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掲載日:2023年5月23日
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平成29年6月5日(月曜日)~7日(水曜日)
(1) 京都鉄道博物館(京都市)
(2) 京都大学iPS細胞研究所CiRA(京都市)
(3) 大阪城公園(大阪市)
(4) 立命館大学大阪いばらきキャンパス(茨木市)
(地域振興の推進について)
京都鉄道博物館は、面積・展示車両数において日本最大級の鉄道博物館として、平成28年4月に開業した。
鉄道の歴史や安全、技術を学べる「地域と歩む鉄道文化拠点」を基本コンセプトとする同館は、「見る、さわる、体験する」を重視した展示構成により、鉄道ファンのみならず幅広い層に向けた活動を展開している。また、地域との共生を目指し、学校教育機関、周辺施設などとの連携を図っており、地域の活性化に大きく寄与している。
これらの取組が評価された結果、同館は、文化・芸術・スポーツなど、様々な分野で活躍し、日本中に元気を与えた関西の人々や団体に贈られる「関西元気文化圏賞」大賞を平成28年に受賞した。
今後の本県における地域振興の参考とするため、同館の取組を調査する。
京都鉄道博物館は、現在の同館の所在地にあった梅小路蒸気機関車館と、大阪府大阪市港区にあった交通科学博物館を前身とし、平成28年4月に開業した。西日本旅客鉄道(株)が設置し、(公財)交通文化振興財団が運営(一部、西日本旅客鉄道(株)による直営あり)を行う同館は、建物面積・展示車両数が日本最大級の鉄道博物館であり、館内には53両の車両をはじめとした様々な収蔵・展示がある。
車両については、0系新幹線電車の第1号車や、時速300kmでの営業運転を実現しギネスブックにも掲載された500系新幹線電車、戦後の特急列車を牽引した国鉄最大のC62形蒸気機関車など、歴史的な価値を持つものを多く収蔵・展示している。また、蒸気機関車20両を保存・展示しており、そのうち8両については動態保存されていることが特徴である。これらを使用して「SLスチーム号」の体験乗車を毎日実施しており、これは全国でも珍しい事例だという。また、引込線を利用して展示車両を入れ換えることができる仕組みを取り入れるなど、来訪者が再度訪問したくなるような展示づくりをしているとのことであった。
館内の展示構成は「見る、さわる、体験する」を重視したものとなっており、子どもから大人まで全ての人が楽しめる学びの場となっている。具体的には、器具等を手に取って動かせたり、ATS(自動列車停止装置)の体験ができたり、運転シミュレータで運転の体験ができるなどの様々なコーナーを設けており、来訪者が自らの手で触り、動かして体験することで、自ら発見する楽しさや驚きを提供している。
また、同館は、地域との共生を目指し、学校教育機関、周辺施設などとの連携を図っており、地域の活性化に大きく寄与している。一例として、同博物館の開業を見据え、西日本旅客鉄道(株)京都支社では、地元企業と連携し「京都・梅小路みんながつながるプロジェクト」を設立した。現在は同博物館も加わり、地域と共に当該エリアの持続的なにぎわいづくりに取り組んでいる。
同館の様々な取組が評価された結果、平成28年に、文化・芸術・スポーツなど、様々な分野で活躍し、日本中に元気を与えた関西の人々や団体に贈られる「関西元気文化圏賞」大賞を、また、鉄道に関する優れた取組を表彰する国土交通省による第15回「日本鉄道賞」日本鉄道大賞をそれぞれ受賞した。
概要説明の後、館内の視察を行い、車両等の展示の様子を調査した。
今回視察先を調査できたことは、本県における地域振興の推進のために大変参考となるものであった。
京都鉄道博物館にて
(県重要施策の推進について)
京都大学は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)に関する基礎研究及び応用研究を行うため、iPS細胞研究所 CiRAを設立した。各研究室間は仕切りが取り払われ、研究者同士で自由な議論をすることができる「オープンラボ形式」となっている点が特徴である。
本県では、重要施策「先端産業創造プロジェクト」において、「医療イノベーション」を重点分野の一つに掲げ取組を進めている。再生医療の実現、病気の原因解明、新薬の開発に重要な役割を果たすと期待されるiPS細胞に関する同研究所の取組を調査することで、今後の県政運営の参考とする。
京都大学の附置研究所の一つであるiPS細胞研究所 CiRA(Center for iPS Cell Research and Application)は、「iPS細胞を用いた医療の実現に貢献する」ことを理念に掲げ、世界初のiPS細胞に特化した先駆的な中核研究機関としての役割を果たすことなどを目的として設立された。平成24年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が所長を務める同研究所では、iPS細胞に関する基礎研究及び応用研究を推進している。
