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掲載日:2024年6月10日
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令和6年1月16日(火曜日)
(1) 元荒川水循環センター(桶川市)
(2) 株式会社ヤマザキライス(杉戸町)
(下水処理における温室効果ガス排出量削減の取組について)
元荒川水循環センターは、荒川左岸北部流域(熊谷市・行田市・鴻巣市・北本市・桶川市)の下水道の終末処理場である。
同センターでは、平成31年度から、下水汚泥から生じるバイオガスを民間に売却し、民間事業者が自費で発電設備を設置、売電する形でバイオガス発電事業を実施している。また、下水汚泥中には窒素及びリンが豊富に含まれており、資源の有効活用の観点から肥料化の検討を進めている。今年度からは下水汚泥堆肥の試作を行い、安全性や効果を検証している。
本県では、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減することを目標に定めており、目標達成のためには各分野において新技術を用いた削減の取組が必要である。
同センターを視察することで、今後の温室効果ガス排出量削減の施策推進の参考とする。
本県において、下水道事業は県庁全体の温室効果ガス排出量の56%を占めている。そこで、下水道局では、埼玉県流域下水道地球温暖化対策実行計画を令和3年度に改定し、2030年に2013年度比で温室効果ガスを46%削減することを目標に、汚泥消化施設や新型焼却炉、超微細散気装置の導入などを各水循環センターにおいて順次進めている。
元荒川水循環センターでは、平成31年度に汚泥消化施設、バイオガス発電施設が導入された。それまで、汚泥を濃縮、脱水し焼却していたが、施設の導入により焼却する汚泥を減容化させることで、年間の温室効果ガス(主に一酸化二窒素※1)の排出量※2を約3,100トン(一般家庭の780世帯分相当)削減している。また、消化の際に発生するバイオガスを発電事業者に売却することで、県内での年間約1,300トン(一般家庭330世帯分相当)の二酸化炭素の削減につなげている。発電事業者が敷地内に発電設備を設置し、県がバイオガスを発電事業者に売却、発電事業者が電力事業者に発電した電力を売却する仕組みで、固定価格買取制度の利用により発電事業者は安定的に収益を得ることができる。令和4年度の実績をみると、バイオガス供給量、発電量ともに当初の計画を20%前後上回っており、想定以上の効果が得られているとのことであった。
さらに、下水道局では、温暖化対策や下水道資源の有効活用等を目的として、下水汚泥の肥料化について検討を進めている。昨年度までに先行事例の視察や農家等へのヒアリングを実施し、需要先の確保や認知度向上のためには、農家へのPRが重要であることを確認した。そして、今年度から新たに、同センターにおいて、下水汚泥から堆肥を試作する設備をリースで導入し安全性の検証等を実施している。堆肥化により、年間約700トンの温室効果ガス(主に一酸化二窒素)の削減効果が見込まれるという。今後の課題は事業性と利用者の確保であり、そのためには信頼できる機関での栽培試験のほか、継続した肥料成分や有害成分の測定とその有効性、安全性などの周知等が必要である。また、維持管理負担金への影響が少なくなるようなスキームの検討等も必要とのことであった。
概要説明後、委員からは活発な質問が行われた。その中で、「下水汚泥堆肥のネガティブイメージを払拭するためには、堆肥の成分割合などについて、科学的な安全性の確認とその周知が重要であると考えるがどうか」との質問に対し、「引き続き試作を行い成分の検証をしていく。分析結果についてはしっかりと周知し、安全性、有効性があることを広く知っていただく」との回答があった。その後、詳細な説明を受けながら消化施設及び堆肥化設備を見学した。
今回視察先を調査できたことは、今後の温室効果ガス排出量削減の取組を推進する上で、大変参考となるものであった。
※1 一酸化二窒素:二酸化炭素の約298倍の温室効果を持つ
※2 温室効果ガス排出量:いずれも二酸化炭素に換算した場合の量
(農業における新技術を活用した生産性向上の取組について)
株式会社ヤマザキライスは、衛星画像データをAIが解析し最適な管理を提案するシステムなどの新技術を活用し、水稲の生産性及び利益率の向上を図っている。
基幹的農業従事者の減少や高齢化が進む中で、農業の持続的な発展を確保していくためには、規模拡大やスマート農業等の推進により、生産性の向上や農業所得の増加を促進し、農業経営体の経営改善・強化を図ることが重要である。
今後の農業における生産性向上の施策推進の参考とする。
株式会社ヤマザキライスは、24年前に3ヘクタールから農業を始め、現在は約100ヘクタールで水稲を中心に栽培している。徹底的なコスト削減による利益率の高い米の生産を目指しており、令和3年の米の生産コストは、1キログラムにつき全国平均が180円、農林水産省目標値が160円であるのに対し、同社は99円(令和4年は113円)を実現している。法人全体での売上高に対する生産コストは約6割であるという。また、必要最低限の施設整備にするなど無駄をなくし、補助金に依存しない自立型農業経営を行っている。
スマート農業を積極的に進めており、これまでの経験や結果から、労力や熟練の経験などの人為を3割、ロボティクス化などのスマート化を7割とすることが、収量の増加や品質向上、事業継承に最も適した割合であるという。
根拠に基づく農業を重視し、独自に考えた田んぼごとの評価エクセルシートによる分析と品種ごとの再生産価格を算出している。品種ごとに標準偏差を出して、どの田んぼの収量が多いかなどを10アールごとに偏差値で示している。
また、稲作において重要なポイントである、水のコントロールと適期、肥料のコントロール、農薬の適期防除については、衛星画像データをAIが解析する栽培管理システム「ザルビオ」を活用している。特に、収量の増加と品質向上のためには、どのような肥料を、どのように溶出し、どうやって、どれくらいまくかという肥料のコントロールが重要であるという。そこで、地域アメダスのデータを活用し、本県の特徴である高温に対応する肥料を作っているほか、散布量のコントロールについては、「ザルビオ」をドローン等のスマート農機と連携させて可変施肥を行っている。同システムでは、過去15年間分の衛星画像データから圃場の地力が見える「地力マップ」や、稲の生育状況がリアルタイムで見える「生育マップ」を基に、AIが最適な栽培管理システムを提案する。これにより、約100ヘクタールの田んぼを実際に見ずに生育することが可能となっているという。現在、AIの予測機能が使用できるのは水稲、大豆、小麦・大麦であるが、今後、ばれいしょやてんさいにも対応する予定とのことである。
今年度、本県では高温障害により米が規格外となる農家が多かったが、同社では約100ヘクタールのうち47ヘクタールの全量が一等であったという。また、ドローンによる追肥の可変施肥を実施した場所については、収量が前年度に比べ20%増加したとのことであった。なお、現在使用している衛星を用いた測位システムGNSSでは、農地において30センチから2メートル程度の誤差が生じる。そのため、スマート農業の充実のためには、誤差を数センチ以内に抑えることができるRTK基地局の整備が必要であり、行政にも支援を求めたいとのことであった。
概要説明の後、農機等について詳細な説明を受けながら見学した。
今回視察先を調査できたことは、今後の農業における生産性向上の施策推進のために大変参考となるものであった。
株式会社ヤマザキライスにて
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