企画財政委員会視察報告
調査日
令和6年11月18日(月曜日)~19日(火曜日)
調査先
(1)やまぐちDX推進拠点Y-BASE(山口県山口市)
(2)Aスクエア(山口県山陽小野田市)
調査の概要
(1)やまぐちDX推進拠点Y-BASE
(DXの推進について)
【調査目的】
■本県の課題
- 少子高齢化や頻発する災害など複雑化する社会課題を解決するために、デジタル技術を活用した社会変革の実現が求められている。
■視察先の概要と特色
- 山口県は、県政の幅広い分野でのデジタル改革を強力に推進し、地域課題の解決と新たな価値の創造に向けた山口県ならではのDX、「やまぐちDX」の創出に向けた核となる施設として、同施設を令和3年11月に開設した。
- 生成AIなどを活用したデモ展示で最新のデジタル技術の体感、オンラインを含めた専門スタッフによるDXの相談、技術やアイデアの実証サポート、各種セミナーやイベントを通じたDXの学習や交流等のサービスを提供している。
- 宇部市に「宇部ブランチ」、防府市に「防府サテライト」を開設し、Y-BASEのサテライト機能の構築を進めている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- Y-BASEで開催するイベントやセミナーを通じて、DXをサポートするためのシステム環境を見学してもらうなど、施設を周知した所、最近ではコンサルティングの利用が多く、相談を受けることができる機関として定着した。
- 様々な業種、企業規模の事業者や自治体から、業務改善や人手不足などの相談を受けており、昨年度は、年間200件ほどの相談を受けた。相談者ごとに業務の流れや課題を全て聞き出して、予算状況などを考慮しながらトライアルを重ね、技術の導入やパートナーのマッチングなど伴走型の支援を実施している。
- これまでの事例として、料亭での予約システムの導入や、観光用レンタカー事業者に対して「デジタルキー」の実装提案などがある。また、自治体に対しては、人流データの活用やデータの可視化などの支援を行っており、今年度は、教育委員会から施設点検のデジタル化の相談を受けており、実証実験を進めている。
■質疑応答
Q:山口県外の企業との連携はあるのか。
A:施設の運営費を山口県が負担していることから、コンサルティングは県内事業者に限るが、このほかに、官民デジタルコミュニティ「デジテックforYAMAGUCHI」を構築している。ここでは、県外の個人や事業者を含めた様々な会員が連携し、地域の課題解決のための共創プロジェクト等を実施している。
Q:成功した事例の横展開についてどのように考えているのか。
A:事例の横展開は非常に意識している。相談者ごとに状況が異なり、それを見極める必要があるが、同じ業種業界では共通する課題も多い。パッケージ提案するなど工夫をしていきたい。
Q:民間のコンサルティングとの違いは何か。
A:中小企業はDXコンサルティングを受けられる機会が少ない。また、民間は特定の分野に特化していることが多い。当然、無料で利用できるなど費用面の部分も大きいが、先端技術を含めあらゆる分野において幅広い対応ができることが強みである。
(2)Aスクエア
(公共施設のアセットマネジメントについて)
【調査目的】
■本県の課題
- 厳しい財政状況の中、人口急増期に建設された公共施設が更新の時期を迎えており、公共施設へのアセットマネジメントの取組が求められている。
■視察先の概要と特色
- 山陽小野田市は、所有する築40年となる商工センターの再整備に際し、近接地で築60年となる店舗の建替えを検討していた山口銀行と商工センター内に事務所を構える小野田商工会議所を加えた3者で協議を開始した。
- 再整備には、単なる複合施設ではなく、地域の課題解決に資する拠点開発を行いエリア内に波及させていくことを共通認識として、国内で初めてLABV(*)による手法を採用した。*Local Asset Backed Vehicleの略、官民協働開発事業体
- 商工センター跡地には、市、小野田商工会議所、山口銀行の施設再整備に加えて、山口東京理科大学の学生寮、交流広場、民間テナント等を合わせた複合施設「Aスクエア」を整備し、令和6年3月しゅん工した。
- このプロジェクトは、「2022年度地方創生SDGsの達成に向けた官民連携取組事例」において、最上位の賞である「内閣府地方創生推進事務局長賞」を受賞した。
【調査内容】
■聞き取り事項
- LABVとは、自治体が公有地を現物出資し、民間事業者が資金出資して作った事業体が、公共施設と民間収益施設を複合的に整備する手法である。同市のLABVプロジェクトは、Aスクエアを中心にした半径1km圏内の4つの公有地等を対象とした公共施設と民間収益施設を組み合わせたエリアマネジメントとしている。
- 市側は、民間が建設するので大きなコストダウンとなる。一方、民間側も土地が現物出資であるため土地分の事業費を見なくてよいことから、双方に資金面のメリットがある。また、従来のPPPのような官と民の主従関係の契約によるものではなく、官と民が一緒になって公共性を定義し、パートナーシップに委ねるまちづくりは、今後の検証が必要になるが、大きな特徴であり、メリットになりうるものである。
- 事業構想において、Aスクエアの整備に当たってはPFI的な仕様書を定めたが、民間の参画の関心を高めるため、残りの3か所の開発計画は、今後の提案を踏まえて検討するといった内容で募集要領を定めた。行政側にとっては大きなチャレンジであった。
■質疑応答
Q:国内で失敗した事例もある中で、成功したポイントは何か。
A :プロジェクト関係者が、構想段階から同じベクトルで進めたことや国からの支援も大きかったが、ファイナンス(山口フィナンシャルグループ)の存在が非常に大きかった。事業費のほとんどに融資が入っているが、大学の寮においては、大学側が空室保証をするなどリスクを低減するための工夫がある。
Q:次の開発計画において、市はどのような構想があるのか。
A:今年度プランニングをしているが、DXを活用したコワーキングスペースやインキュベーション施設、また、山口東京理科大学にはデータサイエンス学科があり、デジタルに優れた企業もあることからデジタルに関連した施設を検討している。

Aスクエアにて