環境農林委員会視察報告
調査日
令和6年11月13日(水曜日)
調査先
(1)IHミートパッカー株式会社東京ミートセンター(埼玉県越谷市)
(2)ASTRA FOOD PLAN株式会社(埼玉県富士見市)
調査の概要
(1)IHミートパッカー株式会社東京ミートセンター
(食肉の輸出推進に関する取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 世界では、日本食に対する関心の高まり等を背景に、国産畜産物の輸出拡大の機運が高まっており、輸出量の増加は畜産経営の安定に寄与することから、海外市場の開拓に取り組むことは重要である。
■視察先の概要と特色
- ISO22000(食品安全マネジメントシステム)、ISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得し、産地と消費者を結ぶ食肉加工処理施設として、牛・豚のカット・出荷までを行い、安全・安心で高品質な商品を提供している。
- 輸出食肉認定施設として、国内のみならず、需要が高まる海外に対してもグループの海外拠点と連携し、食肉を提供している。グループとしては、輸出業務専任部局の設置などにより輸出を強化し、輸出事業は20年近い事業継続において、食肉事業の一翼を担うまでに成長している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同社において、かつては、食肉加工時の整形状態はほとんど一般規格だったが、量販店の人手不足などの理由から、現在は、生産現場において生産性や歩留りを意識しながら小割で対応することが多くなっている。
- 現在は、台湾、シンガポール、ベトナム、タイに向けて、主に和牛を輸出している。青森県十和田市にある事業所(十和田ビーフプラント)でも対米も意識した高レベルな輸出認証の取得に向けて取り組んでおり、今後は十和田ビーフプラントと東京ミートセンターの二本立てで輸出に注力していく予定である。
- 行政の輸出拡大支援事業である、生産者・食肉加工施設・輸出事業者が生産から輸出まで一貫して輸出促進を図る畜産コンソーシアム事業にも参加し、輸出拡大に取り組んでいる。
- 輸出促進に向けた課題として、輸出認可を持つ施設を増やすことや輸出受入国を増やすことが挙げられる。
■質疑応答
Q:食肉の輸出において、衛生証明の手続や書類が膨大な点が課題と言われているが、影響はあるか。
A:人手や労働時間、発行までの時間的制約、書面原本でのやり取りなどの問題がある。国ではこの課題解決に向けて電子化の取組を進めているところだが、相手国との二国間交渉によるところである。実現すれば飛躍的に輸出拡大の一助となる。
Q:国内では国産牛、和牛、交雑牛などの定義があるが、輸出の際もその定義で対応するのか。
A:相手方の意向に応じて、定義どおりに輸出している。海外でどのネーミングを使用するかどうかも相手方次第であり、「日本産和牛」や「銘柄牛の名前」を使用している場合などがある。
(2)ASTRA FOOD PLAN 株式会社
(食のサーキュラーエコノミーに関する取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- フードロスの問題を解決し、持続可能な社会を築くため、資源の効率的・循環的な利用を図る経済活動(サーキュラーエコノミー)の推進は重要である。
■視察先の概要と特色
- 過熱水蒸気技術を用いた食品乾燥装置を開発、販売、レンタルしているフードテックベンチャーである。同装置は、高い生産効率を実現し、従来、コストの問題で有効活用できなかった食品工場で発生する野菜類の端材や規格外品などの未利用農作物等を付加価値の高い食品パウダーにアップサイクルすることが可能である。
- 産官学で連携し、食品パウダーの成分分析や用途開発・販売、学校給食での提供、食育プログラムの実施などに取り組み、ステークホルダーを増やしながら食の循環モデルの確立を目指している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 一般的にフードロスとは製品の売れ残りや食べ残しを指すが、そのロス以上に食品工場でのトリミングで発生する端材や規格外農作物、飲料工場で発生する飲料残さなどは廃棄されており、これを「かくれフードロス」と名付け、その削減とアップサイクルに取り組んでいる。
- こうしたSDGsの切り口はメディア露出、資金調達、受賞などにも有効である。
- 同社が開発した過熱蒸煎機は、熱風乾燥機に比べ短時間での乾燥が可能であり、色・風味・栄養価の低減を最小限に抑えることで、高品質なパウダーを実現している。
- 事業者への装置導入に当たっては、同装置で製造したパウダーが美味しいだけでは足りず、販路開拓や用途開発など、新たな市場を創出することが命題となっている。
- 同装置で製造したパウダーは「ぐるりこ」という名前で販売しており、様々な加工食品にぐるりこマークが印字され、消費者からリサイクルフードであるという認知をしてもらって選んでもらうことを目指している。
■質疑応答
Q:同装置は海外でも売れると思うが、どうか。
A:売れると思う。ただ、海外では、かくれフードロスではなく、食材を丸ごと利用して安価なパウダーが製造され、それが輸入されてくる懸念もある。
Q:アイディアはどのようにして生み出しているのか。
A:思い付いたらすぐ口に出すようにしており、そのアイディアを拾ってくれる人が周りにいる。例えば、社外で商品開発に協力してくれるパートナーがおり、こういったステークホルダーの方々とアイディアを育てていき、外とつながりながら販路拡大を目指している。
Q:同装置によるパウダー製造には何人程度必要なのか。
A:同装置の稼働だけなら、最低一人で対応可能である。前処理と同装置での乾燥を並行して実施した方が効率的によく、その点を考慮すると二人が望ましい。

ASTRA FOOD PLAN 株式会社にて