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掲載日:2023年5月23日
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平成27年8月26日(水)~28日(金)
(1) 兵庫県庁[企業庁水道課](神戸市)
(2) 千林商店街振興組合(大阪市)
(3) ㈱ダイキンサンライズ摂津(摂津市)
(4) 地方独立行政法人京都市産業技術研究所(京都市)
(水道事業における災害対策について)
兵庫県内の水道施設は、20年前の阪神淡路大震災により甚大な被害を受け、広範囲にわたる断水が発生した。兵庫県企業庁水道課は、この災害を教訓に、地震に強い水道施設づくりに取り組んでいる。平成21年度までに管路を除く施設の耐震化工事を完了しており、さらに、平成25年度には日本水道協会兵庫県支部と合同で地震などの水道災害に備えて、情報伝達訓練と応急給水実務訓練を2日間にわたり、大規模な訓練を実施した。
本県においても、県営水道の災害対策の推進を目指して様々な施策に取り組んでいることから、同課の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。
兵庫県庁にて
阪神淡路大震災直後の給水対応は大変な混乱があり、次のような状況であった。第一に約127万戸が断水し、鳴りっぱなしの電話に職員は徹夜で対応した。第二に、水道管の破損による減圧やがれきの山に阻まれて、ほとんどの消火栓や防火水槽が使えず、火災を消火することができなかった。第三に、人工透析等医療用水が不足して、ポリタンクで各医療機関へ配布したり、加圧給水車により各病院の高架水槽へ給水するなどの対応が行われた。第四に、学校等の避難所でトイレ用水等生活用水が不足し、散水車やミキサー車で給水を行った。これらの実体験に基づいた詳細な説明が行われた。
同県では、こうした阪神淡路大震災の教訓を生かし、災害時の水を確保するためのハードと事業者間の連携を強化するソフトの対応を進めている。
ハード面(水害時の水を確保する)の整備では、水道施設の耐震化を進めている。耐震化率は浄水施設においては100%、管路においては、震度5から6の耐震性を有する管を整備し同じく100%(うち、耐震適合管67.8%、耐震管35.9%)と全てにおいて全国平均を上回っているが、水道設備の更新費用など予算確保が課題となっている。なお、国庫補助が減少していることに対し、兵庫県議会から国へ意見書を提出したとのことであった。また、平成27年度から緊急時連絡管の整備を進め、代替送水ルートとして活用することにより災害時に既存給水系統のバックアップ機能強化を行っている。さらに、神戸市において緊急貯留システムや大容量送水管整備を進めていることについても紹介があった。
ソフト面(事業者間の連携を強化する)の対応としては、相互応援による水の確保を「相互応援協定」や「覚書」という形で近隣自治体や水道関係団体と締結している。また、危機管理訓練を定期的に実施することにより、減少しつつある震災を経験したベテラン職員から若手職員へ当時の経験を伝えているとのことであった。
概要説明を受けた後、震災当時の鳴りっぱなしだった時の具体的な電話対応、市民の防災に対する意識付け、震災経験の継承、震災時の応援態勢などについて委員から活発な質問が行われた。
今回の視察は、本県の水道事業における災害対策を実施していく上で、大変参考となるものであった。
(商店街の活性化について)
千林商店街は、大阪でも1、2を争うほどの活気のある商店街である。かつては隣接していたダイエー、ニチイ(両社とも、現在のイオン傘下)、個人商店との価格競争の激しさから「日本一安い商店街」とも称されていた。商店街では全国的に見ても珍しい、商店街オリジナルのテーマソング「千林商店街テーマソング」や商店街オリジナルのキャラクターなどを作って他の商店街とは違った独自の手法で知名度アップに努めている。歌詞の中に「いち・じゅう・ひゃく・せん・せんばやし」とあり、アーケード中に響き渡る音量でテーマソングが流れていることがあるという。
本県においても、商店街の活性化に取り組んでいることから、同商店街の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。
千林商店街は、京阪電鉄千林駅と大阪市営地下鉄谷町線千林大宮駅の間を結ぶ全長660mに延びる地域型商店街である。明治43年の京阪電鉄千林駅開業を発祥に100年を超える歴史を有し、大阪でも有数の人通りが多い商店街である。
同商店街は一貫して「スーパーと共存共栄を図る」姿勢を貫き、大型店を排除せず、常に前向きにしのぎを削る中で発展を遂げている。一方、新たな顧客ニーズや消費動向への対応、近隣・広域双方の買い物客の集客、空き店舗対策が課題であった。
新たな顧客ニーズへの対応としては、全国商店街支援センターの「平成24年度商店街活性化モデル創出事業」として「1000ピースプロジェクト」(1000は千林の千、ピースはパズルのピースを表す)を実施しており、チームを作って地域の魅力を発掘しPRすることで、千林ファンを増やすことを目指している。また、大阪市で初めてとなる「100円商店街」や、京阪電鉄とタイアップし、同路線を利用した買い物客の運賃の一部を負担する「千林来てーなキャンペーン」をはじめ、毎月数々の販促事業を実施して、買い物客の集客に取り組んでいる。さらに、「千林ふれあい館」や、空き店舗をイベントや販売活動に有効利用した地域活動事業などを実施して、成果を上げている。
同プロジェクトでは、PR発信活動としてホームページの開設やフリーペーパーの発行(毎月発行)、トークサロン(情報交換会)などが具体化している。また、「100円商店街」は、近隣の4つの商店街に拡大するなど回を重ねるごとにレベルアップするとともに、開催回数も13回におよび、商店街の販売促進活動として定着している。また、「千林ふれあい館」では、各地物産展、チャレンジショップ、学生による展示会などが頻繁に開催されている。同商店街の取組が評価され、平成26年2月には中小企業庁の「がんばる商店街30選」に選ばれている。
