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掲載日:2019年12月9日
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令和元年7月24日(水曜日)~26日(金曜日)
(1) 佐賀県議会(佐賀市)
(2) 長崎県・佐世保市IR推進協議会(佐世保市)
(3) 長崎県庁(長崎市)
(4) 長崎県議会(長崎市)
(議会運営について)
議会におけるICTの活用、議会改革や大規模災害時対応マニュアルの作成等の取組を視察し、本県の参考とするものである。
佐賀県議会では、平成23年の改選前後から、様々な議会改革に取り組んでいる。
その一環として、議会のICT活用が挙げられる。従前は、議員への情報提供をファックスにより行っており、通常1時間、資料が多い場合は3~4時間を要するなど、速報性に課題があった。そこで、若手議員から、メールの活用により情報をタイムリーに入手したいという声が上がり、勉強会などで方策の検討が始まった。その結果、平成23年9月、議会にiPadを導入する運びとなった。
iPadの導入により、議会活動に係る利便性は飛躍的に向上した。メールの一斉送信による情報提供が可能となり、速報性が担保されるとともに、議員も時間や場所を選ばず資料に目を通せるようになった。また、提供資料を電子データ化することで、これまでのモノクロで低画質だった図表などが、カラーで高画質な資料として送信できるようになった上、動画の提供も可能となった。
なお、iPad導入の初期費用は、無料キャンペーンを利用したことから、ほとんど発生しなかったが、その後デバイスを更新するに当たっては、購入経費に政務活動費の充当を認めていないことから、議員の自費での対応となっている。ただし、通信費については政務活動費の充当が可能であるとのことであった。
また、同議会では、地方自治法第100条第12項に基づき「議会改革検討委員会」が設置され、政務活動費の在り方及び使途基準の見直しなどが行われた。同委員会は、正副議長、議運正副委員長、各会派から選出された7名の議員を構成員とし、不定期に開催されている。委員会における協議の結果、会派の収支報告書のHPへの公開が決定されるなど政務活動費の透明性の向上等において一定の成果が出ているが、議会運営に係る事項についての検討においては十分に活用がなされていないことが課題であるとのことであった。
このほか、同議会では、熊本地震を契機として、議長の諮問機関である議運理事会において、議会の災害時の対応について協議が行われ、「佐賀県議会大規模災害時対応マニュアル」が策定されている。震度5弱以上の地震又は津波警報以上が発生した場合を想定し、有事の際に、議員が県執行部をはじめとする関係機関と連携しながら、より積極的に行動できるよう、「県民の意見・要望の把握」「国等への政策提案」「復旧予算等の議案審議」などの議員の役割を明確化している。また、災害時の安否確認方法については、電子メールを用いて行うことが明記された。本マニュアル施行後、毎年、安否確認訓練を実施しており、各議員に対し災害時の対応についての意識付けができているなどの成果が出ている。その一方で、事務局職員の役割については不明確であるという課題があり、今年度中に明確化したいとのことであった。
佐賀県議会にて
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「ICT環境の更新のためにiPadを購入することに対して、政務活動費の充当を認めないこととしているのはなぜか」との質問があり、「検討の結果、iPadは資産になること等の理由により、購入費用は対象外とした。しかし、機器購入を政務活動費の使途として認めている他県の事例もあるので、今後改めて検討したい」との回答があった。
佐賀県議会におけるICTの活用等の取組を視察したことは、本県議会としても大変参考となるものであった。
(IRの取組について)
