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掲載日:2023年5月23日
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平成29年5月31日(水曜日)~6月2日(金曜日)
(1) (地独)山口県立病院機構(防府市)
(2) 深川養鶏農業協同組合(長門市)
(3) (福)松涛会 フロイデ彦島(下関市)
(4) 沢井製薬(株)九州工場(飯塚市)
(県立病院の地方独立行政法人化について)
山口県立病院機構は、大きく変貌する医療制度の中で、県民の医療需要に応じ、時代に即した医療を安全、かつ効率的に提供するために、その運営を柔軟、適切、効果的に行う目的で、平成23年4月に山口県立総合医療センターと山口県立こころの医療センターが地方独立行政法人化して設立された。以降、同機構が運営する2病院は、高度急性期・専門医療及び精神医療を担う県の基幹病院として、新生児集中治療室やハイケアユニットなどの基盤整備を進め、救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、児童・思春期精神科専門医療等に対応するなど医療の充実に努めている。
本県においても、病院事業の経営改善を推進していることから、同機構の取組を調査し、病院事業の効率的な経営手法のための参考とする。また、同機構及び山口県立総合医療センターの取組を調査し、本県の医療従事者の育成及び確保のための施策の参考とする。
山口県立病院機構は、時代に即した安全かつ効率的な医療を提供するために、柔軟、適切、効果的な病院運営を行う目的で、平成23年4月に2つの県立病院が地方独立行政法人化して設立され、今年で7年目を迎えた。
地方独立行政法人に運営が移行した、山口県立総合医療センターは、昭和24年4月に防府市車塚所在日本医療団山口中央病院を同団解散により県が買収し、山口県立防府総合病院として発足した。以降、高度急性期・専門医療を担う県の基幹病院として基盤整備を進め、医療の充実に努めている。同センターは、地方独立行政法人化後の昨年末の病棟再編により、消化器病センター、脳・神経疾患センター、心臓病センターの3つの臓器・疾患別センターを新たに設置し、本年1月から、内科における診断・治療から外科の手術まで、患者への一貫した入院治療が病棟を変えず対応できることになった。既存の人工関節センター、手外科センターや、新設の地域包括ケア病棟とともに、新たな病棟機能が稼働し、地方独立行政法人化によって一層質の高い医療が提供できるようになった。
また、県立の高度急性期病院として総合周産期母子医療センター、救命救急センターを擁し、地域医療支援病院、へき地医療支援センター、基幹災害拠点病院、第一種・第二種感染症センターなどの機能も備えている。
さらに、地方独立行政法人化後には総合周産期母子健康センター、救命救急センター、集中治療室などの増床や薬剤師、臨床工学職員、リハビリテーション技士の大幅増員などの院内整備を進めた。
現在、医療の充実を図るべく、外来待ち時間5分間プロジェクトなど、業務改善プロジェクトを推進している。看護体制整備では、医療材料管理を業務委託し、在庫管理を業者が行って病院は使った分だけ補充、支払いをするいわゆる置き薬方式のSPDシステムの導入や入退院時の患者情報を入退院支援センターに任せるなど、業務の省力化や効率化を図りつつ、看護師の職場復帰を支援するe-ラーニングによる看護師教育システムの整備、保育所の設置、宿舎整備などにより勤務環境の改善を進めている。
概要説明を受けた後、活発な質問が行われた。その中で、「独立行政法人化のメリット、デメリットは何か」との質問に対し、「メリットは、雇用がある程度自由になり、適切な配置ができたこと。デメリットは、経営の自由度は上がるが、その分、経営を学ばなければならないことである」との回答があった。このほか、経営状況などについて活発な質疑がなされた。その後、同センターを視察した。
今回の視察は、本県の病院事業の経営改善を推進していく上で、大変参考となるものであった。
(地独)山口県立病院機構にて
(食品の安全性の確保について)
深川養鶏農業協同組合は、肉用鶏専門の農業協同組合で、自然に近い環境で育てる「長州どり」、地鶏最高品種でやまぐちブランドに登録されている「長州黒かしわ」などを生産している。衛生管理については、県のやまぐち衛生ジャンプ事業所制度に届け出ており、従来型衛生管理に加え、衛生管理手順の文書化、記録を行い、HACCP導入のステップアップを目指している。種鶏の育成から製造、流通まで一貫管理体制の下、衛生管理部門に独立した権限を持たせることにより、徹底した衛生管理を行うとともに、従業員の衛生管理意識の向上を図り、食品の安全性を確保している。
本県においても、食の安全・安心の確保対策を行っていることから、同組合の取組を調査し、食品衛生施策推進のための参考とする。
