるが、システム開発の費用やデータ加工に時間を要するなどの課題があるほか、各市町村が所有するデータを提供いただけるかが重要である。今回ノウハウを作ることができたので、各市町村の理解も含めて、今後調整をしていきたい」との回答があった。質疑後は、システムのデモンストレーションを見学し、システムの活用や業務効率化等の詳細な説明を受けた。
今回、視察先を調査できたことは、インフラ分野でのDXを推進する上で、大変参考となるものであった。
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