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掲載日:2019年12月9日
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令和元年8月28日(水曜日)~30日(金曜日)
(1) 大阪湾岸道路西伸部(近畿地方整備局大阪湾岸道路整備推進室)(神戸市)
(2) 放出下水道処理場(大阪市)
(3) コマツIoTセンタ近畿(大阪市)
(4) 梅小路公園(京都市)
(道路事業の推進について)
本県では、産業支援、地域振興や災害時の代替ルート確保のため、幹線道路ネットワークの充実が求められている。
大阪湾岸道路西伸部は、大阪湾岸道路の一部を構成しており、神戸市東灘区から長田区に至る14.5キロメートルのバイパス事業である。平成28年に事業化され、平成30年から工事が開始されている。
事業効果として、阪神臨海地域の交通負荷の軽減、災害や事故などの緊急時の代替路の確保、道路渋滞緩和による沿線環境の改善、ポートアイランドへのアクセス性向上による地域経済の活性化などが期待されている。また、神戸港に世界から寄港する大型客船に対応するため、六甲アイランド、ポートアイランドなどを長大橋でつなぐこととなっており、海からの高さでは、全国1位となる予定である。
同道路の整備状況を調査し、本県の幹線道路ネットワーク整備等の施策推進の参考とする。
大阪湾岸道路は、神戸淡路鳴門自動車道の垂水JCTから関西国際空港線のりんくうJCTに至る延長約80Kmの自動車専用道路である。昭和49年に天保山-南港北区間が開通し、順次整備が進められてきたが、平成7年に阪神淡路大震災が発生し、その後、震災復興が最優先されてきた。
同道路の一部を構成する大阪湾岸道路西伸部は、渋滞緩和による移動時間の短縮、緊急時の代替路の確保、沿線環境の改善、地域経済の活性化などの整備効果が期待され、整備が進められている。また、神戸港に世界から寄港する大型客船に対応するため、六甲アイランド、ポートアイランドなどを長大橋でつなぐこととなっており、海からの高さでは、全国1位となる予定である。
同事業の概要は、延長:14.5キロメートル、車線数:6車線、設計速度:80キロメートル、総事業費:5,000億円であり、平成21年3月に都市計画が決定され、平成28年4月に事業化されている。平成29年に公共事業と有料道路事業との合併施行方式が導入され、総事業費のうち、2,500億円を公共事業、2,500億円を有料道路事業として整備することになっている。さらに、整備に当たり、航路の変更などが必要となることから、公共事業のうち920億円は、直轄港湾事業として実施される。
阪神高速3号神戸線は、全国の高速道路の渋滞損失時間ワーストランキングで、下りが1位、上りが2位となっており、渋滞の解消が喫緊の課題となっている。大阪湾岸道路西伸部は、この阪神高速道路3号に並行して建設するため、渋滞の緩和が期待され、神戸市西区の玉津ICから大阪駅までの所要時間が96分から64分へと32分の短縮が見込まれている。
また、阪神高速3号神戸線では、事故の多い区間が点在していることに加えて、事故件数の50%以上で、事故処理のために車線規制が行われているため、事故発生時に一般道への交通が集中している。大阪湾岸道路西伸部の整備により、代替路の確保が可能となり、事故等による一般道への交通集中を緩和されることが期待されている。
概要説明後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「大阪湾岸道路西伸部の開通は、いつ頃が見込まれているのか」との質問に対し、「今後、橋りょう形式を検討するなど整備を進めていくため、まだ具体的な開通時期を示すのは難しい」との回答があった。
質問の終了後は、整備予定地を海上から視察した。同事業を調査できたことは、今後の本県の幹線道路ネットワーク整備等の施策推進に当たり、大変参考になるものであった。
(下水道資源の有効活用について)
本県では、再生可能エネルギーの活用促進や地球温暖化対策などの環境問題への貢献のため、下水道資源を有効活用することが求められている。
放出下水道処理場では、下水処理の過程で発生する汚泥を消化(微生物による有機物の分解処理)しており、その際に発生する消化ガスを有効活用し、発電を行っている。さらに、発電に伴う排熱を消化槽加温に利用し、有効活用している。事業スキームとしては、下水道処理場内に、民間事業者が発電施設を整備し、FIT(固定価格買取)制度による電力売電収入を得ているのに対し、大阪市は、民間事業者から消化ガスの販売料と土地占有料金を徴収している。
また、下水処理施設の上部を利用し、緑豊かな広場及び市民農園を整備し、周辺住民の憩いの場として活用している。
同施設の発電設備や施設上部の有効活用の状況を調査し、本県における下水道資源の有効活用の参考とする。
大阪市には、下水処理場が12か所あるほか、下水汚泥を集中処理する舞洲スラッジセンターがある。放出下水処理場は、昭和42年10月に市内8番目の下水道処理場として設立され、城東、東成、鶴見、生野地区の下水処理を行っている。
