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掲載日:2023年11月27日
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令和5年8月23日(水曜日)~24日(木曜日)
(1)山形市南部児童遊戯施設(山形県山形市)
(2)フィリップス・ジャパン仙台営業所(宮城県仙台市)
(3)公立大学法人宮城大学 大和キャンパス(宮城県黒川郡大和町)
(インクルーシブ児童遊戯施設について)
本県において、少子化が進む中、更なる子育て支援、児童福祉の推進が課題となっている。
山形市南部児童遊戯施設は、インクルーシブに配慮した遊具などを備え、子育て支援センター、食育カフェなどを併設する屋内型児童遊戯施設である。
同施設を調査することにより、本県における子育て支援、児童福祉推進の参考とする。
山形市南部児童遊戯施設、愛称「シェルター インクルーシブプレイス コパル」は、平成27年度に策定された「山形市発展計画」に基づき、 新たな子育て拠点として令和4年4月に開所した。同市の屋内型の児童遊戯施設としては、市内北部に整備された「べにっこひろば」に続く二つ目の施設となる。
大型遊戯場、体育館、食育カフェ、子育て相談コーナーなどを備えた屋内施設に加え、屋外には、親水広場などのスペースのほか、日本で初めて導入された車いす用ブランコなどの遊具を備える。施設全体の規模は、敷地面積22,295平方メートル、建築面積3,334平方メートル、延床面積3,175平方メートルとなる。
整備は、PFI法に基づく事業としてBTO方式で実施された。複数の民間企業が出資して設立した特定目的会社「(株)夢の公園」が設計、建設から、運営、維持管理まで一括で行う。総事業費は約38億5,600万円、年間の運営・維持管理費は約8,500万円である。
利用対象者は、児童とその保護者で、利用料は無料である。また、居住地による制限はなく、市外、県外、海外の方も利用できる。利用者数は、年間15万人を想定しており、コロナによる利用制限があった中、令和5年7月現在の利用者数は20万人を突破している。
施設は、全てが公園のような建築となることを全体のコンセプトとしている。世代の異なる子供たちの居場所を緩やかにゾーニングすることで、それぞれの身体能力に合わせて遊ぶエリアを選ぶことができるなど、子供の遊びたい、試してみたいという気持ちを触発する空間づくりをしている。
また、例えば、幅が広いスロープは、車いすの人だけでなく、健常児にとっても走りたくなるようなデザインとするなど誰もが一緒に遊べる仕掛けを作っている。障害のある一個人をサポートするアイデアが、そのほかの人にとっても遊びや学びにつながるようにデザインされている。バリアを解消するためのものが、新しい遊びや学びのきっかけとなるよう一人ひとりの個性と組み合わせて考えることで、建築の慣習 的な要素の一つ一つを根本的に見直すことができたとのことである。
概要説明及び施設見学後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「このような大胆な発想の施設ができた背景は何か」との質問に対し「運営企業の中に、スポーツクラブや障害者施設といった立場が異なるメンバーがいた。インクルーシブというものを探る過程で、それぞれの立場からの意見をお互いに理解しようと努めた点にあるのではないか」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県における子育て支援、児童福祉の推進の大変参考となるものであった。
山形市南部児童遊戯施設にて
(ヘルスケア領域におけるICT等の活用について)
本県において、健康増進のため、デジタル技術やビックデータを活用することで、県民の行動変容を促すことが課題となっている。
フィリップスは、オランダに本拠を置き、医療機器、医療用ソフトウェア等の販売・開発・保守及びこれらに関連するコンサルティング業務などを行う多国籍企業である。
ヘルステックカンパニーを標榜する同社では、日本における地域の健康課題に着目し、仙台市ヘルステック推進事業をはじめとして、自治体、企業、大学病院などと協同で課題解決を進めるヘルステックコンソーシアム(協動体)を全国各地で行っている。
同社の取組を、本県におけるヘルスケア領域へのICT等の活用の参考とする。
フィリップスの日本法人であるフィリップ ス・ジャパンは、東北地域が、高齢・健康課題国である日本において、特に課題の先進地域であること、東北大学病院をはじめとして健康課題に対する研究が盛んであったことなどから、異業種が集う場所、知を作り出す場所、技術を体感する場所として令和元年5月、日本初となる医療・健康分野のイノベーション拠点「Co-Creation Center(CCC)」を仙台市に設立した。
CCCは、コロナ禍の情勢変化を受けて閉設されたが、同社仙台営業所と統合することで、引き続き、地元企業、東北大学病院、地域自治体との連携を継続している。
