産業労働企業委員会視察報告
調査日
令和6年6月4日(火曜日)~5日(水曜日)
調査先
(1)とちぎビジネスAIセンター(栃木県宇都宮市)
(2)一般社団法人アントラーズホームタウンDMO(茨城県鹿嶋市)
調査の概要
(1)とちぎビジネスAIセンター
(AI・IoT技術の導入支援について)
【調査目的】
■本県の課題
- 県経済が将来にわたり成長・発展を続けていくため、新たな産業の育成に繋がるイノベーション支援や、企業の生産性向上に向けたデジタル化の支援が必要である。
■視察先の概要と特色
- 栃木県では、「新とちぎ産業成長戦略」を策定し、多様な産業の成長による価値創造の好循環の実現を目指している。このうち「次世代産業創造プロジェクト」の施策の一つとしてとちぎビジネスAIセンターが設置されている。
- 同施設では、企業訪問等による普及啓発や、AI等の導入を検討する企業等に向けた個別相談など、企業の状況に応じた支援を行っているほか、AI等の技術を活用した機器の体験機会を提供している。
- また、企業を対象としたワークショップや研修講座の開催など、企業の成長に貢献できるデジタル人材の育成にも取り組んでいる。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同施設を運営する栃木県産業振興センターでは、各支援機関と連携し、創業から事業化・経営革新まで、きめ細やかな支援を実施している。また、同施設は県内企業におけるAI等の導入や利活用を支援するための拠点となっている。
- 同施設では、展示されている実機の体験後、その場で常駐のサブマネージャーに各企業に応じた具体的な相談(導入できる場面・価格等)を行い、次につなげることができる点が特徴の一つである。
- 課題ヒアリング、ベンダマッチング、実証・導入まで、サブマネージャーが一貫した伴走支援を行っている。
- 支援の実例として、地域コミュニティ施設において、カメラで取得した顔データをAIが解析し、来訪者数や滞在時間の集計、男女比率や年齢など来訪者属性等を分析できるシステムが導入されている。
■質疑応答
Q:成長戦略では、成果指標として企業のAI等を導入する事業所の割合(令和7年度末:30.0%)を定めているが、その現状について伺いたい。
A:令和4年度現在で19.5%である。徐々にではあるが計画どおりに進んでいる状況である。
Q:サブマネージャーの役割が重要であると考えるが、どのような形でスキルアップを図っているのか。
A:各サブマネージャーが有する基礎知識に加え、最新のセミナーに参加するなどの自己研鑽を行っている。最新のソリューションの習得や情報収集を行い、ラインナップを増やしていくことが特に重要と考えている。
Q:そもそも企業側で課題を認識できていない場合も多いと考えるが、どのような働き掛けを行っているのか。
A:その点も含めて、他企業における具体的な導入事例などを紹介することで、PRを行っている。
とちぎビジネスAIセンターにて
(2)一般社団法人アントラーズホームタウンDMO
(観光施策の推進について)
【調査目的】
■本県の課題
- 県独自の観光資源の創出に向けた各地域の取組を支援することで、本県への誘客を促進していく必要がある。
■視察先の概要と特色
- 一般社団法人アントラーズホームタウンDMOは、鹿行地域の5自治体や地元サッカーチームである鹿島アントラーズを含む4企業を参画団体としている。
- 同法人は、観光客誘客のための「着地型旅行事業」とDMO自走化のための「収益事業」を二本柱に、「地域の稼ぐ力」を向上させるための事業を展開している。
- 着地型旅行事業では、スポーツ合宿だけではなく、豊かな自然環境と歴史文化など地域の観光資源を生かしたプランを企画している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 鹿行地域には、二次交通網の脆弱さ、観光資源の乏しさなどの課題がある一方、鹿島アントラーズのホームタウン、豊かな自然環境などの強みがある。この強みを生かすことで地域課題の解決につなげるため、同法人が設立された。
- 行政を構成員としたDMOは、全国的にも事例が少ない。
- 実施事業の7割から8割をスポーツツーリズムが占めている。国内だけでなく、インバウンド対策にも取り組んでおり、現地の旅行代理店と業務提携を行い、サッカーだけでなく、地域の観光資源・日本の文化の体験等を含んだプランを企画している。
- グリーンツーリズムも実施しており、今年度は試合観戦と旬の野菜等の収穫体験を組み合わせた企画の販売に力を入れている。
- 今後国内のインバウンド客が増えていくことが予想される中、法人としても新たなツーリズム事業の構築に取り組んでいきたい。
■質疑応答
Q:年間の運営収支を伺いたい。
A:コロナ禍の売上げは6,000万円程度であったが、徐々に回復しており、昨年度は1億2,000万程度の売上げを見込んでいる。全体の約8割がツーリズム事業による売上げであり、うち8割程度がスポーツツーリズムによるものである。
Q:DMO自ら様々な企画を実施しているが、地域の旅行事業者と競合することはないのか。
A:法人としての事業基盤を固めている最中でもあり、まずは主導的に取り組みつつ、地域の観光事業者にも歓迎されるような形を作っていきたい。
Q:インバウンド対策について、どのような地域を対象としているのか。
A:茨城県が台湾をインバウンドの重点として定め交流を深めていることもあり、問合せが増えている状況である。今後はクラブのコネクションを活用し、東南アジアからの誘客にも力を入れていきたい。