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掲載日:2023年5月23日
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平成27年8月17日(月)~19日(水)
(1) 盛岡市役所[交通政策課](盛岡市)
(2) 奥州市役所[元気戦略室](奥州市)
(3) 国土交通省胆沢ダム管理支所(奥州市)
(4) せんだいメディアテーク(仙台市)
(交通体系の整備について)
盛岡市は、市内の交通渋滞に対応し、より多くの人が使いやすいバスの運行や施設の整備を図ることを目的として、「オムニバスタウン計画」を策定している。
計画の中心となるゾーンバスシステムは、バスのサービス水準の向上と運用の効率化を目指し、バスの運行形態を大幅に見直し、バス路線の再編を行うものである。同市は、新たな運行方式によるバスのサービス水準アップ、バスの走行環境改善によるスピードアップ、バス利用条件の改善による使いやすさアップに向けた支援を行っている。
今後の本県における交通施策の参考とするため、同市の取組を調査する。
盛岡市役所にて
盛岡市では、近年、朝夕の交通渋滞が年々ひどくなり、バスの走行環境等がますます悪化していた。これは、ベッドタウン化の進む郊外部への人口流動が進み、それに伴うマイカーによる通勤者の増加などが原因である。また、市内の主要道路が典型的な都心放射型であることや、都心部では3つの河川が合流し橋を渡って移動するという地理条件も背景となっていた。
同市では、マイカー普及や都市構造の変化に対応して、多大な費用と時間を要する道路整備だけでは交通問題の解決には限界がある中で、大気汚染などの環境問題や高齢化の進展に伴う交通弱者への配慮などの社会要請への対応も急務となっていた。
そこで、同市では交通需要の管理を行い、自動車交通を抑制するとともに、バスの利用促進を通じて交通渋滞を緩和することによって、快適なまちづくりを進めるため、オムニバスタウン計画を策定した。
同計画の中心となるのがゾーンバスシステムである。これは郊外部と都心部を急行バスなどの基幹バスで結び、郊外部は支線バスを循環運行させるものである。基幹バスや支線バスへの乗り換えはミニバスターミナル等で行い、都心部の主要地点まで乗客をスムーズに運送するとともに、住宅街をきめ細かくバスを運行させることでバスの利便性を高めることができる。
さらに同市では、上屋やベンチなどを備えたハイグレードバス停の設置や、バスの運行情報をコンピューターで管理し、駅やミニバスターミナル、主要なバス停等で乗り継ぎやバスの接近案内など様々な情報を提供するバスロケーションシステムの導入、郊外の住宅から自転車で最寄りの駐輪場まで行き、バスに乗り換えて都心の中心部まで移動するサイクルアンドバスライドといった支援施策に取り組んでいる。
中心市街地から6km離れた松園地区では、このシステムを基にバス停や団地内を運行するバスを増やすとともに、バス専用レーンの設置などのバス優先施策を導入し、急行バス、途中始発バス、直通バスなど多様な運行形態を導入したところ利用者が増加した。
市内全体でもバスの定時性が向上し、バスの信頼感が増したこともあり、盛岡市のバス輸送人数は減少から増加に転じ、盛岡都心循環バスの利用人数は平成26年度には過去最高を記録した。
市民の反応も良好で、盛岡市が実施した市民意識調査によると、バスが利用しやすくなったとの回答が35%、盛岡市内の渋滞が良くなったとの回答が13.9%あった。
概要説明の後、バスの運営主体、バス会社と市との協力体制、オムニバスシステムの適用範囲、サイクルアンドバスライドの整備状況等について、活発な質疑応答が行われた。その後、ハイグレードバス停留所を視察した。
以上のように、盛岡市の交通体系の整備について調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
(地域振興の推進について)
奥州市は、財政状況、雇用・経済、少子高齢化社会の諸課題に対応しながら、地方分権など新たな時代に対応するため、「幸せを実感できるまち」を目標に移住・交流に向けた取組を積極的に行っている。
奥州市移住・交流情報館という専門のホームページを開設し、希望者が安心して移り住めるように、市の概要やセールスポイントのほか、最新の空き家情報、関係する各種補助金やイベント情報など、移住・交流のための情報を発信している。
今後の本県における地域振興の参考とするため、同市の取組を調査する。
