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掲載日:2023年5月23日

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環境農林委員会視察報告

期日

平成27年8月25日(火)~27日(木)

調査先

 (1) 六ヶ所村次世代エネルギーパーク(青森県六ヶ所村)
 (2) 青森県庁[環境政策課](青森市)
 (3) 秋田県立大学木材高度加工研究所(能代市)
 (4) 秋田県農業試験場(秋田市)

調査の概要

(1)六ヶ所村次世代エネルギーパーク

(再生可能エネルギーの安定的供給について)

【調査目的】

六ヶ所村次世代エネルギーパークは、新エネルギー普及に係る国民の理解を深めるために経済産業省資源・エネルギー庁が全国で推進している「次世代エネルギーパーク」の一つである。同パークには、多くの風力発電施設、太陽光発電施設、トリジェネレーションを用いた花き生産施設、石油備蓄基地、原子燃料サイクル関連施設などエネルギー関連施設が集積している。
また、同パークにある二又風力開発(株)では、風力発電施設と蓄電池を併設することにより、発電量の変動幅が大きい風力発電の弱点を補い、安定性を確保した再生可能エネルギー供給の取組を行っている。
同社の取組を視察することで、本県における再生可能エネルギーの普及に係る施策の参考とする。

【調査内容】

六ヶ所村は、夏には「ヤマセ」と呼ばれる東風が吹き、冬には陸奥湾からの西風が吹く風の村である。豊富な風力資源を背景に村内には92基の風力発電施設が稼働しており、国内の風力発電容量の約5%を占める有数の風力発電立地地域となっている。また、国内最初の国家石油備蓄基地、原子燃料サイクル施設など、様々なエネルギー関連施設が集積する全国的にも珍しい地域である。その特性を生かしつつ、新エネルギーの導入・活用を進めていくため、同村は「地域新エネルギービジョン」を策定し、新エネルギーの「開発」、「利用」、「普及促進」を村の方針として定め、「エネルギーの村、ろっかしょ」を全国に発信している。
「六ヶ所村次世代エネルギーパーク」は、全国から人や産業を呼び込み、村の観光・地域振興に結び付けることを期待し、平成20年6月に資源・エネルギー庁から認定を受けた。同パークでは、各施設の職員から直接説明を受け、次世代のエネルギー技術に実際に触れることができる「体験型情報発信」、過去や現在、未来のエネルギーについて時代背景やエネルギー構造、その移り変わりをたどりながらエネルギーの重要性について理解できる「旧・今・新のエネルギー」、各施設は自立性を維持しつつ、情報、来場者へのサービス提供においては施設間が常に連携する「自立×協調型の事業運営」をコンセプトとしており、インフォメーションセンターを同村商工観光課に設置することで、来訪者は効率よくエネルギーに関する知識を学ぶことができるようになっている。平成22年5月のインフォメーションセンター開設以来、延べ7,900人が来場したとのことである。
同パークに参加する二又風力開発(株)は、世界初の大容量蓄電池併設型風力発電として、34基の大型風車とNAS(ナトリウム硫黄)電池の連携による安定した電源供給を実現している。
NAS電池は、導入に当たってのkw単価が風力発電設備の約2倍程度かかること、設備自体を摂氏300度に保つ必要があるため電力を自家消費するといった課題があるものの、エネルギー密度や効率が高いこと、長期的な耐久性が高いこと、出力の増減に比較的スムーズに対応でき、変動の大きい再生可能エネルギーと組み合わせやすいことといった大きなメリットがあり、風力発電以外の太陽光発電等とも組み合わせることが可能とのことであった。
また、東日本大震災の発災時、同社ではNAS電池を活用したスマートグリッドの実証試験を行っていたため、周辺地域が停電する中、実験中の6棟のみ電力供給を続けることができた。その有用性から役場など村の重要施設についても、NAS電池からの電源供給体制を整えることとなったという。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「風力発電設備や蓄電池に対する補助金等の支援はあるのか」との質問があり、「設備導入当時は、経済産業省からの補助金があった。現在、役場関連等で設置した蓄電池に関しては環境省の補助事業である」との説明があった。
今回視察先を調査できたことは、本県における再生可能エネルギー普及の取組を充実させるために大変参考となるものであった。

(2)青森県庁

(低炭素型交通社会づくりの取組について)

【調査目的】

青森県では平成23年3月に策定した青森県地球温暖化対策推進計画に基づき、持続可能な低炭素社会の実現に向けた施策を推進している。同計画では、再生可能エネルギー、省エネ住宅、森林整備、環境配慮型農業や環境教育といった項目ごとに、リーディングプロジェクト「低炭素あおもりプロジェクト10」を設定している。
運輸部門を対象とした「低炭素型交通普及促進プロジェクト」では、「『低炭素型交通社会づくり』取組事例集」の作成や「低炭素型交通社会づくりセミナー」を開催するなど、交通事業者や市町村等に向けた普及・啓発の取組を行っている。
同県の取組を視察することで、本県における地球温暖化対策に係る施策の参考とする。