長崎県は、地域の特性を生かした「地方創生型IR」を導入することにより、持続可能なまちづくりを推進するため、長崎県・佐世保市IR推進協議会を設置し、IRの誘致を目指している。同協議会のIR誘致実現に向けた取組を視察し、本県の参考とするものである。
長崎県は、人口減少などの構造的な課題に直面しており、経済の活性化や雇用創出等を促進する必要がある。一方、我が国における年間訪日外国人観光客は3,000万人を超え、経済効果は約4兆5,000億円に上るなど、インバウンドに大きな注目が集まっているものの、その効果は、人気の大都市等を周遊する、いわゆるゴールデンルートに偏っている。
このような状況を踏まえ、同県は、IR(Integrated Resort)を導入することで、「新たな人の流れ」や「良質な雇用」等を創出し、持続可能な社会の実現を目指すこととなった。
IRとは、国際会議場や展示場、エンターテイメント施設、ホテル、カジノなどが一体となった複合観光施設のことである。国では平成28年12月「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(IR推進法)」を公布するなど、関係法令の整備を進めている。
同県は、シンガポールのリゾート・ワールド・セントーサなどをモデルケースとし、アジアとの近接性や、国内有数の観光施設「ハウステンボス」があること、離島が多く、豊かな自然環境が広がっていることなど、同県特有の高いポテンシャルを生かした、独創性と先駆性に満ちたIRの実現を目指している。IR候補地としては、ハウステンボスへの来場者との相乗効果を最大限に生かすべく、ハウステンボス内のハーバーエリアを中心とした約30ヘクタールの用地を挙げている。
そこで、同県は佐世保市とともに長崎県・佐世保市IR調査検討協議会を設置し、関係団体との意見交換を経て、平成26年、長崎県・佐世保市IR推進協議会を設置し、「事業者公募・選定の準備」「広域連携・機運醸成」「県民理解促進」などの事業に取り組んでいる。同協議会による広域連携を促す取組により、県内自治体の意思統一や、県内経済界による支援、県議会及び市議会の意見書等による後押しなど、民間・議会・行政が一丸となってIRを推進する体制を整えている。また、本年6月には、九州地域戦略会議にて、長崎IRを九州を挙げて応援することが決議された。
また、同協議会は、IR誘致に関して、県内外の経済界や教育・防犯関係等、延べ38団体と意見交換を重ねてきた。IR導入による経済波及効果や雇用創出等のメリットを最大化することにより、県民所得の向上や人口流出の歯止めにつなげてほしいとの切実な声が大半である一方、治安への影響、青少年教育への影響及びギャンブル依存症の発生などのデメリットに対する万全の対策を講じてほしいとの声もあったとのことである。
同協議会は、こうした課題への対応を検討した上で、県民や関係団体などの理解を得るため、県民セミナー、講演会及び住民説明会などを再三にわたり開催し、丁寧な説明を心掛けてきた。これらの取組により、反対者ゼロにはならないものの、賛成する意見が徐々に増加してきており、比較的高い割合で理解を得られているとのことであった。
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「IR事業者と地元企業とのビジネスマッチングに関連して、企業を誘致することも検討しているのか」との質疑に対し、「地元経済界及び福岡経済界からは、企業誘致を推進すべきとの意見が出ているが、現状はIR事業者の顔が見えない状況である。IR事業者の選定がなされた後、どのような企業を誘致するかを含め、具体的に動き出すものと考えている」との回答があった。
その後、ハウステンボス内のIR候補地を詳細な説明を受けながら見学した。
同協議会におけるIRの取組は、本県においても大変参考となるものであった。
(長崎駅周辺再整備及び庁舎の建替えについて)
長崎県では、庁舎の老朽化、狭あい化、分散化及び耐震性不足等の課題を抜本的に解決するため、約10年をかけて検討を重ね、新庁舎建設を実現した。また、新庁舎の建設や九州新幹線西九州ルート等の整備を契機として、長崎駅周辺の再開発にも乗り出している。同県の都市整備の取組を視察し、本県の参考とするものである。