奥州市は、平成18年2月に水沢市、江刺市、前沢町、胆沢町及び衣川村の5市町村が合併して誕生した。人口は124,746人(平成22年)で、平成17年と比較すると4.17%の減少となっている。
そこで、同市では、少子・人口対策として、少子・人口対策室を設置(平成27年度には「元気戦略室」に組織名変更)するとともに、「子育て環境ナンバーワンプロジェクト」及び「奥州市少子化及び定住化対策基本方針」を策定した。
同市は移住・交流の取組としては、主に移住促進、定住化対策を掲げている。
移住促進については、奥州市田舎暮らし情報サイト「奥州市移住・交流情報館」による情報発信、空き家紹介事業「空き家バンク」の実施、U・Iターン者を対象とした定住促進持家取得補助金、移住支援員の配置等を行ってきた。
定住化対策については、市外からの移住者だけでなく、市内の移住者も含め、住みよい奥州市を目的として分譲地の販売や子育て支援、就業支援に取り組んでいる。
また、毎年夏に大学院とのフィールドワークにより、奥州市の研究を共同で行い、様々な提言をいただいており、今後はその結果を基に総合戦略策定に役立てるという。
移住促進の主要施策である空き家バンク事業は、都市部や市街地への人口流失による中山間地を中心とした空き家増加に伴い、空き家の有効活用により、奥州市への移住を促進し、地域の活性化を図ることを目的としたものである。
事業の進め方は、まず、市が空き家所有者と交渉して、値段を決定の上、市の専用ホームページ「奥州市移住・交流情報館」に空き家情報を掲載する。一方、空き家購入・賃貸借希望者は利用登録の申し込みを行う。その後本人の希望に応じて、現地見学や成立に向けた交渉を行うこととなるが、契約は不動産業者を通して締結する。さらに、市では「奥州市移住・交流情報館」に空き家物件だけでなく、移住に関する支援制度や宅地の分譲情報、移住した人の体験談等を掲載するほか、移住希望者がスムーズな移住に向けて相談することができる移住支援員を設置している。なお、空き家バンクは平成19年5月から平成27年3月末までで延べ登録数207件、成約数は102件、移住者は203人となっている。
近年の課題としては空き家登録数の減少、若年層の移住の少なさ、支援制度内容の不十分、情報発信の弱さといったものがある。これに対し、空き家対策措置法に基づく空き家情報の活用、地方版総合戦略の策定と併せた、今後の支援施策の検討、国や県のホームページの活用や市サイトの見直しを予定しているという。
概要説明の後、物件の価格、支援制度の内容、物件の修繕等について、活発な質疑応答が行われた。その後、空き家バンクに登録されている物件を視察した。
以上のように、奥州市の地域振興の取組について調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
(水利用に関することについて)
胆沢ダムは、洪水調節、河川環境の保全等のための流量の確保、かんがい用水・水道用水の供給、発電等を目的に建設された特定多目的ダムである。
胆沢ダムが建設された上流には、既に別のダムがあったが、確実に増加する水需要への対応が困難になってきており、安定した水源の確保のため、新たに同ダムが建設されることとなった。
同ダムの完成により、大規模化された水田や整備された用水路に必要な水量を不足なく行き渡らせることが可能となり、干ばつ被害や幾度となく強いられてきた番水の苦労が軽減されたほか、水道用水として最大46,800㎥/日を新たに供給しており、上水道や下水道の普及も積極的に進めることが可能となっている。
今後の本県における水利用に関する施策の参考とするため、同施設の取組を調査する。
胆沢ダム管理支所にて
胆沢ダムは治水面から北上川の洪水対策、利水面では慢性的な容量不足を解消するため建設された。堤体積は1,350万㎥と全国2位、堤体長は723mと全国1位、総貯水量は1億4,300万㎥であり、日本でも有数の大型ロックフィルダムである。型式は中央土質遮水壁型で中心に水を通しにくい粘土層(コア)を配し、次に粘土層が流失しないように砂利層(フィルター)の外側に二層の巨石層(ロック)を配する構造となっている。
当ダムは、かんがい用水の供給及び水道用水の供給並びに発電によるクリーンなエネルギーの供給といった利水面で大きな役割を担っている。まず、胆沢平野の安定した営農環境を整えるために、国営土地改良事業胆沢平野地区の約9,700haの農地に対し、最大27,838㎥/sのかんがい用水を供給している。これにより、大規模化された水田や整備された用水路に必要な水量を不足なく行き渡らせることが可能となり、干ばつ被害や幾度となく強いられてきた番水の苦労が軽減された。また、奥州市・金ヶ崎町の安定した生活環境を整えるため、最大46,800㎥/日の水道用水を供給している。この結果、上水道や下水道の普及も積極的に進めることが可能となったという。さらに、胆沢ダムの貯水を利用することにより、胆沢第一、第三発電所において、年間約75,500Mwhの発電をしている。
