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掲載日:2024年6月14日
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令和元年11月21日(木曜日)~22日(金曜日)
(1) 富山県議会(富山市)
(2) 富山市役所(富山市)
(議会運営について)
議会改革、開かれた県議会の推進、議員提案による政策条例等の取組を視察し、本県の参考とするものである。
富山県議会は、平成28年に、当時の副議長をはじめとする県議会議員の政務活動費の不正あるいは不適切な受給が明らかとなったことから、議会の在り方の抜本的な見直しに取り組んできた。
まず、同年12月、早急に政務活動費の交付に関する条例の改正等を行った。主な見直し事項として、政務活動費の収支報告書の議会ホームページでの公開のほか、3万円以上の物品購入に係る証拠書類の添付の義務付け、学識経験者で構成される政務活動費調査等協議会による調査審議などが定められ、使途の透明性が確保された。加えて、各会派は、四半期ごとに政務活動費の使途に係る証拠書類の写しを事務局に提示し、事前確認を行うなど、事務手続の見直しもなされた。
こうした取組が功を奏し、各議員が政務活動費の使途をより慎重に検討するようになり、制度の見直し後、政務活動費の不適切な受給は指摘されていないとのことであった。
次に、同県議会は、継続的に議会改革に取り組むための軸として、富山県議会基本条例を制定した。同条例の制定に当たっては、平成29年6月に検討会議が設置され、19回にわたる協議を経て、平成30年2月定例会で条例案を可決した。県民から寄せられた意見や指摘を踏まえつつ、総務省や全国都道府県議会議長会の協力を得ながら、精力的に条例内容を検討してきた結果、幾つかの同県議会独自の規定を盛り込むに至った。
例えば、災害などの緊急事態の場合の議会の対応について、努力目標などではなく、危機管理上の役割を明確に規定したことは、全国初の試みであった。
また、同じく全国初の試みとして、継続的に議会改革に取り組んでいく具体的な機関となる「議会改革推進会議」を設置し、毎年度、議会改革に関する行動計画を策定するとともに、その計画及び進捗を県民に公表することを定めた。当該会議については、平成30年度は7回開催され、「議会インターネット中継のスマートフォン対応」「議会広報紙の試行発行に向けた広報編集委員会の設置」「議会報告会(議員から県民への活動報告)の試行実施」などの実績が公表されたとのことであった。
その他、議会運営全般及び議員政策条例の制定方法等についても、詳細な説明を受けた。
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われ、その後、本会議場をはじめとした議会棟内の施設を見学した。
富山県議会における議会改革等の取組を視察したことは、本県議会としても大変参考となるものであった。
富山県議会にて
(コンパクトシティの取組や公共交通政策について)
富山市は、急速な少子・高齢社会の進行や人口減少等、都市を取り巻く諸課題に対応するため、公共交通を活性化させ、都市機能や生活基盤をその沿線に集積する拠点集中型のまちづくりを実施することで、持続可能な社会の実現を目指している。同市のコンパクトシティの取組等を視察し、本県の参考とするものである。
富山市は、中心部から日本海側にかけて平地が続いていることから、居住地の分散化が進み、県庁所在地としては全国で最も人口密度の低い都市となり、ごみ収集や除雪等都市管理コストの上昇や中心市街地の衰退が課題であった。また、拡散型のまちづくりが進んだ結果、自動車に依存した社会となったことで、公共交通が衰退し、車を自由に使用できない市民にとって極めて生活しづらいまちとなっていた。この状況は、今後、人口減少と超高齢化により、更に深刻化するおそれがあり、同市にとって正に喫緊の課題となっていた。
同市は、現在の森市長が就任した平成14年から、集中型都市の議論を開始し、その実現に向けた交通体系を約3年にわたり模索してきた。その結果、同市は、LRTをはじめとする公共交通を活性化し、その沿線に居住、商業、行政、文化等の都市の諸機能を集積させることによる、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを目指すこととなった。つまり、同市の目指すコンパクトシティは、幾つもの徒歩圏の市街地を、一定以上の水準の公共交通で結ぶ都市構造である。
同市のコンパクトシティ推進手法は、生活に必要な公共交通の活性化と、都心部の魅力を高める誘導からなり、大きく3つの柱を基本方針として、事業を展開した。
1本目の「公共交通の活性化」として、利用者の減少が続いていたJR富山港線を、公設民営により、日本初の本格的LRTシステムによみがえらせた。この富山駅北側の富山ライトレールの整備により、運行間隔や本数、料金体系等の見直しがなされ、利用者が平日で約2.1倍、休日で約3.3倍と大幅に増加した。また、富山駅南側にある市内電車を、都心地区の回遊性の強化等を目的として環状線化し、利用者の増加につなげた。さらに現在、これらの路線を富山駅で接続する事業を進行中であり、今年度末に完了する見込みである。こうした取組により、市内の公共交通の利便性は飛躍的に高まってきている。
2本目の「公共交通沿線地区への居住推進」として、中心市街地地区や公共交通沿線居住推進地区に居住を誘導するために、建設事業者や市民向けの助成を行っている。平成30年3月までに約1,800件の実績があり、居住区域の誘導に一定の成果を挙げている。
3本目の「中心市街地の活性化」として、中心市街地に全天候型の多目的広場を整備し、にぎわいの創出を行った。また、統廃合した小学校の跡地等を活用し、シネマコンプレックスや、ドラッグストア、銀行等の都市機能を、PFI等民間活力を生かした手法により整備することで、まちの魅力向上を図った。さらに、65歳以上の高齢者を対象として、公共交通利用料金を1回100円とするおでかけ定期券事業を展開することにより、高齢者の外出機会の創出と中心市街地の活性化を実現している。なお、中心市街地への集中的な投資は、そこで生み出される高額な固定資産税等による税収を、各地に還流するという観点から、市全域の発展においても合理的かつ効果的であり、地域間格差を助長するものではないとのことであった。
同市のコンパクトシティ戦略は、公共交通等に対する公共投資が呼び水となり、市街地再開発事業などの民間投資が活発化を促した。それに伴い、市街地の社会増減は転入超過を維持しており、地価も5年連続で上昇、公共交通の利用者も軒並み増加するなど、持続可能な社会の実現に近づいている。
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で「富山ライトレールは公設民営の手法で導入したとのことだが、民営の状況はどうか」との質疑に対し、「民間企業は運営費を営業収入で賄っている。民営部分のみでいえば収支は黒字だが、維持管理費を市で負担していることから、持続可能性をどこまで担保できるかは難しいところである」との回答があった。
その後、富山駅において進行中の路面電車南北接続事業の様子を、詳細な説明を受けながら視察した。
富山市におけるコンパクトシティの取組や公共交通政策は、本県においても大変参考となるものであった。
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