企画財政委員会視察報告
調査日
令和6年6月5日(水曜日)~6日(木曜日)
調査先
(1)いいづなコネクトEAST(長野県飯綱町)
(2)長野県庁・信州地域デザインセンター(長野県長野市)
調査の概要
(1)いいづなコネクトEAST
(地域活性化の取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 人口減少・高齢化が進む中、地域資源や遊休施設等を活用し、活力ある豊かな地域づくりを推進する必要がある。
■視察先の概要と特色
- 飯綱町は、平成30年に統合により閉校した二つの小学校について、地方創生推進交付金事業を活用し、町の活性化拠点としての整備と運営体制づくりを進めることを決定した。
- 飯綱町は「しごとの創業・交流拠点」として、インキュベーション機能をメインとした多世代交流型施設(いいづなコネクトEAST)と、「体験・滞在型の都市交流等の拠点」として自然、スポーツ、健康をメインとした多様な人々等との交流人口創出型の施設(いいづなコネクトWEST)の2拠点の整備に着手した。同施設の運営は、令和元年5月に設立された「株式会社カンマッセいいづな」が指定管理者として実施をしている。
- 令和2年5月に整備された、いいづなコネクトEASTでは、TOPPANデジタル株式会社等が入居するオフィススペースや、コワーキングスペースのほか、シードルの醸造所やカフェも備える「食・農・しごと創り」をテーマにした創業交流施設として地域の活性化に寄与している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 施設の活用による効果として、地元企業や入居企業によるイベントの増加でにぎわいが創出され、飲食店やフリースクールが設置されたことで、住民の集える場が提供されている。また、施設をきっかけに町外からの訪問者も増えている。
- 今後の新たな取組として、3階部分を改修し新たなテナント企業の募集、またテレワーク専用の部屋を設け、町での新たな就業機会の提供にもつなげるほか、町に「新しいしごと」を生み出すためのプロジェクトとして各種講座を開催するなど、しごと創りの支援を実施している。
- 中長期的なビジョンとして、施設利用率をアップさせる取組を進め、町からの指定管理料に頼らない運営を目指し、更なるにぎわいの創出を図り、企業を誘致するなど新たな仕事を生み出す施策を推進していく。
■質疑応答
Q:財源は補助金などを活用しているのか。
A:整備に当たっては、地方創生推進交付金事業を活用しているが、運営に係る指定管理料は一般財源である。
Q:若者が多く参画しているが、どのような経緯で集まっているのか。
A:「いいづな若者会議」というプロジェクトで、まちづくりに興味のある若者が集まり、アイデアを出し合い、企画を実行している。今年度は、活用されていないプールをスケボーパークに生まれ変わらせるプロジェクトを進めている。
いいづなコネクトEASTにて
(2)長野県庁・信州地域デザインセンター
(SDGsの推進について)
【調査目的】
■本県の課題
- 「日本一暮らしやすい埼玉」を実現するため、多様なステークホルダーとの協働を通じて埼玉版SDGsを推進する必要がある。
■視察先の概要と特色
- 長野県では、総合5か年計画「しあわせ信州創造プラン3.0」にSDGsの理念を反映した基本目標「確かな暮らしを守り、信州からゆたかな社会を創る」を掲げ、その実現を目指した取組を推進している。その施策は都道府県SDGs認知度ランキングで第1位となるなど評価されている。
- 代表的な取組として、平成31年に全国に先駆けた企業登録制度「長野県SDGs推進企業登録制度」の創設や、都道府県初となる「気候非常事態宣言」を行い、「長野県ゼロカーボン戦略」を策定した。
- また、公共・民間・大学等のパートナーシップで「信州地域デザインセンター(UDC信州)」を開設し、広域的な視点、多様な視点、専門的な視点で市町村のまちづくりを支援している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 長野県は、平成30年に全国に先駆けてSDGsの理念を組み込んだ総合計画を策定したほか、「SDGs未来都市」に他の28自治体と共に全国で初めて国から選定を受けた。また、令和2年には、東京に次いでグリーンボンドを発行するなど、先進的な取組を推進してきた。
- その取組の一つとして、UDC信州を設立した。これは、まちづくりの専門化、高度化、多様化が進む一方で、職員数や予算に限界がある市町村単独では対応が困難であったため、県が主体となり、公・民・学の連携でまちづくりをサポートする広域型支援を目指した組織である。
- 市町村と共に解決策を探る伴走型の支援が特徴であり、公有地活用や市街地再生に関するものを中心に、34市町村から59件の相談を受けている。(令和6年3月時点)
■質疑応答
Q:長野県がSDGsの推進に力を入れている背景は何か。
A :総合5か年計画を策定する際、世界的にSDGsが注目されている時期であった。長野県も環境を強みにしており、SDGsの考え方と本県が目指す方向が一致していたため、5か年計画にSDGsを反映し、取組を推進した。
Q:複数の市町村にまたがる広域的なまちづくりの取組はどう支援しているのか。
A:全体の調整を行うなど、ハブ機能としての役割をUDC信州が担っている。統一的な方向性の下、各市町村は自身のエリア内で、主体性を持って施策を推進している。
Q:UDC信州は、アドバイザーなどソフト面の支援が中心とのことであるが、今後、ハード面の支援を実施していくのか。
A:UDC自身が助成をすることは難しいが、活用することができる関係部局の交付金や補助金を紹介するなどの支援を実施している。