一方、当ダムは治水面からも重要な役割を果たしている。ダム建設地点における計画高水流量2,250㎥/sのうち2,210㎥/sを調節し、胆沢川及び北上川地域の洪水被害を軽減しているほか、河川環境の保全を目的に、塩害防止、河口閉塞防止、動植物の保護、既得用水等の安定供給など、河川を正常に維持するための補給を行っているということであった。
概要説明の後、夜間時の管理体制、見学者へのPR等について、活発な質疑応答が行われた。その後、胆沢ダム及び併設する資料館を視察した。
以上のように、胆沢ダム管理支所の水利用に関することについて調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
(優れた指定管理者の取組について)
せんだいメディアテークは、美術や映像文化の活動拠点であると同時に、全ての人々が様々なメディアを通じて自由に情報のやりとりを行い、使いこなせるよう支援することを目的とした公共施設である。
映像音響制作に関する機器などを備えたスタジオや多くのメディアに対応したシアター、多様なニーズに対応できるギャラリー等の設備を持ち、美術作品・映像作品の発表や鑑賞、メディアを活用した生涯学習や、文化的な活動拠点となっている。
また、障害のある方を含むあらゆる人がメディアを自由に活用できるようにするための教育普及やボランティア活動を支援している。
今後の本県における指定管理者の取組の参考とするため、同施設の取組を調査する。
平成13年1月に開館したせんだいメディアテークは、様々な記録媒体(メディア)による情報を収集、保管及び提供して、仙台市民の自主的な情報の検索、閲覧、記録及び発信等の活動を支援するとともに、美術・映像文化の創造又は普及の場を提供し、もって市民の生涯学習の振興に資することを目的として設置された。平成25年にプリツカー賞を受賞した世界的な建築家・伊藤豊雄氏設計による建物は、グッドデザイン賞や公共建築賞などの数々の受賞歴を誇り、同施設に接する定禅寺通りと一体となった仙台の都市景観を形成している。
平成19年からは公益財団法人仙台市市民文化事業団が指定管理者となった。それまでの施設の管理・修繕に加え、美術・芸術に関する事業に力を入れるようになり、平成23年には地域創造大賞(総理大臣賞)を受賞した。東日本大震災後は、震災復興アーカイブ事業を開催し、市民が震災復興や地域社会について語り合う場を継続して設けている。
当施設は指定管理者として、これまで3つの理念を持って運営してきた。
1つ目は、「最先端の知と文化の提供(サービス)」である。これはメディアは日進月歩していくものであるという考えの下、機械に頼るのではなく、人である職員がフレキシブルに一番新しい情報を利用者に提供していこうとするものである。つまり毎日サービス内容を更新し、市民と語り合い、時代に即したサービスを提供するというものである。
2つ目は「端末(ターミナル)ではなく節点(ノード)へ」というものである。端末とは発表や最終点といった意味であるが、何か活動したいと思っている人が当施設を利用することによって、次のステップに進んでいけるような節点になるという考え方である。
3つ目は「あらゆる障壁(バリア)からの自由」である。これは自然の中に溶け込みながら、障壁がなく、自然に出入りができ、障害のある方や外国人等との言語や文化などの障壁を乗り越えた運営を心掛けていくということである。当施設は設計の段階からこの理念を反映させており、視覚誘導、聴覚誘導、バリアフリートイレを障害の程度によって違う使い方ができるよう、各階ごとに違う仕様にしている。ほかにも託児所を設けた勉強部屋を用意したり、音訳や点訳を付けた映画のバリアフリー上映等を実施しているという。
こうした理念の下職員が実践し、運営を行った結果、現在は年間100万人もの人々が来館する文化拠点となっている。
概要説明の後、コンピュータアート展の実施状況、入館者の利用目的の割合、これまでの指定管理制度状況、今後の方向性等について、活発な質疑応答が行われた。その後、館内を視察した。
以上のように、仙台市の優れた指定管理者の取組を調査できたことは、本県にとって大変参考となるものであった。
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