【調査内容】

2712環境農林委員会視察報告(1)

青森県庁にて

青森県では、平成23年度から10年間を計画期間とし、平成2年度比で25%の温室効果ガス排出量の削減を目指す「青森県地球温暖化対策推進計画」を策定した。平成24年度の同県の温室効果ガス排出量は、約1,606万t-CO2で、基準年度比16.6%の増加となっている。東日本大震災以降の火力発電の増加という外的な影響が大きいことから、同計画の目標値については、国等の動向を見極めながら今後見直す予定とのことである。
同県は、同計画に基づき、「あおもりエコの環スマイルプロジェクト」として、県民、事業者、学校・団体それぞれが相互に連携・協力しながら地域全体のエコに取り組んでいる。県民に対してはエコ活動に取り組むことを宣言して「モッテコーカード」を取得すると、協力店で特典が得られる仕組みを構築している。事業者に対しては環境に配慮した取組を行う事業所を「あおもりECOにこオフィス」、店舗を「あおもりECOにこショップ」に認定し、ステッカーの配布や表彰を行っている。中小事業者に対しては、事業者の省エネ対策の理解不足が背景にあると見て事業者に省エネ専門家をチームで派遣したり、業界団体を核とした省エネ町内会の結成の働き掛けなどを行っている。学校・団体に対しては、エコ活動に対し助成金や表彰を行っている。
家庭部門では、ごみ拾いなどの環境活動を楽しんでいる写真や映像をコンテストの題材にする「あおもりうちエコいいね!フォト&ムービーコンテスト」、電気使用量の削減に挑む「節電チャレンジ」等を実施し、楽しく、親しみやすく、分かりやすい実践的エコ活動の発信に努めている。
また、運輸部門では、同計画に定めるリーディングプロジェクト「低炭素型交通普及促進プロジェクト」として、自家用車中心の生活スタイルである同県の特性を踏まえ、エコドライブ普及のための「エコ・アドバイザー養成講習会」や、一般県民を対象としたエコドライブ実技講習会の開催、「あおもりエコ&セーフティドライブフェア」、「県下一斉ノーマイカーデー」等を行っている。さらに、「地球とあおもりの未来を考えるエコドライブ発信」としてSNSや新聞広告、動画配信などによる啓発を進めているほか、公共交通機関の利用を中心とした地域づくりを推進する必要性から、「低炭素型交通社会づくりセミナー」を開催し、北海道において公共交通機関(バス)の利用者増加に成功した事例を県内バス事業者に対して紹介するなど、県内外の先進事例の普及を行っている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「県内におけるEVバスの導入事例はあるのか」との質問に対し、「十和田湖周辺の観光路線について、市町村が試験的に導入した事例がある。自然公園としてのPRになった反面、充電に時間がかかってしまい、定期運行を行うには、多客期の輸送頻度が課題となってしまっている。また、EV全般の普及に関しても、冬季の冷え込みが厳しい本県の場合は、ヒーターにエネルギーを使うので、航続距離が短いことが課題である」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、今後の本県における地球温暖化対策の取組を推進する上で、大変参考となるものであった。

(3)秋田県立大学木材高度加工研究所

(木材加工技術の開発について)

【調査目的】

秋田県立大学木材高度加工研究所は、日本の大学に属する機関としては唯一「木材」を冠する研究所として、「森林資源を活用した持続的な資源循環型社会の形成」という目標のもと、様々な研究・教育を行っている。
同研究所では、国産材の積極的な利活用に向けた木質資源の利用技術の開発のため、秋田県産スギを使った大型の建築構造用材(CLT:クロスラミネーティッドティンバー)の製造技術を確立するための研究や、廃プラスチックと木粉を複合させた環境に配慮した新たな素材の開発研究などを行っている。
同研究所の取組を視察することで、本県における林業振興施策の参考とする。

【調査内容】

2712環境農林委員会視察報告(2)