同市では、民間の資金とノウハウを活用した民設民営による下水処理場での消化ガス発電事業を行っている。平成27年に民間事業者3社(OGCT、月島機械、月島テクノメンテサービス)と大阪市が契約を締結し、4か所の下水処理施設(放出・大野・海老江・住之江)に発電設備を設置し、バイオガス発電を行う準備を進めてきた。民間事業者が自己資金で発電設備を建設、FIT制度を活用し、20年間にわたり発電事業を行うものであり、放出下水道処理場では、平成29年4月から発電事業を開始している。
消化ガスは、下水処理に伴い発生する汚泥を消化処理する過程で発生する有益なエネルギー源である。従来、4か所の下水処理施設では消化槽の加温等に使用する以外、燃焼廃棄処理をしていたが、発電燃料として使用することにより、ほぼ100%有効活用できるようになった。
発電事業の効果としては、4か所の下水道処理場を合わせて、年間約2,580万kWhの発電量を見込んでおり、これは、一般家庭約7,100世帯分の年間電力消費量に相当する。また、温室効果ガスの削減量は、年間約13,000t-CO2を見込んでいる。
また、同処理場の上部に、屋上庭園、芝生広場、市民農園を設け、市民の憩い場を提供している。市民農園の利用に関しては、運営要綱を作成し、利用期間を3年間とし、年額33,000円(税抜)で利用できるようになっている。毎回、設置されている区画を超える申込みがあり、直近で行われた平成30年度の募集では、抽選倍率は約3倍と人気のある施設となっている。
概要説明後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「FIT制度を活用している売電収入を得ている民間事業者が投資している費用はどの程度か」との質問に対し、「民間事業者は、発電事業を行っている4処理場の合計値で、20年間の売電収入約180億円を見込んでいる。これに対する費用は、減価償却費を含む維持管理費が約90億円、大阪市に支払いをする費用(消化ガス販売量・占用料)が約66億円、併せて約156億円の支出を見込んでいる」との回答があった。また、「大阪市で負担する費用はあるのか」との質問に対し、「民間事業者が、自ら各種設備を設置し、発電事業を行うため、市で負担する経費はない。民間事業者から支払われる収入に関しては、維持管理費として充当されている」との回答があった。
質問の終了後は、処理場の発電設備、屋上庭園等を視察した。同処理場を調査できたことは、今後の本県の下水道資源の有効活用の施策推進に当たり、大変参考になるものであった。
放出下水道処理場にて
(建設現場におけるICT技術の活用について)
全国的に、労働者不足などを背景として、建設現場における生産性の向上が課題となっている。建機メーカーであるコマツは、建設生産プロセス全体の全てのデータをICTで有機的につなぐことで、測量から検査までの現場を「見える化」し、工事全体を効率化する「スマートコンストラクション」を提供している。コマツIoTセンタ近畿では、デモヤードがあり、油圧ショベルやブルドーザなどICT建機が実際に施工する様子を見学することができる施設である。
本県では、ICT活用工事施行要領を定め、対象となる県発注の工事において、ICTの全面的な活用に取り組むこととしていることから、最新のICTを活用した建設機器を視察することで、本県の工事施工の参考とする。
コマツIoTセンタ近畿は、平成28年12月、大阪市西淀川区に開設された、目の前でICT建機での工事施工を見学できる施設である。
建設機械メーカーであるコマツは、国土交通省が推進している「i-Construction」に対応した「スマートコンストラクション」を考案し、工事現場でICT技術の普及を図っている。
i-Constructionとは、測量から設計、施工、検査、維持管理に至るすべての事業プロセスでICT技術を導入することにより、建設精算システム全体の生産性向上を目指す取組である。
スマートコンストラクションとは、ICT建機やドローンなどのデジタル技術を駆使し、工事全体を効率化させるサービスで建設生産プロセス全体のあらゆるモノのデータを、ICTで有機的につなぐことで、測量から検査まで現場全てを見える化し、安全で生産性の高いスマートな未来の現場を創造していくソリューションである。
ICT建機を利用することで、一部分のみの工程が効率化されたとしても、前後の工程にボトルネックが発生すると、工事全体の生産性の向上につながらなくなってしまうため、スマートコンストラクションでは、全ての工程において、データ化し情報を共有することで安全で高い生産性を実現することを目的としている。
具体的な仕組みとしては、ドローンや3Dレーザースキャナなどによる3次元測量により、高精度な現況測量が短時間で行うことが可能になる。また、測量データはすぐに共有され、施工する範囲や土量を正確に把握できるようになる。施工計画に関しても、施工条件を入力することで、工期を最も短縮した場合、コストを最も抑えた場合など、いくつかの最適工程の比較考慮をした上で施工計画を立てることが可能となるなど工事全体の生産性向上を図ることができる。