長崎県は、海に囲まれ多くの離島を持つ海洋県である。アジア諸国と近く、空港や港湾にも恵まれた国際都市である一方、地形面で課題も多かった。例えば、長崎市は、市街地の7割が斜面となっており、より生活しやすい土地を求めて、年間5,000人以上が県外に流出するなど、県全体の衰退が危ぶまれていた。
そこで、同県は約10年前、都市計画マスタープランを見直した。重点整備区域の一つである長崎駅周辺エリアでは、課題となっていた県庁舎の新設、在来線の高架化、新幹線の建設、駅舎の建替え、土地区画整理事業による基盤整備等の計画を策定し、「都市の魅力の強化」「回遊性の充実」「国際ゲートウェイ機能の再構築」を目標として、国際観光文化都市・長崎の再生に乗り出した。
県庁舎整備は、県政百年の大計に立つ大事業として、長期的展望の下に行なわれた。以前の県庁舎は老朽化、狭あい化し、その結果、機能が14棟に分散化されていた等の課題に加え、災害発生時に防災拠点施設であるにもかかわらず、耐震性に不安があったことから、長年にわたり県議会等で、県庁舎の建設についての議論が行われてきた。本格的に動き出したのは、平成22年であった。県議会から「県庁舎整備に関する意見書」が提出されたことを受け、県が「県庁舎整備基本構想案」を策定し、翌年、知事が新庁舎建設に着手することを表明した。
新庁舎建設の事業費は424億円であり、その財源内訳は基金348億円、国庫補助金45億円、地方債31億円であった。
整備の基本構想としては、「県民とともに新しい時代を切り拓く庁舎づくり」を念頭に置き、3つの方針を掲げて、設計において様々な工夫を施した。1つ目として「県民生活の安全・安心を支える庁舎」では、特に重要な防災拠点施設としての基準を確保するため、津波対策としての敷地のかさ上げ、72時間の非常用発電、屋上ヘリポート、一時避難や医療活動の場として利用できるエントランス等の整備を行った。2つ目の「県民サービス向上のための機能的で新時代環境共生型の庁舎」では、組織変動や部局間連携に対応しやすいオープンフロア、ユニバーサルレイアウトプランを採用した。3つ目の「県民に優しく県民が親しみを感じる庁舎」では、正面玄関等への音声誘導装置の導入、食堂や展望エリアの解放、憩いや交流、協働エリアの確保などを実現した。
新庁舎には、職員同士はもちろん、県民等と職員との「つながり」を強化しようという意思が垣間見えた。特に日常業務を行う場をオープンフロアとすることで、物理的・心理的な壁を取り払い、職員が一体となることで県民目線の行政を具体的に展開することを目指しているとのことであった。その結果、会議・打合せに関する職員満足度46パーセント向上、プリンター等のOA機器数70パーセント減少、庁舎内での地域おこしマルシェの開催等外部連携の飛躍的な加速など、目覚ましい成果を上げている。
また、駅周辺の再開発においては、山積する課題について、短期、中期、長期の整備プログラムを策定し、計画的に取り組んでいる。その1つは、長崎駅周辺の踏切における渋滞解消のための事業である。駅周辺の慢性的な渋滞発生により、救急車が通れないなど日常生活に大きな支障を来していたことから、JR長崎本線を高架化する連続立体交差事業を実施している。併せて、駅舎の改修及び周辺の未利用地の活用、バスターミナル整備など、県都の玄関口にふさわしい都市機能の集積、都市空間の形成によるにぎわいの創出と交流の促進を目指した新しいまちづくりが進められている。また、佐賀県の武雄温泉駅までつながる新幹線の整備完了も間近となってきており、「平和と文化の国際交流拠点都市 長崎の再生」に向けて、総合的な開発が行われているとのことであった。
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で「新庁舎整備に当たっての基本構想は、職員が作成したのか、あるいは業者に委託して作成したのか」との質疑に対し、「図面等は業者に作成を委託したが、基本的には県内部で検討しながら作成した」との回答があった。
