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掲載日:2023年5月23日
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平成30年5月23日(水曜日)~25日(金曜日)
(1) ファーマーズマーケットいとまん(糸満市)
(2) (株)御菓子御殿(沖縄県読谷村)
(3) 沖縄電力(株)吉の浦火力発電所(沖縄県中城村)
(4) 漫湖水鳥・湿地センター(豊見城市)
(地域の特徴を生かした地産地消の取組について)
ファーマーズマーケットいとまんは、地産地消を目的とするJAおきなわ初の直売所として平成14年に開業した。その後、平成19年に糸満漁業協同組合お魚センター、平成21年に糸満市物産センター遊食楽が開業し、それらを統合して道の駅いとまんとなっている。商品を提供する生産者は1,334名登録されており、会員になるには、糸満市に耕作地があり沖縄県農業協同組合の正・准会員で、農産物や加工品を自ら生産・製造する者である必要がある。年会費は2,000円である。
同施設の取組や運営方法を視察することにより、本県の地産地消の取組についての参考とする。
ファーマーズマーケットいとまん「うまんちゅ市場」は、平成14年11月に県内初のファーマーズマーケットとしてオープンした。「うまんちゅ市場」の愛称は、広く地域の方々に親しまれることを目的に一般公募し選ばれた。収穫されたばかりの新鮮さ、生産者の顔が見られる安心感、産直の安さが強みである。
同市場について、従業員数は、訪問時点で正規5名、パート51名の計56名であり、営業時間は、午前9時から午後7時、定休日は年4日である。商品を提供する登録会員数は1,334名で、その内訳は、生産者が約1,100名で、加工業者が約200名である。手数料として、農産物で15%、加工品で20%を売上額から徴収している。年間来客数は825,730人で、売上高は15億3,984万4千円(税抜)で全国10位を誇っている。平成28年度の客単価は1,865円(税抜)であった。商品の搬入時間は、1回目が午前6時から8時30分で、2回目が午前11時から午後4時まである。3年前から2回の商品搬入を行っている。このため、視察時は午後の時間帯であったが、商品が十分供給されている様子であった。
同市場がある「道の駅いとまん」は、2.2haの敷地内に、同市場のほか、糸満漁業協同組合の「お魚センター」、障害者就労支援施設の「イノー」、「糸満市物産センター」の4施設で構成されており、農産物、水産物、商工関連商品、飲食等の地元客と観光客への提供と、地域の情報発信基地としての役割を担う施設となっている。管理運営の面では、「道の駅いとまん」は構成4施設の代表者と糸満市を加えた構成員で「道の駅施設管理組合」を設立し、代表者からなる理事で理事会を構成している。4施設の負担金とイベント広場使用料を主な収入として運営費用に充て、糸満市観光協会に運営を委託している。平成27年度には、市の補助を受けて1億円をかけて300坪のアーケードを設置し、3施設をつなぐことで雨天時でも傘なしで移動できるようにした。また、アーケードと同時に糸満市観光協会が入る情報防災館も設置し100名程度が避難できる1次避難所となっている。
4施設は連携してイベントを開催するなどしており、年間280万人の来場客がある。1日平均で約8,000人が足を運んでおり、相乗効果によって各施設の売上げ増加につながっているとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質問が行われた。その中で、「市内・市外どちらからの来客が多いのか」との質問に対し、「6割が市内、4割が市外からの来客で、土日に野菜をまとめ買いする客も多い。業者も購入に来る」との回答があった。また、ほかにも、活発な質問が行われた。質問の後、ファーマーズマーケットいとまん等を見学した。
今回視察先を調査できたことは、地域の特徴を生かした地産地消に関する取組を推進する上で大変参考となるものであった。
(農商工連携及び6次産業化について)
(株)御菓子御殿は、昭和61年から読谷村の村おこし事業に参加し、地元産の紅いもを使用した菓子「紅いもタルト」を開発した会社である。地元自治体や農家と連携して紅いもの品種改良や生産の勉強会を開催し、収穫量の増加を図り、地域の紅いも栽培面積の拡大を実現した。平成20年度に農商工連携88選、平成22年度に農商工連携ベストプラクティス30に選出されたほか、平成26年度に農林水産省食料産業局長賞(6次産業化優良事例)を受賞するなど6次産業化の成功例として取り上げられている。
