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掲載日:2024年2月13日
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令和5年11月21日(火曜日)~22日(水曜日)
(1)佐賀市下水浄化センター(佐賀県佐賀市)
(2)UR日の里団地(福岡県宗像市)
(下水道資源の有効活用について)
佐賀市下水浄化センターでは、平成21年に下水汚泥肥料化施設が完成し、肥料の製造を開始した。現在では、下水処理で発生する全ての汚泥を肥料化している。また、下水処理の過程で発生する消化ガスを使用した発電や下水処理水を農業や漁業に還元する取組を実施するなど、環境に配慮した循環型社会の構築に向けた事業にも取り組んでいる。
本県においても、下水道資源の有効活用に関する取組に着手していることから、同施設の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。
同施設では、下水道資源の有効活用を図るため、下水処理過程で発生する脱水汚泥を原料として肥料を製造、流通、販売する「佐賀市下水汚泥堆肥化事業」が立ち上げられた。この事業を推進するため佐賀市内外の民間企業が発起人となり、平成21年に全国で初めての国土交通省補助事業によるDBO方式を採用した特別目的会社(株)S&K佐賀が設立され、汚泥肥料化施設を建設、肥料の製造を開始した。
汚泥を濃縮し、消化槽でおよそ40度で分解した後、肥料化となるが、その工程の中で、高温に達するYM菌と呼ばれる超高温好気性細菌群や竹チップなどを加え、90度以上の超高温発酵を繰り返すことで良質で完熟した肥料となる。
肥料は10キログラムあたり20円で販売され、農家のほか一般市民も購入している。使用した農家からは、害虫がつきにくくなった、連作ができるようになったという声が多く聞かれ、経費の大幅削減、品質のアップなどが可能になる宝の肥料として喜ばれている。また、この肥料を使った野菜は「じゅんかん育ちin佐賀」というブランド名で親しまれるようになり、一般消費者をはじめレストランでも好評とのことであった。
その他の取組として、微生物の働きで下水の有機物などを処理するが、この微生物を有明海でののり養殖時期に合わせて、季節ごとにコントロールすることでのり養殖に有効な栄養類を含む処理水を放流している。のりの生産にも良い影響があることから養殖業者にも好評であり、のりの売上19年連続日本一(平成15年度~令和3年度)に寄与した。また、地域のバイオマスの集約にも積極的に取り組んでおり、食品工場の副産物やし尿などを集約し、より良質な肥料の生産やバイオガスを増産し、電力自給率の引上げを目指すなど、新たなエネルギー資源を創出しているとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で「肥料を安定的に販売するには、販売先の確保などの出口戦略も重要と考えるが、どのような取組を実施してきたのか」との質問に対し、「導入当初の1年間は、無料配布をして周知を行ったほか、市の広報やイベントなどでPRを続けた。今後は販売量の増加も見込まれるので、新たな公定規格『菌体りん酸肥料』の登録を行うなど更なる出口戦略を検討していく」との回答があった。
質疑後は、汚泥肥料化施設や肥料販売所、消化ガス発電設備を視察しながら、同施設の取組について説明を受けた。
今回、視察先を調査できたことは、本県における下水道資源の有効活用に関する施策に大変参考となるものであった。
(団地再生と周辺地域の活性化について)
開発から50年経過し、住民の高齢化や建物の老朽化が進んでいる同団地では、官民連携による新たなコミュニティ拠点と緑豊かな居住空間を組み合わせたハイブリッド型の団地再生が進められている。その取組として、老朽化した閉鎖棟10棟のうち1棟を残し解体し、共同企業体がその1棟(48号棟)を丸ごと生活利便施設にリノベーションして、残りの敷地に64戸の戸建て住宅を建設した。再生した団地は、団地住民と新住民のコミュニケーション拠点とする「ひのさと48」として令和3年5月にオープンさせた。
本県においても、団地再生や余剰地の活用が検討されていることから、同団地の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。
UR日の里団地は、福岡市と北九州市の間、宗像市にある九州最大級の大規模団地である。開発された1971年当初は、約20,000人もの住民が暮らすベッドタウンとして栄えてきたが、50年後の2021年には、住民数は10分の1の2,000人程度となり、高齢化率は4割前後で、宗像市全体の高齢化率3割前後を超えている。
そのような中、同団地では、建物の老朽化による建替え・集約によって生まれた10棟分の敷地に対し、官民連携の団地再生事業を進めている。団地再生を図るURと、持続可能なまちづくりを進める宗像市が手を携えながら、日の里団地の歴史を引き継ぎ、次の50年につなげる事業として譲受事業者を公募した。住友林業、セキスイハイム、西部ガス、東邦レオなど10社でつくる共同企業体に譲渡先が決定し、2020年3月に宗像市、共同企業体、URで連携協定を締結した。
10棟のうち9棟は建物を解体し、そのスペースに64戸の戸建て住宅を建設した。あえて画一的な道路は造らず、里山のような緑地を多く設けた共用部分を整備し、緑の中で自然と交流が生まれる特色的な居住エリアを創設した。事業収益の面でも、周辺の販売価格より2、3割程度高く販売できているとのことであった。
解体をせず残した1棟(48号棟)については、丸ごとリノベーションし、団地住民と新住民のコミュニティ拠点とする生活利便施設「ひのさと48」を令和3年5月にオープンさせた。同施設には、シェアオフィスやクラフトビールの醸造所、コミュニティカフェ、DIYスペースのほか保育園や発達支援施設を整備し、地元の子供や団地の住民、また県外からも大勢の人が集まり、にぎわいをみせている。また、産学官で連携し、小中学生が新しい団地でやってみたいことを提案する「大人本気会議」では、団地の壁にクライミングウォールを整備するプロジェクトが採用され、クラウドファンディングで資金を調達し、整備されるなど、特色ある取組も実施しているとのことであった。
UR日の里団地にて
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「生活利便施設の運営についても十分な事業収益が上げられているのか」との質問に対し、「日々の運営で大きな収益を得られているわけではない。このプロジェクトには多くの市民の方に参加いただいており、横のつながりも増えている。今後コミュニティが更に醸成され、将来的には携わる市民の方に運営を委ねていきたい」との回答があった。質疑後は、生活利便施設「ひのさと48」のシェアオフィスや醸造所、カフェなどの各施設を見学した。
今回、視察先を調査できたことは、本県における団地再生と周辺地域の活性化について大変参考となるものであった。
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