その後、新庁舎内及び庁舎屋上から見える再開発の様子を、詳細な説明を受けながら視察した。
長崎県における長崎駅周辺再整備及び庁舎の建替えに係る取組は、本県においても大変参考となるものであった。
(議会運営について)
議会活性化、新庁舎建設への県議会の関わり方、議員提案による政策条例等の取組を視察し、本県の参考とするものである。
長崎県議会では、平成23年4月の改選後、議会改革の動きが加速し、議会の在り方をはじめ、一般質問の方式、予算決算委員会の常設化など様々な項目が議論され、実現された。
一般質問の方式については、従前は、一括質問方式又は一問一答方式の2択だったが、平成 29年に分割質問方式が導入され、議員は3方式のいずれかを選択することとなった。分割質問方式とは、発言通告の大項目ごとに分割して質問し、答弁を受ける方式である。議会運営委員会の大阪府議会視察を契機として導入に至ったものであり、一括質問と一問一答の折衷案的な手法となっている。執行部との質疑応答が、傍聴者にも分かりやすく、かつ、関連した項目がまとまっていることから、全体像も掴みやすいというメリットがある。
同県議会では、平成23年6月に県議会・県政改革特別委員会が設置され、通年議会の導入が検討された。導入には会派間で意見の相違があったことから、県内3か所(長崎市、佐世保市、大村市)で意見交換会を実施し、議論を深めていった。平成24年3月、同特別委員会から、定例会の回数を年1回とする長崎県議会定例会条例案が提出され、賛成多数で可決された。災害等の突発的な事態への迅速な対応を可能とすること、議案を早期に提出できることから早期執行にもつながること、議員の審議時間の十分な確保など、運用には様々なメリットがあった。一方で、従前と比較して約1.5倍の会期日数となったことにより、議員にとって極めて重要な職務の一つである地域活動が制限され、地域の声を聴く機会が減るなど地域の代弁者としての役割に弊害を来すことととなった。また、執行部の業務の増大という課題もあった。これらの動きを受け、通年議会の導入にはもっと議論が必要であり、時期尚早であることから、一度、白紙の状態に戻すことが必要との結論に至り、平成26年2月、定例会の回数を年4回とする条例案が可決され、通年議会は廃止されたとのことであった。
次に、新庁舎建設に関して、同県議会では県庁舎建設特別委員会が幾度となく設置され、新庁舎の在り方や建設地などについて審議された。知事が新庁舎整備を表明した後には、防災拠点としての在り方を審議するため、経済雇用・災害対策特別委員会が設置されるなど、議会側においても十分な協議が重ねられていた。
また、県内各地域で「県庁舎整備について県民の声を聴く会」を不定期に開催し、県民の声を聴くなどして得た意見を集約して、意見書として知事に提出するなど、議会側からの積極的な働き掛けがうかがえた。また、新庁舎建設に伴い、議会棟が独立することとなった。議会棟の規模は、九州各県議会の面積を参考に算出され、4常任委員会が同時に開催できるよう委員会室を確保したり、全員協議会や委員会の連合審査にも対応できるよう多目的会議室を新たに設置するなど、審議のしやすい環境を整えた。また、議員の執務室も拡張し、県民の来庁などに対応しやすくされた。その他、議会の施設として、親子傍聴席、議場における大型モニター、聴覚障害者向けの磁器ループアンプ等の設備を用意し、多様な傍聴者に対応するなど、開かれた県議会が実現された。なお、新施設の問題点として、議員向けの駐車場を一般来庁者と同位置に配置したことで、議員専用駐車場を一般来庁者に使われてしまったり、逆に、一般来庁者用駐車場が満車にもかかわらず、議員専用ががら空きだったりと、苦情が多く、分けるべきであったと建設後に気付いたとのことであった。
概要説明の後、本会議場を中心とした議会棟内施設を、詳細な説明を受けながら視察し、本会議場の新施設等について、活発な質疑が行われた。
同県議会における議会活性化等の取組は、本県議会においても大変参考となるものであった。
長崎県議会にて
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