同社の取組を視察することにより、本県における農商工連携及び6次産業化に係る施策についての参考とする。
(株)御菓子御殿は、創業者である澤岻カズ子氏が経営していたレストランの一角で販売していたアメリカ仕込みのドーナツ、アップルパイなどが人気であったことから、昭和54年に読谷村で菓子屋に転向したことに端を発している。
「紅いもタルト」の誕生は、地元の読谷村商工会の要請を受けて、昭和61年に同村の村おこし事業に参加し、特産品である紅いもを使った菓子の開発に着手することから始まった。開発当時、紅いもの生産者は自家消費程度しか栽培していなかったことから、生産者を1軒1軒訪問しても約10戸の生産者からしか仕入れることができないような状態だった。また、折れた芋や小さな芋が多く、蒸してもすぐ劣化する、害虫であるイモゾウムシ等が入っている、紅いもなのに色が薄いなどの課題も多かったが、何度も試行錯誤を繰り返して、ようやく「紅いもタルト」の開発に成功した。販売当初は、鮮やかな紫色が着色料と間違われるなど苦労もあった。
こうした中、同村役場では、農業試験場で紅いもの品質改良を行い、各農家への技術指導に取り組んだ。地元の農家は、害虫の駆除や歩留まりの向上の努力を続ける一方、同商工会は、県内外への広報活動や物産展でのPRに取り組み、流通・小売への働き掛けを行った。こうして同社を中心に地元自治体、農家、商工会等が連携して、紅いもの生産拡大、商品の加工・製造、販売のPRを行う農商工連携の仕組みが完成した。
このような地道な取組を続ける中、バスガイドやキャビンアテンダントの推薦により、平成7年から5年間、「紅いもタルト」は那覇空港発着便の全ての機内食に採用され、知名度が飛躍的に向上するきっかけとなった。また、販売先として観光客にターゲットを絞り、女性経営者の視点から商品のイラスト入りのエコバックを配布するなど、効果的な宣伝もあいまって、沖縄の土産としての地位を確立した。
同社の紅いもの仕入れ量は、昭和61年の10戸150kgから、平成28年には140戸1,200トンまで拡大している。昭和54年の創業時に4名だった従業員も現在では520名になっている。
同社を中心とした農商工連携の特徴は、農家ではなく加工・販売会社が中心となっていることである。こうした取組が評価されて、平成26年度に農林水産省食料産業局長賞(6次産業化優良事例)を受賞するなど6次産業化の成功例として取り上げられている。
概要説明前に、同社の製造責任者から、紅いもタルトの製造ラインの説明を受け、施設を見学し活発な質問が行われた。
今回視察先を調査できたことは、本県の農商工連携における取組を推進する上で、大変参考となるものであった。
(環境負荷低減に向けた取組について)
沖縄電力(株)は、昭和47年に琉球電力公社の業務を引き継ぎ、政府及び沖縄県の出資する特殊法人として設立され、昭和63年に民営化した電力会社である。沖縄電力の発電設備のほとんどは火力であり、重油による環境負荷が大きい状況となっている。平成24年に営業運転を開始した吉の浦火力発電所は、環境面に配慮したLNGコンバインドサイクル発電システムを採用している。液化天然ガス(LNG)を燃料とした火力発電設備は、硫黄酸化物やばいじんの発生がなく、CO2排出量も化石燃料では最も少ないことが特徴である。また、コンバインドサイクル発電システムは発電効率に優れている。
同社の取組を視察することで、環境負荷低減に向けた事業者への取組を推進する本県の施策の参考とする。
沖縄電力(株)は、東西1,000km、南北400kmに及ぶ広大な海域に点在する大小160の島々で構成される島しょ県である沖縄県全域に電気を安定的に供給する事業活動に取り組んでいる。
同社は、地球温暖化対策として、電気事業全体のCO2排出抑制目標の達成に向けて、最も有力な手段である液化天然ガス(LNG)を燃料とした吉の浦火力発電所の着実な運用等を通して低炭素社会の実現に取り組んでいる。同発電所は、1号機が平成24年に、2号機が平成25年に営業運転を開始した。今年で営業運転6年目であり、同社の最新鋭の主力発電所となっている。