平成18年に山中伸弥教授らが世界で初めて作成に成功した、培養して人工的に作られた多能性の幹細胞であるiPS細胞は、再生医療の実現、病気の原因解明、新薬の開発等に重要な役割を果たすと期待されている。特徴としては、ほぼ無限に増殖できること、様々な細胞へ分化できること、どんな個人の体細胞からでも樹立できることが挙げられるという。現在、同研究所では、臨床応用に向けた研究が進んでおり、パーキンソン病、目の病気、心不全、脊髄損傷、血液の病気等の分野については、再生医療の臨床研究を行える段階が近づいているとのことであった。
iPS細胞による再生医療には、人体からの細胞の採取、iPS細胞の作製、品質のチェック、必要な細胞への分化、人体への移植等のプロセスが必要であり、多くの費用と時間を要する。このことを考慮し、同研究所では、「再生医療用iPS細胞ストック」の仕組みを設けているということであった。これは、日本赤十字社から血小板ドナー、骨髄ドナーを受け付け、京都大学病院で採血を行うなどした血液を基に、同研究所の細胞調製施設「FiT」(Facility for iPS Cell Therapy)において、治療でも使える高品質な細胞の作製を行うものである。
同研究所は、平成22年に第1研究棟が竣工した後、平成27年に第2研究棟、平成29年に第3研究棟が竣工するなど、研究機能の向上が図られている。また、各研究室間の仕切りが取り払われ、研究者同士の自然な交流や自由な議論を促す「オープンラボ形式」となっている点が特徴であるとのことであった。
現在、同研究所においては、独自の研究のほか、製薬、バイオ、化学等の各民間企業等との共同研究や提携により、最先端の研究を行っており、その成果に世界から注目が集まっている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「iPS細胞を用いた医療は一般の病院でも扱えるものなのか」との質問に対し、「保険適用できるレベルになるには相当な年月を要することが見込まれる。まずは限られた施設、限られた患者における治験や臨床研究から始めて安全性を確認し、それがクリアされたら規模を広げ、有効性の検証のための治験を行い、その上で厚生労働省に保険収載の申請を行う、すなわち保険適用を求めるという流れで進めていくこととなる」との回答があった。その後、各研究棟の視察を行った。
今回視察先を調査できたことは、本県の重要施策「先端産業創造プロジェクト」の取組を一層推進するために、大変参考となるものであった。
(指定管理者の取組について)
大阪市は、平成24年に大阪府と合同で策定した「大阪都市魅力創造戦略」において、大阪城公園を重点エリアの一つに位置付け、世界的な観光拠点にふさわしいサービスの提供や新たな魅力の創造を図るため、民間事業者の柔軟かつ優れたアイデアや活力を導入することとした。これを受け、平成26年に、民間事業者「大阪城パークマネジメント共同事業体」が同公園の指定管理者として選定された。事業者が施設利用料金収入や事業収入で管理経費を賄う独立採算制としているほか、事業者による新しい施設の整備を可能としたことが特徴である。現在、事業者は、公園の更なる魅力創出、新たなにぎわいづくりを目指し、飲食、物販施設等の整備を進めており、今後、順次開業する予定となっている。
今後の本県における指定管理者の取組の参考とするため、同公園の取組を調査する。
大阪城公園は、その大部分が特別史跡指定地である広大な歴史公園である。同公園は、大正13年、都市計画学者でもあった關一(せき はじめ)第7代大阪市長の下、追手口(大手口)の正面に開園した約2.3haの大手前公園を前身とし、昭和6年の天守再建と同時に現名称となった。公園内には、歴史施設のほか、音楽堂、野球場、ホール等の多様な施設を備える。また、樹木が多く植えられ、二の丸市正曲輪の梅林、北外曲輪の桃園、西の丸庭園の桜など多くの名所がある。また、杉山地区は森林公園となっており、外濠の水辺に集まる野鳥を眺めることもでき、都会のオアシスとして地域に愛されている。
大阪市は、平成24年12月に大阪府とともに策定した「大阪都市魅力創造戦略」の中で、同公園を重点エリアの一つに位置付けた。民間事業者の柔軟かつ優れたアイデアや活力を導入し、世界的な観光拠点にふさわしいサービスの提供や新たな魅力の創出を図るため、民間主体の事業者により、園全体を総合的かつ戦略的に一体管理することとした。また、事業者は、公園の管理運営だけでなく、公園の観光拠点化に向けて、新たな魅力ある施設の整備や既存の未利用施設の活用を実施することとされた。
この方針に基づき、市が公園の指定管理者の審査を行った結果、(株)電通関西支社、讀賣テレビ放送(株)、大和ハウス工業(株)大阪本店、大和リース(株)、(株)NTTファシリティーズから構成される「大阪城パークマネジメント共同事業体」を選定し、平成27年4月から平成47年3月までの20年間の指定を行った。今回の指定管理の特徴としては、これまで単独で指定管理又は直営管理していた複数の施設をパッケージで管理運営すること、事業者が施設利用料金収入や事業収入で管理経費を賄う独立採算制とすることで市の財政負担の軽減に寄与していること、施設の管理運営だけでなく事業者による既存施設の改築や新たな施設整備を可能としていることが挙げられる。
