トップページ > 埼玉県議会トップ > 委員会 > 委員会視察報告 > 産業労働企業委員会視察報告

ページ番号:168718

掲載日:2019年11月26日

ここから本文です。

産業労働企業委員会視察報告

期日

令和元年9月3日(火曜日)~5日(木曜日)

調査先

   (1) まちづくり株式会社ZENコネクト(福井県永平寺町)
   (2) 株式会社小林製作所(白山市)
   (3) 公益社団法人とやま観光推進機構(富山市)
   (4) 株式会社不二越 富山事業所(富山市)

調査の概要

(1) まちづくり株式会社ZENコネクト

(自動運転自動車の実証実験の取組について)

【調査目的】

   永平寺町では、自動運転自動車実証実験を平成29年度から実施している。まちづくり株式会社ZENコネクトは、実証実験の運行を担っている第3セクターである。実証実験は、旧京福電鉄永平寺線の廃線跡を利用した遊歩道「永平寺参(まい)ろーど」約6km区間において、産業技術総合研究所、福井県、永平寺町、京福バスと協力の上で実施している。今年度の実証実験は6月24日から12月20日までの長期間にわたり実施しており、地域住民や観光客の足として体験してもらい、ニーズや受容性を調査している。
   本県で推進している次世代自動車産業への支援の参考とする。

【調査内容】

   永平寺町は、鎌倉時代に道元が開山した曹洞宗大本山永平寺の門前町として知られている。現在、人口は2万人を割り込み、人口減少、少子高齢化が加速している。町の基幹産業は永平寺への参拝客を中心とする観光業であるが、参拝客数はピーク時の約3分の1に減少している。
   同町は、自動運転を高齢者等の移動手段の確保、観光客の足として活用することを目指し、平成29年度から繰り返し実証実験を行っている。いち早い事業化を目指し、「自動走行を活用したまちづくり」を推進していくとのことであった。
   実証実験の実施に当たっては、将来の事業化を見据え、町、関係団体、京福バスが出資する第3セクターである「まちづくり株式会社ZENコネクト」を設立し、車両の管理、運用を行っている。
   自動運転車両は、廃線跡地を活用した遊歩道「永平寺参ろーど」を走行している。普段は自転車、歩行者専用道路として使用されているが、実証期間中は自動運転車両も走行する。緊急時の対応に備え、運転席に人はいるが、車両の操縦は遠隔操作している。車両は路面に敷設された電磁誘導線をセンサーで読み取り、決められたルートを走行している。
   同町の職員によると、現在は6か月という長期間の実証実験により、経済性を検証しており、利用者数の推移などのデータを取り、料金設定などを検討するとのことである。
   委員からは、「自動運転では自律走行などの先端技術は導入しないのか」との質問に対し、「自動運転に関しては様々な先端技術があるが、事業化する上では、経済性、安定的な運用の観点から、既に普及している技術を意識して使っている」との回答があった。
   概要説明を受けた後、自動運転車両に乗車した。公道との交差点では減速、停止、2段階の安全確認を行うなど、安全には非常に配慮されているが、一方でスムーズな運行の面ではストレスとなるといった意見もあるとの話であった
   今回の視察は、次世代自動車産業への支援を推進していく上で、大変参考となるものであった。

産労_まちづくり株式会社zenコネクトにて

まちづくり株式会社ZENコネクトにて

(自動運転自動車)

(2) 株式会社小林製作所

(中小企業におけるIoT技術導入の取組について)

【調査目的】

   大正8年に創業した株式会社小林製作所は、主に半導体製造装置や工作機械向け部品を製作する精密板金加工メーカーである。社長自ら開発した各種IoT技術を活用したシステムを工場内に導入し、事業の効率化、生産性の向上を進めている。
   特にカイゼンカメラシステムは、工場内に設置したカメラが作業状況を撮影し、情報を分析活用することで、作業工程の改善の検討やコスト分析、労務管理等に活用している。
   本県においても、先端産業の育成・支援、IoT技術の開発、導入促進に取り組んでいることから、同社の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。