仙台市ヘルステック推進事業においては、仙台市と、令和元年度、令和2年度の2期に渡り連携をした。同社は、事務局として、ヘルスケア産業に関する専門的知見を生かし、地元企業の企業マッチング、技術マッチングを行った。
事務局として困難であったことは、抽象的な形として始まる企業の事業を、いかに形作り、事業として結果を出すかという点であった。この点から「学」の重要性を認識し、当初、自治体と民間企業だけの取組であったヘルステック推進事業に、東北大学病院にアドバイサーとして参入していただいたとのことである。
また、他の事例紹介として、自治体や病院と連携したオンライン診療MaaS、病院と連携した遠隔ICUなどがあった。自治体が持っているデータを使って、病院側からどのように患者にリーチしていくのか実証実験を行い、自治体における課題について、フィリップスとして何を解決していくのかということを一緒に作り出していくことが重要とのことであった。
取組の先にある同社が描く未来は、ICTの活用により、一つの病院内におけるデータの一元化から出発したデータ連携が地域レベルまで拡大し、患者を常時モニタリングできる医療体制である。急変した患者へのいち早い対応や予防段階から患者の状態変化に気付けるような体制を実現したいとのことだった。
概要説明後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「診療MaaSなどの実証実験から、どのような課題の発見があったのか」との質問に対し「システムの標準化が課題である。使用している機器のメーカーが異なっていても必要なデータを取り出せることが重要である。そのためには、様々なプレーヤーとエコシステムを組む必要がある」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、本県におけるヘルスケア領域へのICT等の活用に大変参考となるものであった。
(看護人材の育成と地域医療への貢献について)
本県において、急速に進む高齢社会に対応するため、地域医療における看護人材の育成・確保が課題となっている。
宮城大学は、令和5年6月に、地域医療支援病院であるJCHO仙台病院と看護人材の育成や地域医療の発展を目指す包括連携協定を締結した。
また、従前より新任看護職員等の育成を支援する看護人材育成・支援事業を行っているほか、地域特性に根差す看護を実践できる人材育成に取り組んでいる。
同大学の取組を、本県の地域医療における看護人材の育成・確保の参考とする。
宮城県は、人口減少と超高齢化の加速と医療体制の偏在、格差による在宅医療、訪問看護の需要増と医療人材の不足が課題としてある。そこで、宮城大学では、ジェネラリストナースとして遠隔看護スキル及び地域課題解決型看護を提供できる看護専門職の人材育成を行っている。
令和4年度からは、現職の看護師や潜在看護師を対象に、上記人材の育成を目的とした「みやぎテレナース育成プログラム」を実施している。同プログラムでは、e-learningと対面の講義のほか、コンピューター上の仮想地域である「MYUTOWN」を活用した講義と演習を行っている。この仮想地域には、住民の家や、地域のケアセンター、病院、学校などがある。生活環境や様々な施設・資源を含めて、その人らしい健康を維持する看護を考えることができ、学内と臨地での学習を補完する第3の学習の場となっている。「MYU TOWN」を活用することで、遠隔看護コンピテンシーの向上、地域連携・多職種協働スキルの連携、強化などの成果を上げている。
また、同プログラムは、宮城大学だけでは目的を達成できないという認識の下、宮城県看護協会、宮城県をはじめとして他の教育機関、医療機関、自治体、企業などと幅広い連携体制を構築しているのが特徴である。今後は、参画・協力機関の拡大による連携体制の強化及び学部、大学院への教育展開を構想している。
施設においては、シミュレーション学習の拡充を目的として令和4年10月に「スキルスラボ」を開設した。高機能シミュレーターモデル人形4体、各種医療機器などを備え、リアリティのある臨床環境を整えている。これらと「MYU TOWN」を活用することで、フィジカルアセスメント・トレーニング、シナリオ・トレーニングなどを行うことができる。学生のみならず実務に従事している看護師の学び直しに役立つ施設となっている。
JCHO仙台病院との包括連携協定については、地域社会へ健康教育を行うことを目的とするとともに、臨床現場の研究を大学で行うなど により産学連携を一層進めていくとしている。
概要説明後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「都心に集中する傾向がある看護人材を、地方に定着させるために何が必要か」との質問に対し「地方での実習、研修などを通じて、学生段階で地域医療へ関心を持つ経験が必要なのではないか」との回答があった。質疑後、「スキルスラボ」の見学を行い実地での説明を受けた。
今回視察先を調査できたことは、本県の地域医療における看護人材の育成・確保に大変参考となるものであった。
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