現在、事業体においては、公園の魅力向上やにぎわい創出のための各種施設の整備が進められている。今後も、6月下旬に開業予定の複合施設「JO-TERRACE OSAKA」(ジョー・テラス・オオサカ)をはじめ、順次新たな施設が開業する予定となっているとのことであった。
これらの取組の結果、同公園は来場者が増加しており、大阪城天守閣の来館者数は、従前は年間130万人から150万人だったところが、平成27年度は約238万人、平成28年度は約255万人となり、過去最高を記録したとのことであった。
概要説明の後、開業間近である「JO-TERRACE OSAKA」の整備状況等を調査した。
今回視察先を調査できたことは、本県における指定管理者の取組を推進するために大変参考となるものであった。
大阪城公園にて
(産学官連携による地域の活性化について)
立命館大学が平成27年4月に開設した大阪いばらきキャンパスは、コンセプトの一つとして「地域・社会連携」を掲げ、地域の活性化に貢献している。民間企業・団体、公的研究機関などとのワンストップ窓口としてサポートを行っているほか、茨木市、茨木市商工会議所との連携協定を平成24年8月に締結しており、幅広い分野での協力を行っている。
また、同キャンパスは、隣接する都市公園と明確な境界線のない一体的な整備がされており、地域と調和した景観づくりが高く評価されている。
今後の本県における地域活性化の参考とするため、同キャンパスの取組を調査する。
立命館大学は、平成27年4月に大阪いばらきキャンパスを開設した。「都市共創」「地域・社会連携」「アジアのゲートウェイ」の3点を基本コンセプトと位置付ける同キャンパスは、産業界や行政機関等との一層の連携による教学展開の機能とともに、地域連携や交流拠点の機能も備えている。
同キャンパスの敷地には、元々、サッポロビール(株)の大阪工場があったが、工場が閉鎖されたことから、立命館大学が土地を買い上げたものである。当時、同大学は、他キャンパスが手狭になっていたことから、新たなキャンパスの開設を検討していたとのことであった。大阪いばらきキャンパスは、他キャンパスと比べても駅に近いなど交通の便が良い立地であることが検討の中でも評価されたという。
同キャンパスの整備は、地元・茨木市との連携・協力の下に進められた。仕組みとしては、敷地の一部、約3万平方メートルを市に売却し、うち約1.5万平方メートルを市が防災公園である岩倉公園として整備し、残り約1.5万平方メートルは、同大学が市から無償で借り受け、1,000名収容の大ホール、図書館、イベントスペース等を備える「フューチャープラザ」を建設し、市民開放型の施設として運用するという形を取っている。また、キャンパスの周辺道路や、駅からキャンパスまでの歩行者専用道を市が整備したとのことであった。
同キャンパスの大きな特徴は、隣接する岩倉公園との間に塀などの明解な境界線のない一体的な整備がされている点である。植栽が同じ形状に並び立つよう、土壌は同じものを使用するほか、公園内の遊具は大学キャンパスの雰囲気に合うものが選択され、着色も落ち着いた赤茶系の特注色が用いられるなど、様々な配慮がなされている。このような周辺のまちなみと調和した美しい景観づくりが評価され、平成27年10月に「大阪ランドスケープ賞2015(第5回みどりのまちづくり賞)」で最高賞の大阪府知事賞を受賞するなど、高い評価を受けている。また、同キャンパスには門がなく、一般市民も自由に通行できるようになっており、学内のレストラン、カフェ等も利用することが可能であるとのことであった。
また、同大学は、茨木市及び市商工会議所と、地域の発展及び人材育成に貢献することを目的に、包括的な連携協力に関する協定を締結し、まちづくり、産業、観光、学術研究、教育、文化、交流等の幅広い分野での協力を行っている。産学官の連携により地域の活性化に向けた取組が円滑に推進できるよう、フューチャープラザには、研究者に対する各種支援や、民間企業・団体、公的研究機関とのワンストップ窓口を担うOICリサーチオフィスが設置されているほか、市商工会議所が入居するなどの体制が整えられているとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「同キャンパスの開設後、周辺商店街等、地域の様子に変化はあったのか」との質問に対し、「学生サークルが周辺商店街等で活動したり、逆に、地域住民が大学において活動を行うなど、大学と地域との交流が活発になされ、活気が生まれている。先日も、岩倉公園を利用した地域の防災運動会が行われた」との回答があった。その後、キャンパス内の視察を行った。
今回視察先を調査できたことは、本県における産学官連携による地域活性化施策の推進のために大変参考となるものであった。
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