障害者の自立と社会参加のための芸術・文化を核とした施策への提言について
障害者の芸術・文化活動について、従来とは違った角度から注目することにより、新たな視点から障害者の自立と社会参加について検討を進めていた埼玉県障害者芸術・文化懇話会から、知事に「障害者の自立と社会参加のための芸術・文化を核とした施策への提言」が報告されました。
提言内容のポイント
1 概要
障害者の自立や社会参加の推進、多様性を認め合う社会の実現などを図るための手段としての、「障害者アート」振興策の提言
2 定義:「障害者アート」とは
障害者の芸術・文化活動の中で、個性・創造性あふれる活動のこと。
この提言書では、障害者の能力を「福祉」の殻を突き破って世間一般にアピールし、社会を変えるポテンシャルを持つものとして、これを捉えている。
3 背景
- 従来、障害者が行う芸術・文化活動に対しては、障害を乗り越えて作品を創造するというプロセスに注目するという、福祉的な観点から評価されることがほとんどであった。
- 一方で、そういった「福祉」のフィルターを外してそれらの作品を見てみると、我々が常日頃持っている”芸術観”や“常識”といった固定観念が180度くつがえされてしまうような、芸術性や創造性あふれる、驚くべき作品に出会うことが多々ある。
- 近年、そういった個性や創造性あふれる障害者の芸術・文化活動の、作品そのものの芸術性を評価する動きが各地で見られるようになってきた。本県でも「障害者アート」で経済的収入を得る障害者が現れ、これを積極的に支援するNPO法人も活発に活動を行っている。
- このような状況を鑑み、これまで福祉的な観点のみから評価されがちだった「障害者アート」を、芸術的・社会的な観点、つまり作品そのものの芸術性や創造性または社会に与えるインパクトという点から再評価し、障害者の自立や社会参加を進め、障害の有無にかかわらずお互いがお互いを認めあう豊かな社会の実現を図るための手段として、積極的にその振興を支援することを提言する。
4 「障害者アート」振興のための3つの提言
1 障害のあるアーティストの才能の周知
従来の常識や固定観念をくつがえすパワーを秘めた、「障害者アート」作品を県民に広く周知すること。
- 埼玉県障害者アートフェスティバル(仮称)の開催
- 「障害者アート」作品を活用するムーブメントの創出 等
2 才能ある障害者の発掘・支援
障害者の才能を開花させる環境を整備すること。
- 活動状況の全県調査の実施
- 障害者の芸術・文化に対するアクセス改善 等
3 社会的・組織的なサポート体制づくり
従来、限られた関係者に支えられてきた活動を、社会的・組織的にサポートする体制を作ること。
- 活動をサポートする人材の育成
- 関係者の意識改革 等
5 埼玉県が「障害者アート」振興に取り組む意義
- 埼玉県は、彩の国さいたま芸術劇場や県立近代美術館など、芸術・文化面のハードとソフトが充実している。
- また、作品が海外の市場で取引されたり、その芸術的才能が認められて企業に就労している方がいるなど、障害者の才能を積極的に社会に生かした成果も見られる。
- このような状況にある埼玉県が障害者の芸術・文化活動に従来とは違った角度からスポットライトを当てることで、社会的にも芸術的にも新しい価値観を創り出すことによって、他の自治体がこれまでに取り組んでこなかったような埼玉県独自の障害者の芸術・文化施策の展開が可能となる。
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