深川養鶏農業協同組合は、肉用鶏専門の農業協同組合で、戦前に鶏卵生産農家が集まって発足した。戦後の食料難の時期には、動物性たんぱく質の供給を目的として、鶏肉生産に取り組み始めた。長門市は古くからかまぼこ生産が盛んで、鶏の餌となる魚のアラが安く潤沢に手に入るという環境も手伝い、組合も成長してきた。現在、同組合は主に、ブロイラーの生産及び加工事業、製菓事業、販売事業を行っている。協同組合という組織のため、地域とは深い絆で結ばれており、これを組織運営の上での強みとしているという。
商品としては、自然に近い環境で育てる「長州どり」、地鶏最高品種でやまぐちブランドに登録されている「長州黒かしわ」の生産、また、製菓事業として有精卵を使用した菓子を製造し、商品はオンラインショップでも広く販売している。
加工事業では、主に国内の需要に応えるため、衛生的な環境の下、鶏肉を使用した加工品を製造している。鶏肉加工品の中でも比較的需要が大きい、鶏の唐揚げやチキン南蛮、クリスマスシーズンのローストチキンレッグなど、一般的に流通している商品の製造や、鶏がらを使用したチキンスープといった、鶏の生産事業者ならではの事業も行っている。また、国内工場では数少ない過熱蒸気焼成機を備えており、加熱時の油脂酸化の抑制、ビタミン破壊の抑制ができ、外観に大きな変化を与えず殺菌効果もあることから、高品質な加工品が製造できるラインとなっている。
衛生管理については、県のやまぐち衛生ジャンプ事業所制度に届け出ており、器具類の洗浄・消毒、冷蔵庫の管理、従事者の手洗いなどの従来型衛生管理に加え、衛生管理手順の文書化、記録を行い、HACCP導入のステップアップを目指している。また、同組合は一貫管理体制を整えており、ひよこを育てる契約農家への指導の徹底や自家配送車両の配置にも取り組んでいる。鶏肉や加工食品は全国に出荷されているが、一貫管理体制により品質が安定したことに加え、生産量が安定したことが顧客に高く評価されているという。さらに、同組合では、食品衛生の専門知識を有する人材を集めた品質管理の部門を設けている。この部門に独立した権限を与え、品質検査、衛生的な行程への改善、従業員教育による衛生管理意識の向上を行わせることで、食品の安全性を確保している。
概要説明を受けた後、検査方法や生産農場の衛生管理などについて活発な質疑がなされた。その後、鶏肉加工場及び製菓工場を視察した。
今回の視察は、本県の食の安全・安心の確保対策を行う上で、大変参考となるものであった。
(要介護度改善の取組について)
(福)松涛会が運営するフロイデ彦島は、ケアハウス、グループホーム、デイサービスセンター、ホームヘルパーステーションからなる複合社会福祉施設で、特徴として、これまでの介護福祉施設のイメージをくつがえす設計により、建築業協会賞、日本医療福祉建築賞を受賞している。景観を楽しむスペースの設置や100点以上の絵画を様々な場所に設置するなど、入居者が自然と歩きたくなる工夫を行い、日常生活の動きを利用するリハビリにより利用者の要介護度を改善する取組を行っている。また、地域住民の避難場所となる防災拠点型地域交流スペースを設けるなど地域貢献も評価されている。
本県においても、要介護度改善の取組を支援していることから、同施設の取組を調査し、本県の高齢者福祉推進の参考とする。
山口県下関市にある医療法人・社会福祉法人からなる松涛会グループは、「医療・介護・福祉の連携により地域社会に貢献する」ことを理念に掲げ、地域に根ざしたサービスを提供してきた。地域のニーズに合わせて、医療・介護福祉サービスを中心に56事業を総合的に展開し、下関市における地域包括ケアシステムの一翼を担っている。また、運営する施設においては、「癒しと安らぎの環境づくり」をコンセプトに取り組んできたという。
平成17年10月に(福)松涛会が開設した「フロイデ彦島」は、これまでの介護福祉施設のイメージをくつがえす施設設計が評価され、建築業協会賞や日本医療福祉建築賞を受賞した。特に、日本を代表する建物に贈られる建築業協会賞を介護福祉施設が受賞したことは快挙であるという。
「フロイデ彦島」は、関門海峡を見下ろす丘陵地にあり、心豊かな生活を送るにはすばらしい景観が楽しめる絶好のロケーションにある。対岸は福岡県北九州市で、近年、夜景スポットとして人気の高い工場群を望むこともできる。複合施設である同施設は、ケアハウス、グループホーム、デイサービス、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所、防災拠点型地域交流スペースを併設。敷地面積は約4,000平方メートル。ケアハウス・グループホームは開設から常に満室となっており、入居者の家族が東京都など遠方に住んでいるケースが多いことも特徴であるという。
