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掲載日:2023年5月23日
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平成28年11月7日(月)~8日(火)
(1) 静岡鉄道㈱(静岡市)
(2) (公財)静岡県舞台芸術センター(静岡市)
(民間企業の人材育成に関する取組について)
静岡鉄道㈱は、女性をはじめとした意欲と能力のある人材を確保することが企業成長の鍵と考え、「女性から選ばれる企業となる」というビジョンを打ち出している。そして、「女性が自身の価値観に応じたキャリアプランを実現でき、活き活きと働き続けることができる企業風土を築く」という基本方針の下、2020年までの女性離職率と女性管理職比率の目標と計画を策定した。
中でも、公募で選ばれた女性社員による女性活躍推進委員会を発足させ、経営会議で意見提言するなどの取組は、女性の活躍を進める上で先進的な取組である。また、管理職向け研修や女性社員向けのライフデザイン研修を実施するなど、様々な人材育成の取組を実施している。
同社を視察し、本県における人材(人財)育成に関する施策の参考とする。
静岡鉄道㈱は、鉄道会社という業態から男性中心の労働環境であった。しかし、平成16年の介護事業を皮切りに、ビジネスホテル事業、民間学童保育事業など他業種に参入したことにより、女性社員が大きく増加することとなった。同社はそれまでも職場全体の環境改善に力を入れてきたが、①労働力人口の減少に対する労働力を確保しなければならない。②女性の就労人口が増加している。③女性の消費力が向上する中、お客様のニーズや価値観を吸い上げ、それを商品・サービスに活かす必要がある。以上3つの背景を具現化するためには女性の力が必要であると考え、女性が就職したい・活躍したい・働き続けられると思える「女性から選ばれる企業」になるための取組に着手した。まずは、率直な意見を聴くために、様々な部署から女性社員を集めた意見交換会を開催し、これを踏まえ、「女性が自身の価値観に応じたキャリアプランを実現でき、活き活きと働き続けることができる企業風土を築く」ことを基本方針に掲げた。
同社では現在、この基本方針に基づき行動計画を策定し、多様な価値観に応じる選択肢の充実を図るため、採用・制度・教育・異動の視点から様々な施策を実施している。基本方針を実現するためには、現状の課題を洗い出し、ありたい姿とのギャップを見つけ、それを解消するよう施策を検討するが、注目すべきは平成26年12月に発足した女性活躍委員会「しずてつぽんて」である。この「しずてつぽんて」は、様々な部署からの公募による女性社員十数名が役職・年齢を問わず参加し、女性社員自身が女性活躍推進に関わり、社内の風土醸成や女性社員のモチベーション向上に寄与することを目的とした委員会である。課題の本質、組織風土を変えていくためには、社員全体の意識をスピード感を持って変えていく必要があると考えて発足した「しずてつぽんて」は、発足から1年後の平成28年1月には、それまでの意見を提言としてまとめ、社内の経営会議にて発表するに至った。そして、経営陣からも「しずてつぽんて」の必要性が認められ、昨年8月には「育児のための短時間勤務制度」を改定し、対象年令を9歳まで引き上げたほか、育児休業からの復職率も、ここ3年は100%を維持するなど、結果として実を結んでいる。このように、大きな存在意義を有することとなった「しずてつぽんて」であるが、立ち上げの際には、制度を活用する女性社員が権利の主張ばかりにならぬよう女性社員も意識を変える必要があることや、活動においては、管理職登用のみにとらわれず仕事とプライベートの両面で自分らしい将来像を描けること、社員それぞれのスタイルに合う選択肢を用意することなどに留意したとのことであった。
このほかにも同社は、静岡銀行、静岡ガスと共同して事業所内保育施設の開設や、意見交換会を開くなど、異業種との連携も行っている。
概要説明の後、委員から、事業における効果や、育児休業からの復職に当たってのフォロー体制などについて活発な質疑が行われた。
今回視察先を調査できたことは、本県における人材育成に関する取組を充実させるために大変参考となるものであった。
静岡鉄道㈱にて
(文化芸術の振興について)
(公財)静岡県舞台芸術センター(SPAC)は、平成7年、日本で初めて文化政策的に作られた公立文化事業集団である。静岡県出身で、世界的な演劇人である鈴木忠志氏を芸術総監督に迎え、鈴木氏の演劇の理念を具現化すべく、欧米並みの専属劇団、専用の舞台芸術施設を整備し、国際的な演劇活動を展開している。平成19年度から、宮城聰氏が新しく芸術総監督に就任し、舞台芸術の振興のための活動を更に積極的に展開している。
同財団の先進性は、専用の舞台施設を有し、事業予算の執行権とスタッフの人事権を有する欧米型の芸術総監督の下に活動を展開していることである。我が国においてほとんど唯一という舞台芸術集団となっており、自治体初の文化政策的取組として、全国知事会の先進政策大賞を受賞している。同センターを視察し、本県における文化芸術の振興に関する施策の参考とする。
静岡県は、世界に通用する舞台芸術を創造するとともに、舞台芸術の発展に必要な人材育成等に取り組み、同県の舞台芸術の振興と県民文化の更なる発展を目指すために静岡県舞台芸術公園及び静岡芸術劇場を設置した。「静岡だからできること、静岡にしかないもの」を目指した劇場と公園は、(公財)静岡県舞台芸術センター(SPAC)専用の活動拠点であり、SPACの活動を通して、演劇やダンスなどの新たな舞台芸術作品を生み出し、静岡から世界の人々に向けて広く発信しており、静岡と世界をつなぐ文化交流のシンボルとなっている。そしてSPACでは、世界に通用する舞台芸術作品の創造と上演、優れた舞台芸術の紹介や舞台芸術家の育成をはじめ、「劇場は世界をみるための窓である」と広義の教育の場として、春秋に実施する中高生鑑賞事業、劇場を飛び出して街でのアウトリーチ事業や屋外パフォーマンス等、様々な事業を積極的に展開し、裾野の拡大を図っている。
今回視察した舞台芸術公園は、平成9年にしゅん工した公園である。風光めいびな日本平の山麓、富士山を望む緑豊かな約21haの敷地に、400席の野外劇場、可動式で最大110席の屋内ホール、同じく可動式で最大110席の稽古場棟をはじめ、研修交流宿泊棟や食堂棟などが点在している。この公園では、世界の舞台芸術の祭典である「ふじのくに⇔せかい演劇祭」や、静岡県民によって構成される「SPAC県民劇団」の稽古及び公演、子供たちとともに新しい舞台を創造する国際共同制作プロジェクト「スパカンファン・プロジェクト」等が行われ、人材育成に大きな役割を担っている。
静岡県舞台芸術公園及び静岡芸術劇場の建設前は、SPACの専用劇場とすることに対して大きな議論が持ち上がったが、専属劇団、専属使用を否定しては、劇場は単なる貸しホールの域から出られず、劇場固有の創造活動は難しいとの判断から、県条例においてSPAC専用劇場と定め、運営に踏み切ったとの話であった。
概要説明の後、年間運営費や劇団員の雇用形態などについて、委員から活発な質疑が行われた。
今回視察先を調査できたことは、本県における文化芸術の振興に大変参考となるものであった。
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