【調査内容】

   株式会社小林製作所は、大正8年の創業当初は、船舶や繊維機械のボルトの製造が主力であったが、日本のものづくりの進歩とともに事業内容も変化し、現在は主に精密板金加工メーカーとして、充実した生産設備と技術力を強みに、多品種・小ロット・短納期といった顧客ニーズに対応している。
   IT化の取組としては、パソコンが普及し始めた1980年代、学生であった現社長が、コンピューターの可能性に着目し、受注管理ソフトを開発、導入したのが始まりである。1991年に社長に就任してからは、自社開発の各種システムを導入し、海外との価格競争やリーマンショックなどの経済危機を契機とした受注減などに対応した。
   同社に導入している各種システムのうち、IoTを活用したカイゼンカメラシステムは「Sopak-C(そぱっくしー)」の名称で販売しており、国内外の各種製造会社などで広く使われている。
   このカメラシステムは、工場内にくまなく設置したカメラが静止画像を間欠撮影し、作業状況を記録、共有情報としてサーバに保有、分析活用するものである。映像を基に作業工程の改善の検討や、コスト分析に活用している。また、画像によるマニュアルとして保存し、少量、多品種の注文にも迅速に対応することが可能となっている。さらに労務管理や教育訓練にも利用しており、技術の伝承、人材確保にも役立てているとのことであった。
   委員からは、「映像を労務管理にも使うとのことだが、社員から苦情は出ないか」との質問に対し、「ほどんどの社員が仕事ぶりをしっかりと評価してもらえると賛成し、反対したのは、他の社員からさぼっているとの指摘のある社員だったので問題にはならなかった」との回答があった。
   概要説明を受けた後、工場内を視察したが、比較的若い社員が男女を問わず目立つのが印象的であった。いわゆるリケジョが現場作業を希望して応募してくるケースも多いとのことであった。
   今回の視察は、本県におけるIoT技術の開発、導入を促進していく上で、大変参考となるものであった。

(3) 公益社団法人とやま観光推進機構

   (日本版DMOの取組について)

【調査目的】

   富山県における観光については、北陸新幹線の開業により、宿泊者数は大幅に増加し、その後も堅調に推移している。一方で、冬場の宿泊者が少ないことや、県内消費額、滞在時間が全国平均と比べて少ないなどの課題がある。そこで、公益社団法人とやま観光推進機構は、日本版DMOとして登録を受け、県全域をマネジメントエリアとして、いかに観光客を富山に呼び込み、留まってもらうかという課題に対して、官民一体となって観光振興を推進している。
   本県においても、全県が一体となった広域観光の推進に取り組んでいることから、同機構の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。

【調査内容】

   富山県では、北陸新幹線の開業や訪日外国人観光客の急増により観光交流が拡大している。人口減少が進行する中、地域の活力を維持するためには交流人口の拡大が欠かせないことから、これを一層推し進めることにより、地域経済の活性化を目指している。
   これまでの観光地域づくりでは、関係者の巻き込みやデータの収集・分析、民間的手法の導入等が不十分であったことから、観光地域のかじ取り役として公益社団法人とやま観光推進機構を富山県DMOとして設立した。
   同機構の取組は、旅行者データの収集・分析として、富山県立大学と共同でのウェブアンケートや、富山県を訪れた外国人や日本橋とやま館来館者を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、初めて来県する旅行者の割合は、首都圏が高く、20~30代が多い。関西圏、中部圏はリピーターが多く、「食」に関心が高いことが分かった。そこで今後は、首都圏では初回層を取り込むためのプロモーションに力を入れ、関西圏、中部圏では「食」にスポットを当てたプロモーションする必要があるとの分析を行った。
   また、観光資源の磨き上げとして、魚津市において同市の若手料理人と連携した「魚津の食」のブランド化を推進しているほか、富山県鮨商生活衛生同業組合と「富山湾鮨」による誘客キャンペーンを実施するなど様々な取組を行っている。
   ほかにも、旅行商品の造成を旅行会社に委託したり、「地鉄電車の車庫見学」など機構独自の旅行商品の企画・販売も行っている。
   これらの取組、商品をウェブやSNSを活用してプロモーションするなど、DMOとして多面的な展開を進めているとのことであった。
   委員からは、「旅行商品の造成を業者と機構が行っているが、どのようにすみ分けているのか」との質問に対し、「着地型商品など、儲からない商品は機構が中心に行っている」との回答があった。
   今回の視察は、本県の全県が一体となった広域観光の推進をしていく上で、大変参考となるものであった。

