環境農林委員会視察報告
調査日
令和6年6月5日(水曜日)~6日(木曜日)
調査先
(1)株式会社サラダボウル(アグリサイト)(山梨県北杜市)
(2)サンデンフォレスト(群馬県前橋市)
調査の概要
(1)株式会社サラダボウル(アグリサイト)
(農業DXの推進について)
【調査目的】
■本県の課題
- 基幹的農業従事者の減少等が進む中で、社会の変化に的確に対応しつつ、儲かる農業を推進するには、デジタル技術の活用を前提に、経営の高度化や生産から流通・加工、販売等の変革を進め、生産性の向上を図ることが重要である。
■視察先の概要と特色
- 「農業の新しいカタチを創る」という理念の下、経営マネジメントを農業に取り入れることで、徹底した品質管理と生産管理を行い、高品質の野菜の安定供給を実現している。
- 世界でも最先端の統合環境制御型大規模グリーンハウスを運営し、トマトを中心に農産物の生産・販売を行っており、先進的な手法や技術を駆使して、高収益化や効率化、職場環境の改善など、様々な農業ビジネスモデルの変革に取り組んでいる。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 日本全国に世界最先端の大規模農場を展開している。仕様は大きく変わらないが、整備する年度によって、その時々の新しい技術を追加するとともに、効果がないと判断したものは除くことで最適化を図っている。
- 5分おきに計測される40項目を超える栽培データ、環境データをモニタリングし、圃場を管理することで、光合成を最大化して収量・単価の向上を実現している。
- 全国の栽培データ、環境データを遠隔でモニタリングできる体制を整え、ベテランの栽培管理者が遠隔地にいる若手の栽培担当者を支援している。
- ほぼ全ての農場で通年生産、供給を実現するとともに、高品質・4定(定時、定量、定質、定価格)を実践しており、こうした取組が取引拡大につながっている。
■質疑応答
Q:農業DXを推進する上で、導入コストが課題になると思うが、コストを適度に抑えながら効果が見込める、汎用性の高い技術はあるか。
A:一概には言えず、どう使うかによって全く違う結果になる。今は、業務の一部がデジタル化されるだけのデジタイゼーションから経営そのものがデジタル化されるデジタライゼーションへの過渡期にある。前者の段階では、便利になるだけで利益につながるわけではないため投資しづらいが、後者の段階では、投資対効果が得られやすく、革新的な風景が広がってくる。
Q:人材育成について、従業員の自主性を引き出す農業を推進していると思うが、コツはあるか。
A:給与や労働環境を良くしても、ただ満たされるだけで、モチベーションにはつながらない。達成感や充実感、自己成長があってこそやる気につながるため、その点を用意できるかどうかが重要だと認識している。一方、この先を見据えた時、「人を育てる」のではなく、「人を育てられる人を育てる」ことこそ取り組まなければなけないと思い、これを当社の人材育成における一つの目標としている。
株式会社サラダボウル(アグリサイト)にて
(2)サンデンフォレスト
(ネイチャーポジティブの実現に向けた取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 生物多様性の保全・回復に当たっては、県、市町村、企業、NPO等の団体及び県民など多様な主体が連携・協働し、それぞれの役割分担の中で取組を進めることが重要である。
■視察先の概要と特色
- カーエアコンなどを製造するサンデン株式会社が、環境共存型の工場を目指し、2002年に開設した赤城山の南麓にある事業所である。
- 事業所及び周辺地域での在来種や希少植物の保護の推進、生物が多く住める緑地の保全に取り組むとともに、様々な環境活動を通じ、生物多様性の保全に取り組んでいる。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 開設当時、民間で初となる、自然生態系が復元するよう整備する工法「近自然工法」を用いて大規模造成し、荒廃した森林や農地だった土地の半分を森林・緑地に、半分を工場として整備した。標高に合う植樹をしたり、造成前に土壌の上部を集め、造成後に敷き直すことで、その地域の植物の種を戻すなど、様々な工夫をしている。
- 森は一様ではないため、ゾーンごとに将来像を設定し、生物のモニタリング調査をすることで、適切に管理できているか判断している。
- 環境教育の場として校外学習を受け入れ、授業で学んだことを実体験できるプログラムを用意している。また、主催プログラムとして、例えば、ザリガニを釣ってもらうイベントを開催し、外来種問題の普及啓発と併せて外来種駆除も兼ねた取組を実施するなど、森の管理を一般の方々につなげていくよう意識している。
- 2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとして保全する目標に向けて「生物多様性のための30by30アライアンス」に、2022年4月から参画し、2023年度には、環境省から「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」として「自然共生サイト」に認定されている。
■質疑応答
Q:猪や鹿などの野生動物による被害は出ていないか。
A:車との接触はないが、目撃情報があった場合には、「自然だから仕方がない」ではなく、パトロールの強化や、従業員が見て安心できるような場所への捕獲檻の設置など、どのような対策が取れるかは十分に留意して対応している。
Q:自動車部品専門メーカーであるサンデン株式会社において、生物多様性の保全に係る取組をどう位置付けているのか。
A:当社の顧客の大半であるヨーロッパメーカーは、環境に対する意識が高く、商権獲得においても重要な要素となる。その意味において、サンデンフォレストにおけるネイチャーポジティブの取組には価値があり、そうした環境で製造される製品はシンボリックなものとなるため、ビジネスにおいてもチャンスと捉えている。