概要説明を受けた後、商店街のリーダーシップ、後継者づくり、切れ目のないイベント企画、名物イベント、アーケードの維持修繕、行政との連携、商店街のオリジナルキャラクターなどについて委員から活発な質問が行われた。
今回の視察は、本県の商店街の活性化を実施していく上で、大変参考となるものであった。
(障害者の就労支援について)
㈱ダイキンサンライズ摂津は、平成5年5月に大阪府、摂津市及びダイキン工業が第3セクター方式で設立した特例子会社で、平成6年6月から操業を開始した。事業内容は空調部品、油圧部品の組立・製造・フッ素系防腐剤の検査及び梱包などで、親会社ダイキン工業からの受注を請け負っている。平成26年6月現在の従業員は、健常者17名、障害者107名(肢体不自由者31名、聴覚障害者30名、知的障害者20名、視覚障害者1名、精神障害者25名)である。さらに、厚生労働省の平成26年度精神障害者等雇用優良企業として認証されている。
本県においても、障害者の就労支援について取り組んでいることから、同社の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。
㈱ダイキンサンライズ摂津にて
㈱ダイキンサンライズ摂津の基本方針は、「1 自らの努力と相互協力により経済的自立を目指す」、「2 生産活動を通じて自らの成長と社会的貢献を目指す」、「3 社員、家族、地域にとって誇れる企業を目指す」、である。
同社は、障害者に対する処遇については健常者と全く同じ「成果主義」を取っている。不良品を出さなくなった、アイデアをよく出す、できる作業が増えたなど、一人一人、異なる仕事の成果や積極性で相対評価し、給与に反映させている。個人によって得意な仕事も異なるが、働いた成果をきちんと評価することで、障害者のやりがいと自立につながるという考えに基づいている。
現場の改善では、自分たちで考えて障害者だけで「現場が回る」形ができるような仕組みも作ってきた。提案制度を採り入れ、どのような障害を持つ人でも働きやすい職場にするにはどうすればよいかを話し合ってきた。できないことをできないままにせず、どうやったらできるかを徹底的に話し合い、できるように作業手順を見直す。工場内では、誤った作業を行ったときに単にブザーを鳴らすということだけではなく、聴覚障害者には光で誤りを知らせるなど、障害者の特性に合わせ作業環境も整備している。さらに、障害により細かい作業が苦手な者にも、障害の特性に合せた補助具を作成するなどきめ細かく対応している。
同社の業績は、特例子会社であるにもかかわらず、売上を伸ばしつつ黒字経営を維持しているという。既に100名以上の障害者を雇用しているが、今後、更に採用を増やしていく予定であるとのことだった。
概要説明を受けた後、工場内を見学し、質疑応答を行った。障害者雇用の求人に対する応募状況、障害者雇用の定着率、障害者の通勤への対応について熱心な質問が行われた。
今回の視察は、本県の障害者の就労支援を実施していく上で、大変参考となるものであった。
(中小企業支援について)
京都市産業技術研究所は、平成22年10月に繊維技術センターと工業技術センターを統合して設置された。複雑化、多様化する中小企業等のニーズに迅速かつ的確に対応するため、平成26年4月から地方独立行政法人に移行した。同研究所では、染識技術や繊維素材をはじめ、高分子、金属、窯業、表面処理、バイオ、デザインにわたり、幅広い分野の研究、企業の技術支援を行っている。
本県においても、中小企業支援に取り組んでいることから、同研究所の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。
京都市産業技術研究所は、京都市が設立した公的な産業支援機関である。沿革は、大正5年に設立した京都市染織試験場がもととなり、来年で創設100年を迎える。
現在の当研究所の使命は、京都のものづくり文化の優れた伝統を継承し、発展させ、新しい時代の感性豊かで先進的な産業技術を創造することである。ものづくり中小企業が、研究開発や製造工程の改善等で直面する課題や問題を解決できるよう、また、新商品や新技術をより創出できるよう、技術面からの支援に取り組んでいる。
当研究所の8つの研究チーム(高分子系チーム、金属系チーム、窯業系チーム、製織システムチーム、バイオ系チーム、表面処理チーム、デザインチーム及び色染化学チーム)が企業の依頼を受けてそれぞれ有している得意技術や専門的知見、さらには高度な研究開発機器を活用して、製品や素材等の試験・分析をしたり、技術課題を聞き、解決策の提案等を行う技術相談などに取り組んでいる。また、企業が直接利用できる設備機器を配備している。
人材育成では、伝統産業技術後継者の育成や、ものづくり中小企業技術者の技術力向上を図るため、様々な人材育成研修やセミナーを開催している。伝統産業分野で働くことを目指す若者や既に伝統産業に携わっている技術者、事業主等を対象に、短期、中期、長期で専門知識や実技を学ぶことができる研修を開講している。また、広く中小企業の技術者や開発担当者、事業主等を対象に新しい技術や高度な研究開発機器の紹介等を行う技術セミナーや講習会を開催している。
平成22年11月に同研究所内に設立した知恵産業融合センターは、「伝統技術と先端技術の融合」や「新たな気づき」といった 「知恵産業」の推進を技術面から進めている。当研究所の技術力をベースにした企業への技術支援や企業マッチング等に取り組み、伝統技術と先端技術の融合や新たな「気づき」による新技術・新商品の開発等を行った企業を「知恵創出"目の輝き"」企業として認定するなど、知恵産業を技術面から推進している。
概要説明を受けた後、当研究所が新素材として開発した「セルロースナノファイバー」、伝統技術をデータ化して量産することによる販売価格への影響、伝統産業技術者養成後の就労などについて委員から活発な質問が行われた。
今回の視察は、本県の中小企業の支援を実施していく上で、大変参考となるものであった。
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