LNGは、天然ガスを液体にしたものであり、主な成分はメタンで色も臭いもない。他の化石燃料と比較して地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が少なく、また、大気汚染や酸性雨の原因となる硫黄酸化物やばいじんが全く排出されないほか、窒素酸化物の排出量も少ないことから、環境に優しいクリーンな燃料として高い評価を得ている。
また、同発電所は、温室効果ガス削減を図ることを目的に、同社で初めてLNGを燃料とするコンバインドサイクル発電方式を導入した。LNGコンバインドサイクル発電とは、LNGの燃焼ガスの力で回すガスタービンと、その排熱をボイラーで回収し蒸気を作り、その力で回す蒸気タービンを組み合わせた熱効率の高い複合発電方式である。エネルギーの無駄が少なく同じ量の燃焼からより多くの電気を作ることが可能で、その結果としてCO2排出量も抑えられる。
概要説明の後、同発電所職員と共にバスに乗車し、LNGタンク、タービン建屋、排熱回収ボイラ及びLNG気化器など主な施設について、解説を受けながら見学した。
今回視察先を調査できたことは、今後の本県における環境負荷低減に向けた事業者への取組を推進する上で、大変参考となるものであった。
沖縄電力(株)吉の浦火力発電所にて
(自然環境の保全と環境教育の推進について)
漫湖は、全国的に有数のシギ・チドリ類の渡来地であり、多くの水鳥等の生息地としても重要であることから、平成11年に全国で11番目のラムサール条約登録湿地になった。漫湖水鳥・湿地センターは、水鳥をはじめとした野生生物の保護と湿地の保全、自然保護のための普及啓発活動、調査研究、環境教育などを行う拠点施設として、更に地域住民が自然に親しみ学ぶ場として、平成15年に環境省が設置した。
同センターの管理運営は、環境省、沖縄県、那覇市、豊見城市の4機関で構成する漫湖水鳥・湿地センター管理運営協議会が行っている。
同センターを視察することにより、本県における自然環境の保全と環境教育に係る施策の参考とする。
漫湖水鳥・湿地センターは、水鳥をはじめとする野生生物の保護と湿地の保全、利用について理解を深めていくための普及啓発活動や調査研究、観察などを行う拠点として設置された施設である。
漫湖は、湖という文字が入っているが湖ではなく、国場川と饒波川の合流地点に形成された河口干潟である。海と同じように潮の満ち引きがあり、満潮になると海の水が漫湖に入り、ほとんどの部分が水の中に沈む一方、干潮になると最大で47haほどの泥の干潟が現れる。那覇市の中心街からほど近く都会の中にある湿地だが、水鳥やカニ類など様々な生き物を観察することができる。全国的にも有数のシギやチドリ類の渡来地であるとともに、多くの水鳥等の生息地としても重要であることから、平成11年5月に全国で11番目のラムサール条約登録湿地となった。登録後は30以上の団体からなる「漫湖自然環境保全連絡協議会」が結成されるなど、漫湖の環境保全に対する関心が高まった。
一方、市街地から近いために生活排水の流入が止まらず水質が悪化するとともに、上流の土地開発などによる土砂の堆積が問題となっていた。さらに、平成の初めに数回にわたってマングローブの植栽が行われ、土砂の堆積とあいまってマングローブ林が拡大することで干潟面積が縮小した。こうした環境の変化を受け、シギやチドリ類の渡来数と種数の減少が続くことになった。同センターが設置された経緯としては、このような状況の下、地域住民が自然に親しみ学ぶ環境教育の場や各種団体の保全活動、環境調査を支援する場が必要だったことがある。
環境省は、平成19年度から水鳥の採餌場である干潟環境の改善のための保全事業として、マングローブ林の一部を試験的に伐採し底生生物の変化、水鳥の動態や飛来数の回復状況を調査している。また、平成21年にマングローブ林試験伐採区の維持管理のため木道や観察デッキを設置した。このほか、同センターには、漫湖でみられる鳥やカニ、魚など、様々な生き物と人との関わりを紹介したビデオを鑑賞できる大型ディスプレイや漫湖の生態系が一目で分かるジオラマが設置されている。
概要説明、ビデオ鑑賞の後、前述の木道を歩きながら、漫湖の現状と生き物についてセンターのスタッフから説明を受けた。
今回視察先を調査できたことは、今後の本県における自然環境の保全と環境教育に関する取組を推進する上で、大変参考となるものであった。
漫湖水鳥・湿地センターにて
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