秋田県立大学木材高度加工研究所にて

秋田県立大学木材高度加工研究所は、天然秋田杉の減少に危機感を抱き、資源依存型から技術立地型に転換すべく、高付加価値化技術の開発を目的に平成7年に発足し、現在は約40名の体制で活動を行っている。主な研究テーマは、木材の遺伝的特性の解明に始まり、天然秋田スギの材質解明とスギ人工林の曲げわっぱ適材選別法への応用、木質プラスチック複合体(WPC)や木質マイクロプライ(薄単板積層材料)と呼ばれる軽量かつ強度のある素材の開発、放射性セシウムやストロンチウムの吸着除去法の確立、土木分野での活用として木製治山ダムを現場で製材、加工、施工まで行うことができるオンサイト生産システムの構築など、多岐にわたっている。円筒LVLと呼ばれる心材にベニヤを巻きつけて大型の円筒形建材を作成する技術は、同研究所が開発した。また、木材利用の範囲を中、大型建築物に広げるために耐火部材の研究も行っている。
CLTの分野では、全国的に研究が進んでおり、その実証試験の一部を同研究所も担っている。既にJAS規格は策定されており、来年3月までに設計士が建築物を設計するための基準が示される予定であり、実用化が一段と進む見込みとのことである。同研究所では木橋など土木部材にCLTを活用する技術の開発も進めている。
木材の専門研究機関の視点から見ると、日本人は森林や樹木に関して、多くの誤解や事実誤認をしており、間違った知識が木材の活用の妨げになってしまっているとのことである。最大の誤解は新入生に授業を行うときに明らかになるが、かなりの学生が「木を切って使うことは環境破壊である」と考えていることであるという。本来、成長した木はCO2の吸収が鈍るため、伐採し新たな木を植えることで再び光合成によるCO2吸収を促すことができる。伐採した木を加工して木材の姿で長期にわたって利用することで、CO2がそこに固定される。上手に木を植え、伐採し、利用することが地球温暖化の防止や環境の保全につながるのであり、行政や教育が正しい認識の普及を図ることが、木材利用の普及・拡大には欠かせないポイントであるとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質疑がなされた。「木材を土木の素材に使用している例として治山ダムのほかに何があるか。また、木材の土木材料はメンテナンスが必要なのか」との質問に対し、「木橋や林道にも使用している。木材の使用量としては、やはり治山ダムが大きい。土木材料として使う場合、水がたまらないようにするなど設計的な工夫に加え、腐りにくい加工塗装を施すなど総合的な防腐技術が必要である。年に1回くらいメンテナンスが必要であり傷んだら直すことが大切である」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、今後の本県における木材加工技術の開発、木材利用の普及を推進する上で、大変参考となるものであった。

(4)秋田県農業試験場

(コメ生産の低コスト化への取組について)

【調査目的】

秋田県農業試験場は、「農家所得の向上と経営安定化」、「農業の振興に貢献する技術の開発」をミッションとして、現場のニーズに即した試験研究の推進や研究成果の普及等に取り組んでいる。
同試験場では、農林水産省の委託研究プロジェクト等を活用し、イネの種子を直接水田に播種し、育苗や移植の過程を省略することにより、省力化・低コスト化が期待される水稲の直播栽培技術の研究開発、普及の取組等を行っている。
同試験場の取組を視察し、本県における稲作農業振興に係る施策の参考とする。

【調査内容】

秋田県では、農業法人化や集落営農等の組織化が進み、生産基盤の整備としてほ場の大規模化が比較的進んでいる。また、大型の田植機やコンバイン、薬剤散布用の無人ヘリコプターの導入も行われ、水稲の省力・高効率技術が積極的に取り入れられている。
コメ生産の低コスト化には、新技術の開発(効率の高い施肥法や病害虫防除方法)による材料費の減少、機械や施設の稼働率向上につながる大規模化による固定費の減少、本田作業をできるだけ省略することによる労働時間の削減が有効であり、直播栽培はこれらの要件を併せ持つ技術として注目されている。直播栽培では育苗ハウスが不要になること、育苗・播種に係る労働時間の短縮、従来の移植栽培に比べ収穫時期が遅くなるため、収穫時の作業分散を図ることができるといったメリットがあることから、同県では平成9年から技術開発を開始し、栽培指針を策定するなど、普及拡大に努めている。直播の方法は播種の位置や形状、ほ場の状態により異なるが、同県としては湛水条播を推奨しており70%以上がこの方式によるものである。最近では湛水点播が増加傾向にあり、鉄コーティングも増加傾向にあることから、技術的に対応する必要性を認識しているという。
しかし、直播栽培は現在のところ県内で約1,000ha、県内水稲面積の約1%にとどまっている。理由としては、移植栽培と比較して収量が約5%低下すること、除草剤費など一部の資材費が増加することなどから、直接的な所得増に結び付かない部分があるためと分析している。そのため、同県では更なる省力・高能率・低コスト化を図ることができる直播様式を求めて、農林水産省の委託研究プロジェクトを活用し、代かきをせずに安定生産が可能となる「無代かき湛水直播技術」の開発を行っている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑がなされた。「無代かき湛水直播で必要となる機材は、従来の機材と比べて導入コストはどうか。また、作業時間の短縮はどの程度見込めるのか」との質問に対し、「無代かき湛水直播で用いる機材は従来のものに比べて特段単価が高いわけではない。トラクター等を導入した際に、あらかじめ直播で用いる機器に対応できる仕様にしているかどうかでも変わってくる。また、代かきに比べ速度を上げて作業をできることなどから、半分から7割程度まで作業時間を短縮できる」との回答があった。
今回視察先を調査できたことは、今後の本県におけるコメ生産の低コスト化を推進する上で、大変参考となるものであった。

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郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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