概要説明後は、同施設内デモヤードでICT建機が実際に工事施工する様子について視察を行った。視察後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「衛星状態が悪いと、ICT建機との通信ができない事態が生じ、生産性が低くなるが、そのような事態はどの程度起こり得るのか」との質問に対し、「現状では、山間部やビルの間など衛星が届かない現場ではICT建機を利用することはできないため、通常の現場で通信ができなくなる事態は少ない。しかし、衛星は常に動いているので、時間帯によって通信しづらい状況が生じ、その場合データが数センチ単位でずれてしまうため、現場で補正しながら施工しているのが実情である」との回答があった。同施設を調査できたことは、今後、本県の建設現場におけるICT技術活用の施策推進を行うに当たり、大変参考になるものであった。
コマツIoTセンタ近畿にて
(都市公園における民間活力の活用について)
本県では、公園の魅力アップを図るため、公園施設の整備・充実が求められている。
梅小路公園は、京都市が所有し、指定管理者制度に基づき、(公財)京都市都市緑化協会が運営管理している。公園内には、民間事業者と連携した施設が整備され、公園の魅力向上を図っている。
平成24年にはオリックス不動産が、人工海水を利用した日本初の水族館である京都水族館を、平成26年にはJR西日本が、従来あった梅小路蒸気機関車館を拡張・リニューアルし、京都鉄道博物館をそれぞれ整備した。これらのほか、公園内のカフェやレストランの運営業務についても、民間事業者を公募し、運営を行うことでにぎわいを創出している。
同公園の民間活力の活用の状況を調査し、本県における公園の魅力向上についての参考とする。
梅小路公園は、平成7年4月に、平安遷都1200年を記念して作られた都市公園であり、運営管理は、指定管理者制度に基づき、(公財)京都市都市緑化協会が行っている。
京都市の中心市街地に位置し、都市部における貴重な緑とオープンスペースを担保するとともに、憩いの場の創出、各種イベント等、総合的なレクリエーションを通じて、京都市民のみならず市外の方々からも広く親しまれ、中心的な公園としての役割を担っている。また、災害時の広域避難場所としての機能を持っている。
同公園は、京都市が民間事業者と連携して整備を行っており、平成24年にはオリックス不動産が、人工海水を利用した日本初の水族館である京都水族館を、平成26年にはJR西日本が、従来あった梅小路蒸気機関車館を拡張・リニューアルした京都鉄道博物館を、それぞれ整備している。さらに、公園内の「市電ひろば」、「すざくゆめ広場」、「朱雀の庭」にあるカフェ、物販店舗、レストランについても、民間事業者の公募を行い、選定された事業者が運営している。
カフェ等の運営においては、京都市が管理許可を民間事業者に与え、事業を行っているが、その使用料は売上比例使用料を採用している。これは、売上比例使用料(売上げの10%)と基本使用料(民間事業者募集時の提案使用料)を比較し、高い方の金額を採用し、使用料とする制度である。市としては、最低限の使用料収入が担保されるとともに、事業者の売上げに比例して、収入が上がる仕組みになっている。
また、平成31年3月に新たにJR梅小路京都西駅が開業したほか、ホテルや商業施設の開業が予定されており、来園者数の増加が見込まれている。公園利用者の利便性を向上させるともに公園及び周辺施設の更なる活性化を図るため、JR梅小路京都西駅に近接する七条入口広場に新たな賑わい施設の設置を計画している。平成30年9月から11月に民間事業者からの提案を募集し、平成31年2月に事業者を選定したところ、アイススケートリンク(夏季はノンアイスリンク)、飲食店、無料休憩所などの複合施設が設置されることになり、現在、建設に向け、準備を進めている。
概要説明後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「カフェの運営に関し、売上比例使用料を採用しているが、事業者は採算がとれているのか」との質問に対し、「過去に支払われた実績をみると、悪天候が続いた等の月を除き、年間を通じて、売上比例使用料で使用料が支払われており、営業としては好調であると考えている」との回答があった。また、「夏季に設置されるノンアイスリンクは、スケートリンクと同じ場所で行うのか」との質問に対し、「冬季シーズン後には、アイスリンクを剥がし、新たに樹脂のリンクを張ることになる。張替えのための経費がかかるが、収益があると事業者は見込んでいる。また、様々なスポーツができる場所として活用する案も挙がっており、今後、検討を進めていく」との回答があった。
質問の終了後は、同公園内のカフェ、レストラン、京都鉄道博物館及びスケートリンク建設予定地の視察を行った。同公園を調査できたことは、今後の本県の公園施設の整備・充実の施策推進を行うにあたり、大変参考になるものであった。
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