福祉保健医療委員会視察報告
調査日
令和6年5月28日(火曜日)~29日(水曜日)
調査先
(1)名古屋大学医学部附属病院(愛知県名古屋市)
(2)てんぱくプレーパーク(愛知県名古屋市)
調査の概要
(1)名古屋大学医学部附属病院
(看護人材の確保及び離職防止の取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 高齢化による医療、介護ニーズの高まりに対応するため、看護人材の確保、定着は重要であり、対策が求められる。
■視察先の概要と特色
- 同病院は、実稼働病床数984床を有し、1日の平均入院患者数は約730人、平均外来患者数は2,000人を超えるなど、地域の基幹病院、特定機能病院として機能を発揮している。診療体制の確保のため1,000人を超える看護師(看護助手を含む)が在籍しており、その人材確保、定着は長年の課題であり、様々な取組を行っている。
- 電子カルテ、職員の業務状況等を確認し効率化を図るシステムの導入などICTを活用するほか、看護補助者の配置や多くの職種のスタッフとの連携、職員に応じた働き方改革などのソフト面による負担軽減など、処遇改善計画も立て多方面から取り組んでいる。
- また、産学連携による協同研究や、多目的ロボットの病院運用の実証実験など、「名大病院スマートホスピタル構想」を掲げ、メディカルITセンターを中心として先進技術やICTを活用した病院内の効率化、安全で安心な医療を提供する取組を始めている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同病院では、看護人材の確保のため、SNS等を活用した広報活動や、受験者の負担を軽減するためのWEB面接を導入し、県内外からの採用などに効果を得ている。また、働く雰囲気を良くし心理的安全性を担保するため、師長のグループワークなどを実践するようにしており、見学会においても雰囲気の良さを感じ、就職につながっている。
- 看護体制においては、安全で質の高い看護を提供することを目的に、二人一組で看護ケアや病棟内の仕事等に取り組む独自のものを取り入れており、お互いの特性を生かし協力し合い補完することで、業務的、心理的負担の軽減につながっている。
- 教育にも力を入れており、命を救うSaving lifeナース、看護管理者の育成や看護師特定行為研修講座の開催など、キャリアに合わせた支援を行っている。
- 「患者安全ポケットガイド」というマニュアルを作成しており、緊急時や、現場で働いていて困った時に読めば対応できる内容となっている。患者の安全はもとより、組織が職員を守るためのものとなっており、安心して働ける病院づくりに取り組んでいる。
- 同病院メディカルITセンターと協同し、医療DXにも取り組んでいる。SICUでは、業務動線や看護行動を確認する位置測位システムを導入し、業務状況や内容の把握と可視化を行っている。記録業務が業務の35%と多くを占めるため、業務負担軽減や本来業務のケアを行える環境づくり、看護師の行動認識モデルの構築につなげている。
■質疑応答
Q:離職はどのような理由が多く、どのような対応をしているのか。
A:メンタル面、身体、ステップアップという離職理由が多い。産業医やリエゾン看護師、キャリアコンサルタントなど活用をしながら面談を行い、メンタル面での問題やキャリアへの不安を解消するようにしている。
Q:心理的安全性の確保のため、具体的にどのような対応を行っているのか。
A:働きやすい職場環境を整え心理的安全を担保するため、超過勤務対策や業務の効率化などについてバランススコアカードによる目標管理を実践している。昨年度から、意見を言いやすい職場作りを行っており、各部署で話し合い各部署に合った対策を立てて取り組み、良い結果が出ている。
(2)てんぱくプレーパーク
(こどもへの支援について)
【調査目的】
■本県の課題
- こどもが安心・安全に過ごせるよう、居場所の確保・充実、地域全体でこどもを育てる社会の構築が急務である。
■視察先の概要と特色
- 同施設は、名古屋市の天白公園内に、全国的にも珍しい常設のプレーパークとして平成10年に開園した。NPO法人「てんぱくプレーパークの会」が地域住民を中心に民営民設で運営を行っている。
- 開園時には、「プレーワーカー」の大人が常駐しているが、指示等はせずにこどもたちを見守る存在で、木登りや火起こし、泥遊びなど、こどもたちは自分の責任で自由に遊び過ごしている。また、こどもたちが企画・運営する事業では、こどもミーティングを行い活動内容を決めるなど、活動の中心となり自分たちの力で事業を進めている。
- 自然環境を生かした、こどもから大人までを対象にした様々な企画を行うほか、学校に行きたくないなどと感じるこどもとその親に寄り添った事業も開催するなど、開かれたこどもたちの居場所、また住民の地域活動への参加の場となっている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同施設は、助成金、寄付、自主事業収入を3本柱に、200万円から300万円の予算規模で運営されている。コロナ禍前は3本柱でバランスよく運営されていたが、コロナ禍を経て参加者の減少による事業収入の減少などバランスが崩れ、助成金も少額であるなど厳しい状況にある。今後の運営継続が危ぶまれるが、会費や寄付等に支えられ活動を継続している。
- 平日の利用は未就学児が多いが、放課後や土日など小中高生も多く遊びにきており幅広い年齢のこどもの居場所となっている。また、近隣のこどもたちだけでなく、不登校の子などを対象にした事業では、親子が外出や交流の機会と捉え、遠方から参加する方もいる。
- 継続して開園しこどもたちと毎日顔を合せることで、家庭のことや学校のことなど、こどもたちから自然と様々な話を聞くことができる。こどもを取り巻く状況を知ることができる環境となっており、支援につなげたり、虐待を予防するなど、福祉行政の窓口の機能も有している。誰もが無料で利用できる施設であることからも、多くのこどもの安心、安全の場としての役割も果たしている。
■質疑応答
Q:プレーワーカーは資格などがあるのか、また、どのような方が働いているのか。
A:資格はない。NPO法人日本冒険遊び場づくり協会などにおいて、研修等が整備されていくのではないかと思われる。採用は新聞等に広告を掲載して募集を掛けたり、人材を紹介してもらうなどしている。現在は、フリースクールでの勤務経験のある方などが活躍されている。
Q:民設民営で行うことでのメリット、デメリットは何か。
A:縛りがなく、住民、参加者との話合いにより問題、課題を解決できる点がメリットである。自分の責任で自由に遊べる環境を確保するためにも重要である。デメリットは能力のあるワーカーの確保が難しい点で、確保したとしても能力に見合った賃金が払えないため辞めざるを得ないという現状がある。こうした評価されづらい環境にあることは、こどもを育てる地域社会の弱さにつながっていくと考える。
てんぱくプレーパークにて