施設の構造は壁面で建物を支える壁構造を採用しており、柱や梁がないことでゆとりのあるスペースを確保している。天井が高く廊下も広い圧迫感のない造りは、スタッフにとっても余裕を持って業務に取り組むことにつながっている。また、壁一面に大きな窓を多く用いているほか、建物内に自然光を採り入れるために光庭と呼ばれる中庭を設置しており、日中は照明を使用しなくても優しい自然光がふんだんに差し込む。4か所ある光庭はそれぞれに趣の異なる植栽がされており、見た目にも美しい造りである。広い施設内には景色を楽しむポイントがたくさんあるほか、120点に及ぶ絵画が至る所に飾られ、利用者がその場所まで歩いていくので、自然なリハビリが期待できる。入居時には歩行器を使用していた方が、1年後には歩行器なしで歩けるようになり要介護度が改善し、自宅に帰られたというケースもあるという。また、施設は地域住民へ全面開放しているほか、全国からの視察・見学も積極的に受け入れており、年間1,000人もの見学者が訪れるという。
概要説明を受けた後、事業所ごとの入所期間や生活の質の向上などについて活発な質疑がなされた。その後、施設内を視察した。
今回の視察は、本県の要介護度の改善や質の高い医療・福祉サービスの提供を推進していく上で、大変参考となるものであった。
(福)松涛会フロイデ彦島にて
(ジェネリック医薬品の安定供給について)
沢井製薬(株)は、ジェネリック医薬品の国内シェア第1位、売上高国内第2位の製薬会社である。全国7工場で製造されるジェネリック医薬品は、全国の約10万の病院、医院・診療所、保険薬局で採用されている。同社は日経ドラッグインフォメーションが実施した、薬剤師を対象とした調査である「後発品企業ランキング」において、万全な安定供給体制が評価され、調査開始から6年連続で1位に選ばれている。
本県においても、ジェネリック医薬品の使用を促進し、平成33年度末までにジェネリック医薬品の県内数量シェアを80%以上とするための施策を行っていることから同社の取組を調査し、本県のジェネリック医薬品使用促進のための施策の参考とする。
沢井製薬(株)は、昭和4年に創業した製薬会社で、生活習慣病といわれる高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の治療薬、抗がん剤など、医療用医薬品約700品目及び一般用医薬品を製造販売している。ジェネリック医薬品の国内シェア第1位、売上高国内第2位の製薬会社である。鹿島工場、関東工場、大阪工場、三田工場、三田西工場、九州工場、第二九州工場の7工場で製造されるジェネリック医薬品は、国立病院など全国約7,800病院、医院・診療所約34,000か所、保険薬局約55,000局で採用されている。
同社の九州工場は、福岡県のほぼ中央、飯塚市にある潤野工業団地内にある。敷地面積は70,300平方メートルで、工場延床面積は22,277平方メートル。従業員は358名である。同工場は、昭和56年の操業開始以来、医薬品の製造及び品質管理に関する基準であるGMPに適合する、業界トップレベルの清浄度かつ効率的な工場を目指してきたという。生産剤形は、注射剤、錠剤、カプセル剤、外用剤で約250種類を製造している。中でも軟こうやクリームの外用剤は同社の中でも九州工場のみで生産しているという。
ジェネリック医薬品のメリットは、錠剤が服用しやすいように小さくすることや、苦みを抑えるためにコーティングするなど製造工程での工夫が容易であることもあるが、最大のメリットは、新薬の開発期間が9年から17年であるのに比べ、ジェネリック医薬品は3年から5年といわれ、開発期間が短いため価格を抑えることである。現在、日本でのジェネリック医薬品の普及率は65.1%であるが、海外では普及率が高く、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどの医療先進国では70%を超え、中には90%以上という国もあるという。これらの国のジェネリック医薬品の普及率が高い理由は、以前から医療費の節減が課題となっていたことである。日本でも、高齢化などで増え続ける医療費を抑制する必要があることから、厚生労働省ではこれまでの目標を半年前倒しして平成32年の9月までに普及率を80%以上にするとしている。
概要説明を受けた後、活発な質問が行われた。その中で、「ジェネリック医薬品と先発薬との品質同一性についてはどう計測するのか」との質問に対し、「同等性試験を行う。先発薬と後発薬を20人が実際に服用して採血後の成分血中濃度を測る。さらに、人を入れ替え再度測る」との回答があった。このほか、今後のシェア見込みや製薬会社間の市場競争などについて活発な質問がなされた。その後、工場生産ラインを視察した。
今回の視察は、本県のジェネリック医薬品の使用促進のための施策を推進していく上で、大変参考となるものであった。
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