(4) 株式会社不二越 富山事業所

   (協働ロボット開発の取組について)

【調査目的】

   株式会社不二越は、富山市発祥の工具、工作機械、ロボット、ベアリング製造メーカーである。産業用ロボット事業については、昭和44年にいち早く参入した先駆者であり、世界シェア第6位を誇る。近年は超小型・協働ロボットの市場に参入し、事業拡大を進めている。
   ロボット技術は、今後様々な分野において人手不足の解消や社会問題の解決のツールとして期待されており、本県においても、その開発・事業化の支援が課題となっていることから、同社を調査し、今後の施策推進の参考とする。

 【調査内容】

   株式会社不二越は、昭和3年、当時ほとんど輸入に頼っていた機械工具の国産化を目指して井村荒喜により創立された。社名の「不二」は仏典の「善悪不二、邪正一如」あるいは「迷悟不二」に由来する。これは、現象として反対に見えるものもより高い次元に立って本質を深く見極めれば、もともと一つのものであるとの意味で、これを創業の精神としており、その精神は現在も息づいているとのことである。なお、「越」は北陸の古い呼称「高志」に由来するとのことである。
   同社は、機械等の製造とともに、材料の開発、生産も強みとしており、製品を製造する際、その能力に合った材料を自社で調達できるとのことである。特にベアリング分野でその強みを発揮し、東海道新幹線開業に向けて車両が開発された際、高性能のベアリングの製造を担ったのが同社である。現在も多くの新幹線で採用されており、北陸新幹線の車両にも同社のベアリングが採用されているとのことである。
   同社は、日本の産業発展の歴史と共に歩んできており、昭和44年に産業用ロボット事業を開始した。中でも、自動車・鉄鋼業界の溶接作業等の分野の産業用ロボット製造に強いとのことである。産業用ロボット市場は、海外で拡大しており、今後もアジアを中心に、ますます拡大が見込まれるが、国内については、活用領域の拡大が進んでいる。技術革新による安全性の向上や小型化、低価格化が可能となり、生産性の向上、人手不足の解消に資する超小型ロボット、協働ロボット市場の拡大が期待されることから、同社も平成30年に協働ロボットを市場投入したとのことである。
   協働ロボットは、ものづくりの現場における、人件費の高騰や人手不足の解消、生産性向上などを目的に導入が本格化している。これまで大企業が中心であったが、中小企業の手作業に頼っていた工程での少人化を進めるため、人との協働作業が可能なロボットの導入が進んでいる。特徴としては、人との接触を検出して、安全に停止する機能を持つほか、あらゆるポジションにおいて、アームの間に指が挟まらない本質安全設計で、安全柵なしで人との協働作業が可能となっているものである。
   概要説明を受けた後、製品やロボットの展示場を視察した。協働ロボットは、安全性への配慮から、どうしても作業スピードが遅くなってしまうため、安全で作業性の高いロボットの開発が課題であるとのことであった。
   今回の視察は、本県のロボットの開発・事業化の支援に係る施策を実施していく上で、大変参考となるものであった。

産労_不二越にて

不二越にて

お問い合わせ

議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4922

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?