福祉保健医療委員会視察報告
調査日
令和6年11月18日(月曜日)~19日(火曜日)
調査先
(1)茨城県高次脳機能障害支援センター(茨城県阿見町)
(2)ふくしま医療機器開発支援センター(福島県郡山市)
調査の概要
(1)茨城県高次脳機能障害支援センター
(高次脳機能障害者への支援について)
【調査目的】
■本県の課題
- 高次脳機能障害は、周囲の理解不足や社会参加が難しいなど様々な課題があり、自立・生活に対する支援は急務である。
■視察先の概要と特色
- 相談・技術支援、普及・啓発、研修、地域ネットワーク構築の四つを中心に事業展開している。当事者、家族、支援者及び支援機関の抱える問題全体に対応する包括的支援を継続的かつ有効的にコーディネートし、専門機関として評価・検討し、最適な支援へとつないでいる。
- 茨城県独自の支援を行い、相談者のニーズに応じて現場に赴き、その状況や視点に基づいて、専門的な見立てをし、支援の対象者が主体的に問題を解決できるサポートを展開している。
- 地域において適切な支援が受けられるよう、県内全域に地域支援拠点病院、支援協力病院を設置し、各地域の支援ネットワーク体制の構築・連携の充実を図っている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 当初、県立リハビリテーションセンター内に高次脳機能障害支援拠点を設置したが、センターの廃止に伴い、現在の県立医療大学の敷地内に単独の施設として設置された。県福祉部障害福祉課に所属する、全国でも数少ない自治体直属の支援拠点である。
- 相談件数は年1,300件ほどで、40代から50代の働き盛りの男性からの相談が半数を占め、就労や復職、問題行動や家族関係に関するものが多い。自動車運転ができないことに係る相談も多く、令和元年度より理学療法士などが参加する再運転を支援するための連絡・研究会の開催やガイドブックの作成などにも取り組んでいる。令和6年度からは、茨城県指定自動車教習所協会と共同で、運転再開支援講習の仕組み作りに努めている。県が主導で支援を行う珍しい事例である。
- また、直接患者本人や家族に会って支援するために職員が出向く、アウトリーチ型の県独自の「モバイル型支援」も行っており、令和5年度は延べ169件の訪問を行なった。
- 支援ネットワーク体制を強化するため、診断の実施や適切な支援を行うことを目的とする高次脳機能障害支援協力病院について、職員が医療機関に随時訪問し事業説明を行っており、令和6年度現在35医療機関が指定を受けている。協力病院担当者会議や各種研修、会議に出席し連携を密に図るなど支援体制を構築し、連携件数も増加傾向にある。
■質疑応答
Q:茨城県としてここまで精力的に取り組んでいるのはなぜか。
A:患者数は把握できていないが、困っている方が多くいるということは把握している。本県においては、県立リハビリテーションセンターの廃止によりノウハウを持った職員が当センターに配属されたこと、また、他県では兼任が多いと聞くが、専任の職員が多いことなどが重なった結果が今につながっていると考える。
Q:「モバイル型支援」の対象や流れはどういったものか。
A:遠方に在住でセンターに来られない方や直接会ってお話する方が望ましい場合に、現場に赴いて相談などを行っている。相談後も、支援機関につなげる際に同行したり、支援機関等の担当者会議に出席するなど幅広く対応している。

茨城県高次脳機能障害支援センターにて
(2)ふくしま医療機器開発支援センター
(医療人材の育成について)
【調査目的】
■本県の課題
- 本県は、県民10万人対の医師、看護師数が全国的に低く、また急速に進む高齢化等に対応し安定した医療を提供するためには、医療人材の育成、確保は喫緊の課題である。
■視察先の概要と特色
- 福島県は国内有数の医療機器生産県であり、平成28年に医療関連産業集積拠点施設として同センターを整備した。現在、(一財)ふくしま医療機器産業推進機構が運営している。
- 国際基準に準拠した施設で行う安全性試験や、産学官、医工連携などのマッチング、薬事・保険相談・製品のユーザー評価に対応するコンサルティング、人材育成・トレーニングの四つの機能を主軸においた支援を行っている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 福島県は、医療産業で世界規模の6企業の製造拠点施設があるほか、複数の医薬品及び医療機器の製造拠点が立地しており、医療機械器具の部品や付属品等の出荷額は13年連続全国1位と、日本有数の医療機器の生産県である。同センターは医療関連産業集積拠点として県が整備し、全国の企業や研究機関等の製品試験の受託やコンサルティング、県外と県内の企業のマッチングを図るなど福島県の産業振興に努めるほか、東日本をリードする拠点として医療機器産業を牽引している。
- 平成17年から、医療機器設計開発・製造関連の展示会「メディカルクリエーションふくしま」を開催しており、令和6年は255企業・団体の出展、約4,100人が参加した。学会レベルのディスカッション、学生を対象とした創生アイデアコンテストなど、人材育成からマッチングまで様々な活動が行われ、地方最大規模の展示会として年々規模が拡大している。
- また、若手の人材育成として、毎年県内の高校生を対象としたフィールドワークを実施しており、医師等が使用するのと同じシミュレーターを使った体験の機会を提供したり、子供から大人までを対象とするイベントを開催したりすることで、医療機器を造る人と、それを使う側の医療人の育成を両立させ、地元への就職・定着に資する取組を行っている。
■質疑応答
Q:フィールドワークは人気事業とのことだが受入れを拡大する予定はあるのか。また、人材育成事業に参加した学生等の進路や就業などは確認しているのか。
A:拡充したいところだが、研修や試験などの業務があるため難しい。参加者の進路は確認していないが、医療系の進路を検討している学生が参加しているため、将来の選択の一助となればよいと考えている。
Q:施設の運営経費はどのようになっているのか。
A:試験等に係る部分と展示会等プロモーションの大きく二つに分かれ、それぞれ2億円程度である。長期に渡る試験もあり、電気代や維持費用が大きくかかるものもある。また、コンサルティングやマッチングは利益が出るものではなく、公設民営施設の公益部分として県の産業振興という観点を基本として運営している。
Q:今後どのように医療産業振興を進めていくのか。
A:日本企業は、海外企業に比べ資金が少ないなど競争は厳しいが、その品質の高さや安定供給などメイドインジャパンの信頼、強みもあり、領域によっては内視鏡のように勝るものもある。日本がリードするためにもアンテナを高く持つ必要があり、社長塾など企業のトップから意識を変える取組も行なっている。